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深夜0時、巨大なバスターミナルにひとりの若い女性が駆けてくる。
息を切らしながら乗車予定のバスを見つけ、発車時刻ギリギリになんとか飛び乗った。 彼女の名前は千紗、都内の女子大に通う20歳の大学生だ。 彼女は久々の3連休を利用して、地方に住む遠距離恋愛中の彼氏の元へ逢いに行く約束をしていた。 学生の千紗にとって、新幹線よりも料金の安い夜行バスは魅力的だった。なおかつ寝ている間に目的地に到着するため時間を有効に使えるのがよかった。そんな理由から、彼に逢いに行くときは必ずと言っていいほど夜行バスを利用していた。 観光地でもない地方行きのバス路線のせいか、週末だというのに乗客はまばらで閑散としている。 千紗は通路を奥まで進み、最後尾右窓側の席に座った。 後ろから座席の背もたれ越しに前方を確認すると、彼女の他には2人しか乗車していなかった。いずれも男性客のようだ。 (ふぅ、、間に合ってよかった。お客さんも少なくて1番後ろにも座れたし、今日はツイてるかも) 必死に走ってきたせいで体が暑いのか、上着のボタンを胸元まで開け手のひらを団扇代わりにパタパタと仰ぐ仕草をしている。 額と首すじにはうっすらと汗が滲んでいた。 彼女が席に着くとバスはすぐに発車し、深夜のターミナルを離れていった。 つづく
2018/06/27 21:58:37(QWmnKOxZ)
投稿者:
モンスーン
◆LcZFM.jE8Y
発車したばかりの車内はまだ照明が点いている。
彼女は旅慣れた感じで、旅行バッグの中からアイマスクとネックピローを取り出し、手際よく寝支度をし始めた。 息で膨らませたネックピローを首にセットし、可愛らしいキャラクターのアイマスを目元に付けた。 が、彼女は慌ててアイマスクをめくり、スマホを取り出して目的地で待つ彼氏に予定通りのバスに乗車したことを連絡した。 「今バスに乗ったよぉ!明日会えるね、楽しみ(о´∀`о)」 約6時間後、目が覚める頃には大好きな彼の待つ目的地に到着する。 ...はずだった。 千紗が寝入る直前、運転士が車内アナウンスを通じて何か言っている。 眠りに落ちる寸前だった彼女だったが、なんとかその雑音混じりの声に耳を傾けた。どうやら高速道路が閉鎖されているとのことだった。 《この先の高速道が事故により閉鎖されているとの情報が入ってまいりました。しばらくは一般道を走行してまいりますため、目的地到着が大幅に遅れることが見込まれます。お客様にはたいへんご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解頂けますようお願いいたします》 千紗はまったくツイてなんていなかった。むしろ最悪だ。 彼女はさっき出発を告げたばかりの彼氏にこの状況を連絡した。 「もう最悪!( *`ω´) 事故で高速閉鎖だって..到着遅れるかも、ごめんね(つД`)」 彼女は不機嫌そうに口を尖らせながらアイマスクを付け直し眠りについた。 つづく
18/06/28 12:08
(J3LQUIKV)
投稿者:
モンスーン
◆LcZFM.jE8Y
一般道を走るバスは発車と停車を繰り返しながらなんとか目的地に向かっている。ただ、次々と待ち構える信号機が邪魔をして時間の経過の割に距離はさほど進んでいなかった。
