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1:可愛い弟子 55
投稿者:
タカ
◆mqLBnu30U
第55話
一直線に伸びた鋭い光芒が漆黒の夜空を切り裂いていく。 足回りの強化されたGTRは、深夜の峠道を力強く駆け上がっていた。 左に岩木山、右に八甲田連峰が見える。 八甲田は、明治の終わりに青森歩兵第五連隊が遭難した、いわゆる八甲田雪中行軍遭難事件の舞台となった悲劇の山である。 1902年、対露戦に備え第8師団歩兵第5連隊は冬期のソリによる物資輸送についての検証を行うために総勢210名の隊員を要し、一泊二日の予定で青森から八戸間の雪中行軍を実施した。 わずか一泊の行程ではあったが、途中吹雪に遭遇し、豪雪地帯に不慣れであったことや見積もりが甘かったことなどから、やがて隊は進路を見失い、迷走した挙げ句に退路まで見失って、最終的には199名が凍死するという、世界でも類のない山岳史上最大の遭難事故に発展した。 雪に埋もれていた遺体は完全に凍りつき、慎重に運ばなければ粉々に砕けたというのだから、どれほどの極寒の中で彼らが彷徨っていたのか容易に想像がつく。 死亡の主な原因は凍死であったが、中には崖から転落して亡くなったものや体力不足により力尽きて倒れたもの、そして、意外と多かったのが発狂して川に飛び込み溺死したものだった。 厳しい軍規の中で鍛えられ、強靱な精神力を養っていたはずの彼らが、発狂するまで精神を追い込まれ、凍てつく極寒の川に自ら裸になって飛び込んだというのだから、どれほど過酷な状況に置かれていたのかは想像に難くない。 タカの見つめる先で真っ黒なうねりとなって大きく横たわる山脈は、そんな悲劇の舞台となった山だった。 星ひとつない夜空の下に伸びる黒い巨影は、見る者によっては勇壮で神秘的な光景として映るのかもしれない。 しかし、あそこには寒さの中で彷徨い続けた歩兵第5連隊の怨念が、今も帰路を求めて彷徨っているかもしれないと考えてしまうと、タカには、その山影が自分たちを待ちかまえる不気味な黒い影にしか見えないのだった。 一路青森を目指してから、すでに6時間強。 敵の本拠地に近づきつつあった。 これから、もうひとつの怨念と闘うことになる。 執念で自分の娘を奪っていった男。 そいつから、もう一度娘を奪い返す。 目的地は目前に迫っていた。 もうすぐ、シホに会える・・。 進路を北へ北へと向けていた。 眠気覚ましに開けたわずかなウインドウの隙間から流れ込む外気が一段と冷たくなった。 震えるほど寒さを感じるわけではないが、やたらと腹が冷える。 「閉めようか?」 寒さが気になり、助手席で顔をしかめていたシゲさんに訊ねた。 シゲさんは、首を横に振るだけで声を出さなかった。 胸の痛みのためか、ずっと苦渋の表情を浮かべている。 渋面を作っているのは、おそらく痛みのせいばかりではない。 表情に、苦々しさがにじみ出していた。 あの襲撃事件から二日が経っていた。 あれほど警戒していのに、シホをまんまと奪われた。 シホだけではない。 重丸は左のあばらを二本持っていかれ、シノは買ったばかりの新車を奪われていた。 コトリを襲った大男ふたりは、エンジンの掛けっぱなしになっていたシノの軽乗用車をどさくさに紛れて強奪し、逃走に利用した。 その車両が発見されたと青森県警から連絡が入ったのは昨日のことだ。 「タカさん、私が替わりますから少し休まれますか?」 所有者であるシノが引き取りに行くことになり、足のない彼女をタカが愛車で送ってやることになった。 無論、そんなことは建前であり、3人は奪われたシホを奪還するべく、敵の本拠地へと向かっているところだった。 深夜のせいか東北自動車道の下りにそれほど車はなかった。 順調な長距離クルーズに、今のところ疲れはそれほど感じない。 「大丈夫だから気を使わなくていいよ、シノちゃん。」 苦渋の表情を浮かべる重丸とは対照的に、タカは思いの外、表情に明るさがあった。 確かに、シホを奪われてしまったことに後悔がないわけではない。 だが、要は再奪取すればいいだけの話しである。 シホの居場所はすでにわかっていた。 あとは、そこへ向かって彼女を取り返せば、それですべてが終わる。 単純な性格をしているだけに行動原理が明確になってしまえば、突き進むだけしか知らない男にさほどの憂いはなかった。 まさしく獲物を見つけた鷹のごとく、ぎらつく瞳は前だけを見つめている。 ハンドルを握る手が汗ばんでいたのは、学生の頃から闘いに明け暮れ、鍛え上げてきた肉体が、敵の近づいたのを察知して昂揚しているからだ。 汗は手のひらだけでなく、脇の下や背中の一部からも吹き出している。 決着のときは、刻一刻と近づいていた。 火照った身体から吹き出す汗が止まらない。 しかし、腹だけは・・・異様に冷えてならなかった・・・。 2日前・・・ あれほど警戒していたのに、まんまとしてやられた。 いや、油断していたから、やられてしまったのだ。 もっと早くに帰ってやれば、事態はまた違った方向に進んだのかもしれない。 