「エッチしてもいい？」
　と聞いて、彼女が、とても緊張した面持ちで、けれども頷いたくれたとき
には、まさに天にも昇る気持ちでした。歓声挙げて、小躍りしたい気分でし
た。彼女は、性に関してはやや奥手でしたので、そう決意するにはかなりの
覚悟が必要だったはずで、それでも承諾してくれたということは、私とそう
いう関係になってもいい、と、つまりそういう関係になるに足る男だ、と認
めてくれたということだ、と思ったからです。
　彼女はとても怯えていました。私はできる限りゆっくり、優しくすること
を心がけていたのですけれども、いかんせん私も初めてのことでしたので、
はたから見ても緊張していることは明白で、手つき覚束なく、そんな私の態
度も、彼女の不安を大きくさせたに違いありません。
　幼児のような手つきで彼女の服を脱がせていきました。しかし、部屋は真
っ暗だったし、見ようとすると彼女は恥ずかしがって隠してしまったので、
彼女の裸身がどのようであったか、そのときはわかりませんでした。
　少し残念に思いつつ、抱きしめあってキスをしました。キスは初めてでは
ありませんでした。ディープキスもしていましたから、思い切り舌を絡ませ
てやりました。そうしながら、彼女の裸身の感触を堪能していました。私も
全裸になっていたので、肌と肌が直接触れ合って、弾力や温もりをじかに感
じることができ、その感触は、かつて一度も感じたことのない心地良さがあ
って、私はそれだけで快感を覚えました。
　凍えたときは、人肌で温めるのが一番だ、なんてよく言いますけれども、
本当なのかもしれません。彼女の体には、どれだけの寒気にも負けないので
はないかしら、と思わされるほどの、深い温かさがありました。
　そうしてそれから、アダルトビデオの見様見真似で、彼女の陰部を撫でた
り、乳首を舐めたりしました。反応は、よくわかりませんでした。私は、彼
女が気持ちよくなってくれたら嬉しい、と思いましたので、私なりに精一杯
彼女を愛撫したのですけれども、やはり下手は下手だったのでしょう。陰部
を直接見ると恥ずかしがるので、手探りでクリトリスを探しましたが、初め
てなのですから、どれがそれかわかりっこなく、私の指は彼女の陰部を彷徨
っていました。そのうちに、どうもそれらしいものに指が触れて、すると彼
女が一際大きい反応を示したので、きっとこれだ、と思い、そこを集中的に
触りました。
　私は、
「ここが気持ち良い？」
　と聞いてみました。彼女は、
「わからない」
　と答え、うん、という答えを期待していた私は拍子抜けし、違うのかなと
いささか不安になりましたが、気持ち良いと言うのが恥ずかしく、照れ隠し
をしているのだ、と思い、思い込み、思い込ませて、しばらくそこをいじっ
ていました。
　すると、だんだん指にぬるぬるしたものがついてきて、きっと感じている
のだ、と私は思って、嬉しくなりました。そこで、穴の中に指を入れてみよ
うと思い、また手探りで穴を探し、そっと入れてみました。
「あああ」
　指を入れるのと同時に、彼女が声を挙げました。私は一瞬、感じているの
かと思ったのですが、顔を見ると、明らかに苦悶の表情でした。痛いとは言
わないものの、痛がっていることは明白でした。しかも、そのせいなのか、
陰部が急に乾いてしまいました。
　私は、うわべは、何も言わず落ち着いていましたが、内心ではひどく焦っ
て、どうしてよいかわからず、とりあえず指を抜いて、再びクリトリス（ら
しいもの）を撫でて、キスをしました。するとまた、次第に濡れてきたの
で、また指を入れてみましたが、同じことになるだけでした。しかしキスを
しながら愛撫をするとまた濡れてくるので、
「キスすると濡れるね」
　と私が言ったら、
「キス気持ち良いかも」
　と彼女は言いました。
　指一本でもあんなに痛がるのに、ぜんぜん自慢できるほどの大きさではな
いとはいえ、指よりは太いペニスを、どうして入れられようか、と私は心配
でなりませんでしたが、それが目的なのですし、とにかく入れたい本能的な
思いもあって、一番濡れているらしいときを見計らって、敢行することにし
ました。本当は、フェラチオもしてもらいたかったのですが、裸を見られる
ことさえ恥ずかしがる乙女に、さすがにそれは酷だろう、と思って、断念し
ました。
　いよいよ、自分のものを彼女の陰部に当てて、挿入、といきたかったので
すが、不思議なことに、私のものは、半分元気がありませんでした。インポ
テンツではないはずでした。恐らく、緊張のし過ぎが原因だったろうと思い
ますが、その辺のメカニズムは知りません。とにかく、いわゆる半だちの状
態になっており、そのままでは入れられそうもありませんでしたので、ペニ
スの先で穴の位置を探っている振りをしながら、片手でしごきました。する
となんとか十分な硬さを取り戻しましたが、どうかするとまた縮んでしまい
そうな気配がしましたので、根元をしっかりつかんで、元気なうちに入れよ
うと、腰を落としました。が、これがまた、きっとそこに穴があるのに、壁
にでも当てているかのようで、先に進みません。もたついていると、またペ
ニスが縮こまりそうになるので、その体勢のまましごいて、そんな風に悪戦
苦闘しているうちに、自分はセックスもろくにできない、なんて情けない男
だろう、と自己嫌悪に陥って、泣きたい気分になりました。
　それでもやはり、やりたかった。これはもう、動物的本能です。私はそれ
まで、彼女のことを、とにかく大切にしよう、優しくしよう、と心がけて、
それで彼女が喜んで、笑ってくれたら、幸福だったのですけれども、そのと
きばかりは、自分の欲を満たすことしか考えていませんでした。ほとんどや
けくそになって、突き破るつもりで、ぐぐっとやったら、めりめりっという
感じで、入っていきました。折れるかと思いました。何故だか、何の連関も
なく、諸刃の剣、という言葉が脳裏に浮かびました。
「いたーい！」
　予想以上の大きさで、彼女が悲鳴を挙げました。私はびっくりして、入れ
たまま腰は動かさないように気をつけて、彼女を抱きしめ、髪を撫でて、キ
スをしました。彼女は大きく息をしながら、痛みに耐えていました。私は、
動かないから大丈夫、動かないから大丈夫、と連呼していましたが、彼女か
らしたら、こんなに痛いのになにが大丈夫なんだよ、という気持ちだったか
も知れません。

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