一般道を2時間ほど走ったところで、ようやく閉鎖されていない別の地点のインターチェンジから高速道路に入ることができた。 ここで運転士から車内アナウンスが流された。 《お客様にはたいへんご迷惑をおかけいたしております。当バスは先ほど一般道から高速道へと入りました。幸い道路状況が順調ですのでこのまま問題がなければ、約1時間程度の遅れで目的地に到着できる見込みです。尚、予定を変更いたしまして、この先のパーキングエリアで10分少々の休憩を取らせて頂きます。お急ぎのところたいへん申し訳ございませんが、何卒ご了承頂けますようお願いいたします》 揺れる車内で既に寝入っていた千紗の耳には、そのアナウンスは聴こえていなかった。 アナウンスから5分ほどで、バスはパーキングエリアに立ち寄るため側道に入りスピードを落とした。 駐車場に停車すると、運転士から再びアナウンスが流された。 《ただ今、パーキングエリアに停車いたしました。これより乗務員は約10分少々休憩を取らせて頂きます。おタバコやトイレ休憩、自販機をご利用されるお客様は出発時間までにお戻りください》 バス前方の乗降ドアが開き、乗っていた男性客が2人とも降りていった。停車に気付かず眠り続けている千紗だけがひとり車内に残された。 所詮はパーキングエリア。サービスエリアのように飲食ができるところはなく、自販機数台と喫煙所、そして簡素なトイレが設置されているだけだった。 降りた乗客と運転士が喫煙所で立ち話をしている。男性同士、不意のトラブルで妙な連帯感や親近感のようなものが湧いているようにも見えた。 休憩時間の10分が過ぎ、乗客と運転士がバスに戻ってきた。 運転士が客席のほうを向き、乗客数を数えている。3人しか乗っていないことは一目で明らかだったが、律儀な運転士は前方の客から歩きながら順に1人ずつ指差し確認をしていく。 最後尾に座る千紗のところまでやってきた運転士は、運行が遅れていることへのささやかな詫びのつもりだろうか、ぐっすりと眠る彼女の座席に自販機で買ってきとミネラルウォーターのペットボトルをそっと置いた。 彼がふと彼女の寝姿に目を向けた。暑さでボタンを開けたままの胸元から、フリルの付いたパステルピンクのブラジャーが少し見えている。発育の良い膨らみが、彼女がもはや子供ではないことをアピールしているかのようだった。 運転士は軽く咳払いをして彼女のもとを離れた。彼は運転席に戻りながら両側の窓のカーテンを順々に閉めていった。 《それでは皆さん戻られたようですので、これより運転を再開いたします。就寝されているお客様に配慮いたしまして窓のカーテンを閉めさせて頂きました。これより足元の通路灯を残しすべて消灯させて頂きます》 運転席に着いた彼は出発のアナウンスをし、再びバスを発車させ本線に合流した。 つづく
18/06/28 22:14
(GoDkNKbb)
投稿者:
モンスーン
◆LcZFM.jE8Y
バスはその後も高速道路をひた走る。
およそ半分ほどの距離まで来ただろうか。 今のところ大きな渋滞にも巻き込まれず、空いた道路を順調に飛ばしていた。 道路を明るく照らすオレンジ色の照明がカーテン越しに一定のリズムで流れて行く。 そのとき、 暗い車内で大きな人影が動き、最後尾へと向かっていった。このバスに車内トイレは備え付けられていないはずだ。 運転に集中している運転士はこれにまったく気付いていない。 通路いっぱいの横幅をもったその人影は、車内中程に座っていた乗客の男だった。彼は揺れる車内をのそりのそりと歩き、千紗の座る最後尾に迫っていく。通路灯がぼんやりと彼のその足元を照らしている。 ついに最後尾にたどり着いた彼は、ぐっすりと眠る彼女の隣にどっしりと腰を下ろした。彼の重さで座席がギシりと軋み、眠る千紗の体が揺れる 男の口元には陰湿な笑みが浮かび、その鼻息の荒さが彼の興奮具合を表していた。 つづく
18/06/29 12:10
(PZpZdPUi)
投稿者:
通りすがり
いよいよ新しい展開ですね 楽しみです
待ちきれません
18/06/29 13:50
(WthewEq.)
投稿者:
モンスーン
◆LcZFM.jE8Y
〉通りすがりさん
楽しみにしてくださりありがとうございます。 だいぶ前置きが長くなりましたが、いよいよです。 ぜひ最後までお付き合いください。
18/06/29 21:57
(PZpZdPUi)
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