シホのそばを離れさえしなければ、あいつを奪われることはなかったのかもしれない。 シゲさんに真実を告げられ、ことの重大さを理解していたはずなのに、やはりタカは心のどこかでそれを現実のものとして受け止めていなかった。 その油断が、シホの強奪という最悪の結末を招いてしまった。 どれだけ後悔しても、もはや後の祭りでしかない。 死んでも守ってやると約束したのに、まったくの口先だけで終わってしまった。 だが、タカにも言い分はある。 あのとき、シホを奪い返すことはできたはずだった。 確かに一瞬ではあったが、黒ずくめの男の腕から逃れ、その身が自由となったシホは自分の意志で走り出すことができたはずなのだ。 タカは、シホがコトリを抱えたまま、脱兎のごとく走り出すものと信じて疑わなかった。 だが、そうはならなかった。 タカの脳裏に、悲しそうに笑ったシホの顔がある。 あの瞬間、シホはコトリだけを解き放つように強く車外に押し出すと、自分は唇を噛みしめながらベンツの中に留まった。 彼女を掣肘するものはなにもなかった。 シホは自分の意志で、そこに残ることを選んだのだ。 ドアの閉まる間際、シホはタカを見つめながら悲しそうな顔で笑った。 あんなに寂しそうなシホの顔を、タカは今までに見たことがなかった。 恐れていたことが目の前で起こってしまった。 近親相姦には魔力がある。 その魔力に、シホは抗えなかった。 タカには、どうすることもできなかった。 闇夜に消えていくベンツのテールランプを呆然と佇んで見送るしかできなかった。 冷静だったのはシノだ。 シノはベンツのナンバーを控えていた。 タカさん!と呼ばれて、我に返った。 重丸が倒れていたことを思い出して、すぐに走り寄った。 重丸は意識を失っていた。 タカの呼びかけに、ようやく目を開いた。 ひとりでは立てそうにない重丸を肩に担ぎながら、シホがさらわれてしまったことを告げた。 苦痛に顔を歪ませる重丸に、警察に応援を求めるように進言した。 サイレンの音がすぐそこまで迫っていた。 ベンツのナンバーはシノが控えている。 市のあちこちには、まだ緊急配備網が敷かれているはずだった。 今ならば、まだ間に合う。 だが、重丸はタカの意見に同意しなかった。 重丸は、間もなく現れたパトカーを視界の中に認めると、肩を担ぐタカを押しのけた。 痛みを押し殺しながら平然とした素振りを見せ、やってきた警察官に、酔っぱらいが暴れただけだと説明した。 事実の隠蔽を図ったのだ。 重丸が懸念していたのはシホとコトリの将来だった。 この事件が公のものとなって、あのふたりまでが調べられるようなことにでもなれば、これまで隠してきた過去がたちまち暴露されて、ふたりは元の生活に戻れなくなる。 それどころか、五所川原の知るところとなれば命さえ狙われかねない。 なにより、コトリの出生の秘密まで白日の下に晒されてしまい、コトリ自身が禁忌の行為の果てに生まれた子だと知ってしまう可能性まであった。 コトリに、なんの罪があるわけではなかった。 シホにだって罪があるわけではない。 子供の頃の彼女は、ひたすら父親に従っていただけなのだ。 罪のないふたりを傷つけたくない思いが、重丸に嘘の証言をさせた。 すべては極秘裏のうちに進めていかなければならない。 もし、シホに生命の危険が迫っていたのなら、それこそ緊急な対応を必要としただろう。 しかし、そうではなかった。 和磨は、自分の娘を取り返しに来ただけだ。 奴らの居場所さえわかれば、いつでも奪い返すことは可能だった。 重丸に諭されて、タカも同意せざるを得なかった。 警察の聴取は、重丸がその場に居合わせたこともあり、ごく短時間のうちに終わることができた。 パトカーでやってきた年輩と若い巡査のふたりは、災難に巻き込まれた重丸を心配するだけで、敬愛する恩師の言葉に、なんの疑いも持たなかった。 シノの車が盗まれたことや重丸がケガを負ったことなどは伏せていたので、簡単な状況確認が行われただけで、警察が到着してから1時間も経った頃には全員が解放されていた。 車を奪われ、足をなくしてしまったシノに代わって、陸上自衛官さんが重丸とシノを自宅まで送ってくれることになった。 タカは、翌日重丸と落ち合う時間だけを示し合わせると、海上保安官さんと別れて、背中で泣きじゃくるコトリを背負いながら自分の部屋へと戻った。 ひどい脱力感だけがあった・・・。
2015/07/20 12:25:05(J7HnzD8A)
投稿者:
タカ
◆mqLBnu30U
――第56話――
