ふと目が開き、起きた事を自覚する。
最初に目に映ったのは古臭い木造の天井。
とりあえず近場に置いていたスマホを手に取り、ディスプレイを見る。
「早ぇ・・・・。」
時刻はまだ朝の５時半ば、起きるには早過ぎる。
「損した気分だ・・・・。」
原因は明らかだ、朝の早々から容赦の無いクソ暑さ。
８月も始まったばかりでこれかよと言いたくなる。
正直今が夏休みという期間でなければキレているところだ。
俺の名は勝、Ｋ２年で、
今年からこの古びた一軒家に一人暮らしをしている。
去年まで祖父が暮らしていたが、半年位前に亡くなった。
勝ち気で「誰の助けもいらんっ!。」と豪語し、
俺の親を含めた親族からは渋い顔をされていたが、
個人的には勇者な人だったと思っている。
実際ここに住んでから近所の人達から、
祖父の豪快な性格と実は子供を中心に人気があった事を知った。
そして当初この家は祖父が亡くなったのを機に、
取り壊すつもりでいたようだが、
そこに俺が強引に入り込んだ形だ。勿論反対されたが。
やかましい親とも別れ、
のんびりとした一人暮らしが出来ると思っていたが、
思った以上にその一人暮らしは大変だった。慣れたけど。
さて、正直もう少し寝たいところだが、
この暑さが許してくれるはずもない。
エアコンが欲しいところたが、祖父はエアコンが大嫌いな性分で、
そして当然ながら俺にそんな金は無い。
鬱陶しいと思いながらフローリングの床をゴロゴロする。
ここも祖父の変人ぶりが見て取れるところだ。
昭和臭漂う古い家なのに何故か畳が一切無い。
ちなみに理由は不明。ま、俺も畳が嫌いだから良いけど。
不意に腹が鳴る。
面倒臭ぇと思いながら起き、冷蔵庫へと足を運ぶ。
中身は少ないが、朝食分位は有りそうだ。
ちなみに自分では料理しない、コンビニとかで買うだけ。
冷蔵庫を開けっ放しにしながら何を食おうかと考えていると
玄関のブザーが鳴る。朝から客かよ・・・・。
冷蔵庫を乱暴に閉め、のろのろと玄関へと足を運ぶ。
スライド式のこれも古臭いドアを無言で開ける。
そこに立っていたのはＳ学生高学年位の女の子。
白のワンピースに赤いリボンの麦わら帽子、
そしてサンダルにあとは何だっけ、
旅行の時なんかに使う何とかの鞄を持っていた。
ちなみに知り合いＳ学生は居ない、記憶の限りでは・・・・。
「こんにちは勝お兄ちゃん。今日から宜しくお願いします。」
可愛らしい笑顔でそう言う女の子。てか何で俺の名前知ってる？。
たが、今日から宜しくお願いします。の辺りの言葉が
頭の中に入って来たところで、
あまりにも面倒臭いという理由から忘却の彼方に追いやった記憶が
次々と蘇って来る。
この少女の名前はまり、俺の姪で１＊歳。
そして夏休みの間だけ一緒暮らすだったか？。
「ねぇなんで無反応なの？。」
「ほんとに来たのな。」
記憶が確かなら俺は反対したはず・・・・。
どうやらその意見は通らなかったようだ。
「せっかく来たんだから歓迎してよ。」
ここまでの俺の態度に明らかな不満を言うまり。
「歓迎した覚えは無ぇよ!。」
とりあえず事実を言っとく。当のまりは更に顔を尖らせる。
「はぁ、とりあえず入れよ・・・・。」
何時までもこの暑いなか女の子を外にってのも気が引けるので、
渋々家の中に招き入れる事にした。
「おっ邪魔しまぁ～～す。」
するとさっきまでのが演技だったかの様に笑顔になるまり。
くっそおぅ～～可愛くねぇ～。
かくしてこの日俺の平和だった夏休みは終わりを告げた・・・・。

　　　（第１話終）