部屋に戻ると、タカはコトリを胸に抱えたまま、倒れるようにベッドに横になった。 灯りをつけることさえ億劫なほど疲れ、気持ちは、ひどく滅入って仕方なかった。 当たり前だ。 自分の女が、自らの意志で他の男の元に走ったのだ。 複雑な気持ちにならないはずがない。 これからどうすべきかを自問した。 だが、どんなに悩んだところで答えなんてひとつしかないのだった。 ずっとコトリは泣きじゃくっていた。 この幼い少女から母親を奪うことなんてできるはずがない。 コトリのためにも、なんとしてもシホを取り戻さなければならない。 タカがやるべきことなど、初めからひとつしかないのだった。 コトリは、いつまで経っても泣きやみそうになかった。 泣きじゃくるコトリの頭をずっと撫でていた。 撫でているうちに、ふと、悲しげに笑ったシホの顔が脳裏に浮かび、唐突にその恐怖は取り憑いた。 シホは、自らの意志でタカの目の前から消えた。 あの男の呪縛から逃れることができず、タカを捨てる道を選んでしまった。 あれほど可愛がっていたシホはもういない。 そして、あの男が狙っているのはシホだけじゃない。 もし、このコトリまで失うことになってしまったら・・・。 そんなことを考えていたら胸が潰れるほどに苦しくなり、居ても立ってもいられなくなって、力の限りコトリを抱きしめていた。 奪われたくない思いが、タカから理性を剥ぎ取った。 衝動的にコトリを裸にしていた。 突然乱暴に裸にされて怯えの目を向けるコトリを腕の中に閉じこめた。 するつもりはなかった。 ただ、コトリの体温を感じていたいだけだった。 圧するように小さな身体を腕の中に閉じこめた。 いやらしく身体中をなでまわし、無言のままに誰にも渡さないことを教えた。 苦しさに逃れようとすれば、どこまでも追いかけて、また閉じこめた。 太い腕に閉じこめられ、喘ぐように苦しいと訴えるコトリの唇を塞いで黙らせた。小さな頭を鷲掴みにして、長く伸ばした舌でひたすら口を犯しつづけた。 ずいぶんとコトリには苦しい時間であったと思う。 コトリは泣いた。 泣いたが抵抗はしなかった。 シホがいなくなったことで、タカが怒っているとコトリは勘違いしたのかもしれなかった。 贖罪の気持ちが、コトリに抵抗させなかった。 やがて、腕の中に閉じこめたコトリが声を殺しながら泣いているのに気付いて、タカの中から、ようやく荒ぶる気持ちが消えていった。 こんな子供になにをぶつけているのかと自分を鼻白んだ。 確かにコトリを奪われたくない気持ちは強かった。 だが、そこには、むざむざとシホを奪われてしまった自分に対する不甲斐なさへの怒りもあった。 やり場のない怒りまで、まとめてコトリにぶつけていた。 情けないと、自身を笑った。 タカの吐く息から荒々しさが消え、小さな頭を愛しげに撫でられて、ようやく許してもらえたと思ったのか、コトリのほうから胸をあわせて縋るようにしがみついてきた。 何度もタカの胸に頬ずりを繰り返し、そのときになって初めてタカは、コトリも同じ気持ちであったことに気がついた。 目の前で母親を失ったのはコトリも同じことだ。 そして、コトリは同様にタカがいなくなってしまうことを恐れていたのだ。 甘えるように頬ずりを繰り返すコトリは、どこにも行かないでと訴えているようだった。 タカはコトリのあごを持ち上げた。 ぐっしょりと頬を涙に濡らしていたコトリは、憐れなほど唇を震わせ、縋るような瞳でタカを見つめていた。 胸が詰まるようなコトリの泣き顔に、タカはわざとらしく微笑むと優しくキスをした。 そんなことしかできなかった。 ギュッとしがみついてきたコトリに、タカもまた、同じ気持ちであることを教えるように抱きしめた。 今度は優しく抱きしめた。 股間は痛いほどに張り詰めていたが求めなかった。 いいの?と、目にいっぱい涙を溜めたコトリが心配そうに訊いてくれたが、タカは首を横に振った。 今夜はこの腕の中にいる愛らしい宝物を汚す気にはなれなかった。 胸に伝わる温もりのありがたさを心ゆくまで感じていたかった。 腹の上にコトリを乗せたまま、タカは静かに目を閉じた。 ふたりは、そのまま泥のように眠り、そして、朝になって目覚めたふたりは、それは不思議なほど、ごく自然と体を重ねてひとつになった。 コトリは初めてその日、その幼い膣にタカの精液を受け止めたのだった。
15/07/20 12:26
(J7HnzD8A)
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タカ
◆mqLBnu30U
――第57話――
「ここがタカの家なの?」 すぐにでもシホの奪還に向いたい気持ちは強かった。 だが、コトリをひとりにしておくわけにはいかない。 「ああ。」 思案した挙げ句、タカはしばらくの間コトリを実家に預けることにした。 「おっきな家だね。」 ふたりはタカの実家の前に立っていた。 心なしか、コトリの表情が明るい。 「そっか?」 コトリと手を繋ぐタカの表情にも不思議な明るさがあった。 「大丈夫か?」 ついさっきまでベッドの中にいたふたり。 朝はデカさも増し増しだから、さぞ辛かったろうに、最後までコトリは我慢して、ずっとタカにしがみついていた。 「なにが?」 照れているのか、コトリは敢えてクールをよそおい、とぼけるように視線を逸らす。 ベッドの中では、玩具のような愛らしい性器からタカの精液を溢れさせていた。 タカを見上げる瞳にうっすらと涙を浮かべていたのは、痛かったからか、それとも嬉しかったからかは、わからない。 どちらにせよ、コトリはちゃんとタカを愛してやれる体になった。 それが、多少なりともコトリには嬉しいことらしく、その嬉しさが、コトリの顔からわずかながらも憂いの表情を消している。 「えっと・・ふつつかものですが・・。」 てなわけで、本気でタカの戸籍に入るつもりになったらしい。 「なにしてんの、お前?」 「あいさつの練習。もうすぐ家族になるんだから、ちゃんとお父様とお母様に、あいさつしなきゃだめでしょ。」 今の時代、そんなこといわねえぞ。 ほんと、つまんないことばっか覚えやがって・・・。 「ほれ、行くぞ。」 タカは、コトリの手のひらをギュッと握りしめた。 コトリも強く握りかえしてくる。 それも面白えかもな・・・。 タカにしたところで、このままコトリと家族になってもいい気がした。 となりにいるのは、たった9歳の女の子。 でも、ちゃんとタカを愛してくれる女の子。 二度と手放せなくなった大事な宝物。 ずっと一緒にいるさ・・・。 「ただいま。」 タカはコトリと手を繋ぎながら、久しぶりの我が家へと帰った。 繋いだ手のひらは、離さなかった。 しっかりと握りあったふたりの手が、永遠に離れることはないと教えあっているようだった。 朝から、いきなり幼気な女の子を連れて帰ってきたバカ息子に母親が目を丸くして驚いたのは言うまでもない。 「は、早く戻してきな!」 玄関に立っていたタカとコトリを見るなり、悲鳴を上げそうな顔で開口一番にほざいたのが、それだった。 どこによ?・・・。 「ちょっと、その子はなんなのさ?」 不審の目を向ける母親に、タカは真顔で「オレのヨメ。」とだけ答えた。 コトリはむちゃくちゃ嬉しかったらしく、玄関を上がるなり、いきなり膝を折って三つ指を突くと、「お母様、ふつつか者ですが」とか、ほんとにやっていた。 リビングに向かい、我が家の主を探した。 定年後はこれといった職にも就かず、気ままな毎日を過ごしていた親父はステテコに腹巻と純オヤジチックなスタイルで新聞を読んでいた。 「どうしたんだ、それ?」 コトリを目にするなり少し驚いた顔をしていたが、コトリが膝を突いて「お父様、ふつつかものですが・・」とか、またやり始めると、愉快そうに笑って可愛らしい珍客を手招いた。 すぐに膝の上に乗せて満面の笑みを浮かべる。 チンチンのないのが欲しかったって、ずっといってたもんな。 オヤジキラーのコトリは慣れたもん。 「二、三日預かってくれねえか?」 親父に向かって、それだけをいった。 「わかった。」 親父の返事は、至極短いものだった。 深くは訊かなかった。 長年、家族なんてやってりゃ、顔を見ただけで腹の中が読めるようになる。 たぶん、まだ犯罪者にはなってないと踏んだんだろう。 そんなところだ。 「ちょっと、この子大丈夫かい?」 とりあえず、コトリにはタカの部屋を使わせることにして、朝飯がまだだったから、遅い朝食タイム。 フラダンスババアが心配していたのは、コトリの素性じゃなくて小娘の胃袋。 「おいしぃっ!!!」 まあ、食うわ食うわ。 見事に炊飯器は空に。 だし巻き玉子やひじきの煮物なんて日本人にしてみれば当たり前のメニュー。 しかし、オーソドックスな朝食さえも、シホの手料理に比べれば、ごちそうに早変わりしてしまう。 ほんと不憫なヤツ・・・。 「じゃあ、いい子にしてろよ・・・。」 シゲさんとの約束の時間が迫っていた。 今後のことを話し合わなければならない。 「ママを・・・ママを必ず連れて帰ってきてね・・・。」 あの生意気なおてんば娘が、目にいっぱい涙を溜めて懇願していた。 「任せろ。」 タカの自信満々の返事に、涙と鼻水でくしゃくしゃになっていた笑顔。 家を出るときは、さっそくジジイに抱っこされて玄関先で見送ってくれた。 ジジイ、イタズラすんじゃねえぞ。 外に出ようとしたところで「タカ。」と呼ばれた。 振り返った。 コトリの顔が近づいてきて、チュッとキスをしてくれた。 「あ、あんた、まさかほんとに・・・。」 それを見て驚いていたババアの顔。 親父は愉快そうに笑ってたっけ。 「だからヨメだって、いったろ。」 にやり、と笑って、タカは玄関をあとにした。
15/07/20 12:31
(J7HnzD8A)
投稿者:
タカ
◆mqLBnu30U
――第58話――
コトリの献身的な愛情がなかったら、きっとオレは堪えられなかった。 あの小娘がいてくれなかったら立ち直ることさえ、できなかったかもしれない。 「すぐにでも行こう。」 でも、オレにはコトリがいてくれた。 「いったい、どこへ行くんだ?」 オレには、あのおてんばで生意気だけど、なによりも大事でかけがえのない天使がいてくれたんだ。 シゲさんとは、病院で落ち合った。 シゲさんは肋骨を2本やられていた。 「だいたい奴らのアジトだって、俺たちはまだ掴んでいないんだぞ。」 大きな痛手を負った上に、なんの手がかりも得られていないシゲさんの表情は暗かった。 「大丈夫。」 対してオレは、希望の光を見つけて意気込んでいた。 「奴らの居場所なら、わかってる。」 シゲさんに向かって、自信満々に言い切った。 「わかってるって、お前・・・。」 そうさ・・、オレにはコトリがいてくれて、あのやんちゃなおてんば娘がしっかりと見つけてくれたんだ。 『これ・・・なに?』 朝になって、実家へ向かうためにベッドから出ようとしたときだった。 ベッドの下に転がっていたオレのシャツをコトリが拾ってくれた。 甲斐甲斐しく奥様気取りでオレにそのシャツを着せようとしたところでコトリがシャツの胸ポケットに一枚のメモ紙が入っているのに気がついた。 そんな紙切れにオレは覚えがなかった。 紙片に書かれた文字を目で追った。 どうやらどこかの住所のようだった。 都道府県名は、青森から始まっていた。 これは・・・。 どうしてこんなものがポケットの中に入っていたのかわからなかった。 考えているうちに、ふと、思い出したことがあった。 そういえば、夕べナイフ野郎と闘っていたとき、奴が軽く胸を突いてきた。 ナイフの切っ先を腹に押し当てていたにも関わらず、奴は軽く胸を突いただけで、刺してこなかった。 あのときだ・・・。 確証はなかった。 だが、確信はあった。 おそらくこの住所は、シホの連れ去られた場所を示しているのに違いない。 思えば、あのナイフ野郎は初めから妙だった。 闘う意志がまるで見られなかった。 シホとコトリを奪うのが目的だったはずなのに、奴はそれをしようとしなかった。 きっと、なにか事情があったのだ。 罠とは思わなかった。 オレたちをわざわざ向こうにおびき出す理由がない。 だとすれば、これはシホのいる場所を示していて、それはつまり、奴らのアジトを教えていることになる。 「そこに、シホがいるっていうのか?」 「ああ、たぶんね。だから、今すぐにでも青森へ向かおう。」 コトリが見つけてくれなきゃ、今頃あのメモ紙は洗濯機の中だ。 ケータイでさえ2回も洗ったからな。 たぶんオレだけなら、あんな紙切れに気付くことはなかった。 コトリが希望の光を見つけてくれたんだ。 やっぱりアイツはオレの天使だぜ。 病院へ来る前に、レンのマンションに立ち寄ってGTRは手に入れていた。 行こうと思えば、すぐにでも出られる態勢にはあった。 「一日だけ待て。」 逸る気持ちを諫めるように、シゲさんが止めた。 「どうして?」 「オレはこんな様だ。戦力になるとは思えん。無論、同行はする。だが、いざというときに役に立てそうもない。だから、代わりの戦力を用意する。」 「代わりの戦力?あの陸上自衛官さんたちのこと?」 彼らが一緒ならば心強い。 「いや、明日から市の防災訓練が始まるから、彼らを頼ることはできない。」 防災訓練? 「ねえ、シゲさん、どうしてあの人たちは夕べオレたちの味方になってくれたの?いったい、彼らは何者なわけ?」 アパートを出たときには、すでにふたりとも出勤して車はなかった。 お礼を言いたい気持ちもあったが、まず彼らが何者なのか知りたかった。 「やっぱり、あのふたりはシゲさんが?」 偶然にしてはタイミングがよすぎた。 しかも、あのふたりは、あらかじめ襲撃を予測していたかのように、あの状況下でも動じた気配がなかった。 何より、彼らはシゲさんの名前を知っていた。 タカの知らないところで、目の前にいる銀縁眼鏡の男は、またなにか別の策を弄していたのかもしれなかった。 「もしものときのための保険として彼らに住んでもらっていたんだ。できれば、こんな形で活躍して欲しくはなかったんだが、おかげで最悪の事態だけは回避することができた。」 やっぱり。 あのふたりは、シゲさんの隠し球だったわけだ。 最悪とは、コトリまで奪われてしまったときのことをいっているのだろう。 しかし・・・ほんと、このおっさんは色々やってくれるよ・・・。 「どうしてシゲさんは、あんな人達を知っているの?」 シゲさんに警察関係者の知り合いが多いのはわかっている。 彼は剣道の教官として警察と深い関わり合いがある。 だが、自衛隊と海上保安庁では、シゲさんとの接点が思い浮かばない。 「彼らは市の防災危機管理対策委員会のメンバーだ。それぞれのセクションから連絡官として派遣されているのを俺がスカウトした。」 「防災危機管理対策委員会?」 「ああ、災害時に市民を避難させたり、救出するための対応を協議する部署だ。彼らは市と連携して各々の所属組織の運用について意見を提出するアドバイザー的役割を務めている。」 あ、だから防災訓練があると自由になれないんだ。 「でも、どうしてそんな人達が、あのアパートに?」 あそこはオレも含めて、最強の公務員宿舎。 「自衛官の彼はレンジャー隊員で、海保の彼は元SST、つまり特殊警備隊の隊員だ。どちらも格闘術を学んだエキスパートなので、いざというときのためにお願いして、あのアパートに住んでもらっていたんだ。」 「なんていったの?」 「2階に住む親子をバカなヤクザどもが脅しに来るかもしれないから、そのときは追い返してくれって、頼んだのさ。」 「へえ、でも、そんな理由だけでよくあそこに住んでくれたね。」 「家賃をただにしたからな。」 「え!?なにそれ!?」 「あそこは野呂課長のお父さんが経営しているアパートなんだ。」 「え!あのジイちゃん、野呂課長のお父さんなの!?」 「知ってるのか?」 「そりゃあ、大家さんだからね。ものすごく礼儀正しいジイちゃんでしょ?」 「ああ、今は引退されてるが、元は剣道の師範で全日本を7連覇した豪傑だ。」 7連・・すげっ!高確パチンコ並みだ! 「あの方はあの辺りの大地主さんでもあってな、アパートやマンションなんかを手広く経営してらっしゃるんだが、お前たちの住むあのアパートだけは近々壊す予定だったらしく、野呂さんに相談したら、ただでいいといってくれたので、それで彼らに住んでもらってたわけさ。」 マヂ!? オレなんて6万近く払ってるよ! ってか、あのアパートなくなっちゃうの? 「ところでさ・・・。」 シゲさんの話を聞いているうちに、どうにも引っ掛っていたことを訊いてみることにした。 「もしかして、野呂課長って、シホたちのことを知ってるの?」 今の話もそうだが、これまでの話を聞くかぎり、どうにもあの課長が今回の件に一枚噛んでいるような気がしてならない。 「なぜ、そう思う?」 シゲさんの表情は変わらなかったが、含みのある言い方ではあった。 「はっきりとはわからないけれど、シゲさんは野呂課長の存在をなぜか隠そうとしていたよね。たとえば今の話だってそうだし、それに、シゲさんたちの先生が野呂課長だったってこともオレに隠そうとしていたでしょ。それってどうしてなの?」 シゲさんは、野呂課長との繋がりを隠そうとしていた。 それは間違いない。 しかし、なぜそこまで隠そうとしたんだ? それが聞きたかった。 シゲさんが短くため息をついた。 「ここまで来たら隠しても意味がないから洗いざらい教えてやるが、絶対に口外はするなよ。これは俺たちだけの問題ではないんだ。野呂さんにも迷惑がかかることになる。だから、これから俺が話すことはお前の胸の中にだけしまっておけ。」 「う・・ん。」 ずいぶんともったいぶった言い方だった。 ことの重大さがシゲさんの表情から読み取れる。 「実は俺やシホたちがこの街に住めるようになったのは、野呂さんが色々やってくれたおかげなんだ。」 「野呂課長が?いったい、あのひとがなにをしたの?」 意外だった。 「シホの件で青森から逃走を図るときに俺たちにはしなくてはならないことが幾つかあった。その中の一つに、移転記録の改ざんがあったんだ。奴らに見つからないようにするためには、新しい住所を秘匿しなけりゃならない。だが、俺たちにも生活はあるわけだから、ちゃんと転入届を提出して新しい住所を手に入れる必要がある。しかし、まともにそれをやってしまえば足跡を辿られて即座に居所が知られてしまうから附票や転入届をどうにかして偽造する必要があったんだ。附票は、わかるな?」 「えっと・・・附票は戸籍にくっついてる住所の変更記録でしょ?」 「そうだ。住民票ならば転出する際に適当な住所を書いてしまえば、それでしばらくは目くらましになる。しかし、住所記録の履歴である附票だけはどうしようもない。だから何とかして転入先の附票を改ざんする必要があった。それに転入先には転出元の異動証明も必要だから、それも偽造しなければならない。それで、そんなことを頼める相手を考えたときに野呂さんのことを思い出したわけさ。」 「よく、そんなことを承知したね。だってそれって紛れもない犯罪行為でしょ?」 なるほど・・口外できないわけだ・・・。 「まあ、確かにそうなんだが、野呂さんも児相に勤務していた時期があってな、シホのことを説明したら快く強力してくれたよ。あのひとの倫理観と俺の倫理観は似ているところがあってな・・・。というか、俺が野呂さんに影響されて、今の倫理観に辿り着いたようなものだが・・・。シホが住んでいるアパートから俺たちが住む家まで世話してくれて、この街に住むための手はずをすべて整えてくれたのは野呂さんなんだ。まったく、あのひとには頭が上がらないよ。」 「へぇー。」 「シホの戸籍にコトリちゃんを紛れ込ませたのも野呂さんがやってくれたんだ。ただ、おおっぴらに公開してしまうと、どこでボロが出るかわからないから、普段は閲覧できないようにちょっと細工をしておいたんだ。」 だから閲覧できなかったのか・・。 「野呂課長って、すごいんだね。」 「ああ、あのひとは本当にすごいひとなんだ。裏も表も知り尽くしたまさに地方行政の生き字引みたいなひとさ。だから、お前を水道課から異動させるときに、あのひとの下に預けたんだ。」 すいません・・そのような配慮があったとは知りませんでした・・・。 「心臓を悪くされて青森を去ると決まったときは、オレも半身を失ったような気持ちになったものだ。偉大な俺の師匠だったからな。あのひとから教えていただいたことは数知れない。もし、野呂さんがあのまま青森に居続けてくれたなら、俺の人生もまた変わっていたかもしれんな。だが、結果的にはこうして俺やシホを救ってくれることになったわけだから、人生なんてどこでどう転ぶかわからないもんだ。だから、「生きる」ということは面白いんだ。」 最後は、自分自身に言って聞かせているようだった。 「とにかく一日だけ待て。」 今すぐにでも飛び出したい気持ちはあった。 だが、シゲさんにそこまでいわれては無視するわけにもいかない。 逸る気持ちを抑えて、一日だけ待った。 コトリに会いたい気持ちはあったが実家へは帰らなかった。 アパートにも戻らなかった。 青森へ行くと決まって、オレは再び、レンのマンションを訪れていた。
15/07/20 12:32
(J7HnzD8A)
投稿者:
タカ
◆mqLBnu30U
第59話
ほんと、テメエらいい加減にしろよ・・・。 手首をかっ切ったレンは、一晩だけのお泊まりで済んだらしく、タカが訪れたときは、すでにマンションに戻っていた。 エントランスのインターフォンから来訪を告げると、いつものように嬉しそうに応対したレンが、すぐにホールの扉を開けてくれた。 エレベーターで15階に辿り着くなり、玄関から顔を出していたアイツが嬉しそうに手を振ってくる。 ほんと、お前ってば友達思いなのか、友達がいないんだか・・・。 このときに気付くべきだったんだよな・・。 だって、奴は素足にガウンを羽織ってただけだったんだから。 奴に案内されて部屋に入った。 まったく警戒していなかったから、リビングからメグミちゃんが、いらっしゃいと、いきなり顔を出したときには腰が抜けるほど驚いた。 メグミちゃんがいたから驚いたんじゃない。 彼女がほとんど裸だったから、たまげたわけだ。 メグミちゃんは、まだ幼さの残るみずみずしい肢体に指の幅ほどのベルトで作られた拘束具を着ているだけで、ほかにはなにも着ていなかった。 下着さえも着けずに、可愛らしいおっぱいやお尻を丸出しにして、アソコはかろうじて細いハーネスが隠していたが、ほとんどが丸見えに近い姿だった。 ど、どうした、おまえ!? 目のやり場に困るどころじゃなかった。 思わず回れ右をして視線を逸らしていると、メグミちゃんが、ひょいと後ろから顔を出してニヤニヤと見つめてくる。 「あれぇ?タカさん、照れてるんですかぁ?」 焦りまくりのオレとは対照的に、当のメグミちゃんはまったく平気な顔。 い、いったい、なにがあった?・・。 「タカ、そんなとこに突っ立ってないで早く座りなよ。」 レンまでが余裕の態度で、何がなんだかわかりゃしない。 お前ら、宇宙人にでもさらわれたのか!? 「で、そのカッコはなに?」 目のやり場に困るというか、テメエらいい加減にしろよ、というか・・。 リビングのソファに、ふたりと向かい合わせに座ってた。 メグミちゃんは、まったく恥ずかしがる素振りも見せず、おっぱい丸出しのまま、となりのレンにしなだれるようにもたれて甘えまくり。 「だって、お兄ちゃんが喜ぶんだもん♪」 おい、どうしたお前? つい昨日まで、ボロクソに罵ってたよな? えっと、確か13歳だっけ?・・・。 13歳といえばお年頃のはずだが、メグミちゃんはレンにもたれながら、うっとりとした眼差しを奴に向けるだけで、オレの視線なんてまったく気にする素振りもない。 夕べは、泣き顔ばかり見せられたわけだが、今は打って変わって、どこか開き直ったように明るい表情まで見せるメグミちゃんは、病院であった女の子とは別人のようだった。 お前、マヂで宇宙人にさらわれてねえか?・・・。 ずっとレンに寄り添い、羨望の眼差しで奴を見上げる瞳には、信頼しきった力強さのようなものがある。 対して、そのメグミちゃんに慕われるレンの方はといえば、足を組んで豪快にソファにふんぞり返り、おっぱい丸出しのメグミちゃんに見つめられながら満足そうにワイングラスなんか傾けてやがる。 バカ丸出しだった。 おまえ、そのワイングラスってさ・・。 よく映画なんかで見るよな。 手のひらに余るほどのデカいワイングラスを中指と薬指のあいだにはさんで、中身をクルクル回すやつ。 ほんとに回してた。 「うーん・・・トレビアン・・。」 アホだ・・。 氏ね・・。 いかにも高そうなガウンを羽織ってメグミちゃんを侍らす姿は、さしずめ間抜けなブルジョアジー。 お前、そのガウンの下は裸だよな? ぴたりと肌を寄せてくるメグミちゃんに満足したように笑みを浮かべた奴は、ワイングラスの中身を口に含むと、それを飲み込みもせずに、じっと見つめるメグミちゃんの口へと運んでいった。 ああっ!? ふたりの唇が重なり、メグミちゃんが喉を鳴らしてコクコクと飲んでいく。 顔が離れても、濃密な視線で見つめ合っていたふたり。 今すぐにでも、やりだしそうな雰囲気だった。 「あのよ・・・。」 テメエら、オレが来てることを忘れてねえか? つか、今日はお前に聞きたいことがあるんだよ! こっちは女を強奪されて腹が立ってるのに、なぜ見せつけられなきゃならん。 てか、お前ら兄妹だろ? 近親相姦をオレにだけカミングアウトした変態兄妹。 「そろそろ本題に入っていいですか?」 下手に出ていってみた。 とりあえず、コイツの家なんで。 「うん、申してみよ。」 メグミちゃんを手に入れて妙な自信でもついたのか、すっかり王様気取りだったアイツ。 テメエ・・マヂでぶっ飛ばすぞ・・。 もうすぐ、顔面蒼白になるくせに・・。
15/07/20 13:21
(J7HnzD8A)
投稿者:
タカ
◆mqLBnu30U
――第60話――
「・・・でね、お父さんの所に戻らないようにね、お兄ちゃんに鎖に繋いで飼ってもらうことにしたの。ほら、繋がれちゃったら、帰りたくても帰れないでしょ♪」 らしいですよ・・。 で、その格好なわけだ・・。 お前、絶対に男で失敗するタイプだと思うよ・・。 この兄ちゃんを選んだ時点でフリ込んでるとは思うけど・・。 しっかりとメイクまでしているせいか、まだ13歳の女の子でしかないはずのメグミちゃんが、ちょっと大人びた雰囲気の小悪魔的な色気を漂わせる女になっていた。 赤い唇と長いまつげ、まぶたの淡いシャドーが彼女の幼さに妖艶な色香を加えている。 背が高くて身体だって同年代の子に比べれば少しはできあがっているから、全身を締めつけるボディハーネスだって似合ってないわけじゃないけれど、やっぱりムチムチエロエロの肉感ボディってわけじゃないから、彼女が屈んだりすると、ハーネスの股のところが緩んで割れ目がくっきり見えたりする。 すっかり剃られているのか、彼女の股間に陰毛はなく、肉高のスリットからわずかに顔を出す肉襞までが目に飛び込んできて、視線をそらせるのに苦労した。 は、鼻血が・・・。 おまけに完成しきってない身体のくせに、小さなおっぱいをニップルチェーンで飾ったりして、彼女が動く度にそれがチャラチャラと胸の谷間で揺れたりするものだから、まだ膨らみきってないおっぱいとのミスマッチが妙に艶めかしく、うちのウルトラマンがすぐにでも暴れ出しそうになり、鎮めるのに苦労した。 なんで苦労ばっかりせにゃならん。 さすがにニップルピアスまではいかなくて、小豆ほどの小さな乳首に鎖を留めていたのはちょっと小さめのニップルクランプ。 痛くないんかい? 胸の飾りに加えて、細い首と両手両足にも枷を巻かれ、ボディハーネスで身を締められる彼女の姿は、まさしくこれから調教されるM女のよう。 でも、メグミちゃんの肌に特に目立った傷は見あたらないから、たぶん格好だけ。 そりゃそうだ。 レンに、女をシバくような根性あるわけない。 「どんな心境の変化なの?」 メグミちゃんに訊いてみた。 この豹変ぶりは、さすがにオレも予想できん。 「タカさんが教えてくれたんでしょ?ただでやらせたら強くなるよって。」 ああ。 そりゃ、確かにいったけどさ。 だからって強くなりすぎだろ・・。 レンを違う世界へ連れて行く気か? 「もう、お父さんなんかいらない・・、お兄ちゃんだけでいいんだ・・・。」 ひどく切なそうにメグミちゃんはつぶやいた。 潤んだ瞳までしてじっとレンを見上げ、それが嘘じゃないよといいたげに、となりのレンにしがみつくと、胸を合わせて唇を重ねていった。 舌まで絡める濃密なキス。 おい、レン・・・お前、ガウンの下で暴れ出してるぞ・・。 もっこりと膨らんでいったあいつの股間。 つうか・・。 「もしかしてさ・・。」 あまりにも昨日と態度が違いすぎる。 夕べは、いきなり病室ではじめていたふたり。 「お前ら、もしかして夕べからやりまくり?」 おそらくそう。 あきれたように訊いてみた。 「へへ・・。」 レンがだらしないほど顔を緩ませて照れ笑い。 メグミちゃんは、にこりと笑うと照れもしないであっさりいった。 「一晩中してたら、看護師さんに怒られて病院追い出されちゃった♪」 「はは・・・。」 あたりめえだ・・。 メグミちゃんは、いつまでも甘えるようにレンの胸に顔を埋めて離れなかった。 もう、どうにでもして状態。 その姿は、レンに絡みつくなよなよとした軟体動物そのもの。 細い腕がレンの胸をなで回したり、股間の上をなぞったり。 まだ、始めるんじゃねえぞ・・。 一晩可愛がってもらっただけで、女ってこんなに変われるもんなのかね? それだけ信頼出来る男を得たってことなのかもしれない。 「メグミがこんなに素直になってくれたのも、みんなタカのおかげだよ。」 妹の頭を撫でるレンの顔には終始満面の笑み。 そりゃよかった。 しかし、だからってお前、妹にその格好はねえだろ・・・。 お前らいったいどこへ向かう気だ? あきれて溜息しか出てこなかった。 まあ、感謝してくれるんなら、こっちも話しがしやすい。 「だったらさ、感謝ついでに、ちょっとオレのお願いを聞いてくんない?」 やっと本題に入れる。 ここまでの話しが長げえこと・・。 だからいつまで経っても、この小説終わらねえんだよ・・。 「なに?タカのお願いだったら、なんでも聞いちゃうよ。」 上機嫌のあいつは顔から笑みが消えない。 まったくの間抜け面。 まだ、コイツは気付いていなかった。 「そっか、じゃあさ・・・。」 だが、オレは気付いちまったのさ。 「なあに?」 お前が隠していたことにな。 バカ面かますアイツを鋭い目で睨んでた。 「コトリのビデオを出せ。」 レンの顔が、一瞬で引きつった。
15/07/20 13:23
(J7HnzD8A)
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