ようこそゲストさん。
ナンネットIDにログインしていません。
ID: PASS:
IDを保存 
ナンネットIDは完全無料のサービスです。ナンネットIDを取得するとナンネットの様々なサービスをご利用いただけます。
新規登録はこちら
ID・パスワードの再発行はこちら
可愛い弟子27
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ロリータ 官能小説   
投稿の削除 パスワード:
1:可愛い弟子27
投稿者: タカ ◆mqLBnu30U
蛍光灯の青白い光が、やけにもの悲しかった。
白い壁に囲まれた寂しげな部屋。
薄い布団にくるまれて、小さな身体が目の間に横たわっていた。
ずっと見慣れていた顔なのに、今は、なぜかその笑顔を思い出すこともできない。

ヨーダみたいな顔だったもんな・・。

不思議と甘い物がきれたことのない課の茶器棚。
誰かが、どこかに出張に行くと、必ず土産を買ってきた。
箱の包み紙を解くと、決まって中身は甘い物。

「はい、おすそ分け。」

全然存在感のない人だったけど、みんなに好かれているのは知っていた。

課長・・・オレ、甘い物得意じゃないんですが・・・。

他の課の連中までが、困った事が起きると、決まってこの人のところに足を運んだ。

「甘いものはね・・・心を落ち着かせてくれるんだよ。」

窓際のデスクで、気持ちよさそうに毎日、日向ぼっこ。
甘い物を頬ばりながら、昆布茶をすする姿は、課の代名詞にもなってたっけ。

課長・・これ以上落ち着いたらオレ、寝てしまいます・・。

シゲさんの配慮で、オレが新しく配置されたのは、総務の文書係。
市が発簡した文書を、整理し記録する人。
単純な仕事だと思っていた。

「ここにはね、市の歴史が眠ってるんだよ・・。」

まさしく市の全てが、掌握出来る部屋だった。

「勉強してこい。」

配置換えになったオレに、シゲさんが最初に言った言葉。
オレは、その言葉の意味を深く考えもしなかった。
目の前に横たわっているのは、市の生き字引。
優しく語りかけてくれたあの瞳は、もう開いてはくれない・・。

まだまだ教えてもらうべきことは、山ほどあった・・。
なのに、なぜ?

「野呂課長ぉ――――!!!」






「うるさいよ。死んでないから。」

シゲさんに睨まれた。

あ、・・そうなんですか?

まったく動かないので、てっきり、逝かれたのかと思いました・・・。




見つめる視線の先に、穏やかに眠る野呂課長の姿があった。
まだ、病院の中。
レンと違って、ちょっと小さめの個室。
シゲさんとふたり並んで、眼下に横たわる小柄な影を見つめていた。

「軽い暑気あたりだそうだ。ここのところ暑い日が続いたからな。
 きっと、それが堪えたんだろう。
 夕方、自宅で倒れたと奥さんから知らせを受けて、それで慌てて駆けつけたんだ。」

「だからケータイを?」

「ああ、病院の中じゃ、マナーモードでもマナー違反だからな。」

シゲさんがケータイに出なかった理由。

なるほど。

「それで、・・お前は、どうしてここに?」

「ああ、友達が入院しちゃって、それで・・・。」

勢いあまって、手首を切った友。
複雑な家庭環境に育ち、妹を助けてやることが出来なかった。
やり方は正しかったわけじゃないけれど、自暴自棄になった妹を守ろうと、アイツはアイ
ツなりに必死だった。
今頃は、奥の角部屋で、その妹のために必死になってる真っ最中。
意外とタフだなお前。
もう、逝かれましたかね?
妊娠だけは、気をつけろよ~。

「そうか・・。」

オレの答えに、シゲさんは、ポツリとつぶやいただけだった。
珍しく、精彩のない顔をしている。
野呂課長を見つめる眼差しには、ありありと不安の色が窺えた。

「軽い暑気あたり・・・なんだよね?」

あまりの心配そうな顔つきに、不安になって、もう一度確かめた。

「ああ、確かにそうなんだが、野呂さんは、心臓も悪いんだ。前にも一度、倒れたことが
ある。それが理由で・・。」

そこまで言ったところで、シゲさんは、急に口を閉じた。

「それが理由で、・・なに?」

「いや・・・なんでもない。」

出たよ・・・。

なに?オレに隠し事するのがあなたの中で流行ってるわけ?
野呂課長の心臓が悪いなんて、初めて聞いたよ・・。

「ところでさ、シゲさんに訊きたいことがあるんだけど。」

場所柄、相応しい話題とも思えなかった。
だが、シホと言う女の不可思議さが、オレを早急にさせていた。
それに、早く帰らないと、アイツらをふたりだけにしてしまう。

「なんだ?」

シゲさんの顔つきが変わる。
銀縁メガネがキラリと光った。
オレの訊きたがってることなんか、シゲさんには、すっかりお見通しらしい。

「あ、あの・・シホさんのことなんだけど・・。」

鋭い眼に睨まれて、急に弱気になってしまうオレ。

「シホの?シホの何が訊きたい?」

逆にあちらは、強気な口調。

「う、うん。・・あのさ、彼女っていったい・・。」

何者なの?と訊こうとしたところで、不意に後ろの扉が開く音。
同時に、ふわりと飛び込んできた甘い匂い。
振り返ると、花瓶を両手に携えた美少女が立っていた。
花瓶には、色とりどりのガーベラ。

「あら?タカさん?」

見覚えのある顔が、懐かしそうに微笑む。

「シノちゃ~ん♪」

思わずオレも顔がほころんだね。
シゲさんの一人娘で、地元の国立大学に通っているシノちゃん。
現役女子大生にして現役大学女子剣道の覇者。
学舎では、法学部に籍を置き、自治行政学を専攻して、その成績もきわめて優秀な、まさ
しく文武両道の才女。
ものスゴく綺麗で、入学した当初から、その類い希な容姿は、ことある事にキャンパス内
で、噂のタネになるほどに。
シノちゃんに比べれば、そこら辺に転がってるアイドルなんて、カスに見えるね。
もちろん、当然のごとく現役のキャンパスクイーンだが、これには、いささか裏事情が
あって、シノちゃんは、けっこう迷惑顔。
入学した、最初の年のことだ。
キャンパスクイーンは、自薦によって、名乗りを上げた女の子たちの中から、気に入った
子を投票によって選ぶ仕組みになっていた。
もちろん、シノちゃんは大本命視されていたが、まったくキャンパスクイーンなんぞとい
う、浮かれた催し事に興味もなかった彼女は、所属する剣道部の強い勧めも頑なに拒ん
で、立候補なんかもしなかった。
だいたい、立候補した女の子たちの裏には、それを後押しする部や同好会の存在があ
り、言わば、これは各クラブ間の闘いでもあった。
彼らが、どれだけ組織票をまとめることが出来るか?
それが、キャンパスクイーンを決定づける大きな因子でもあり、各クラブの次年度予算を
決定づける要素にもなっていたのだ。
大本命不在の中で行われたキャンパスクイーン選。
下馬評では、組織的にも大きく、学内での影響力も強いラグビー部が推す女の子が、有力
かと思われていた。
だが、フタを開けたら驚きの結果に。
なんと、立候補もしていないシノちゃんが、数ある浮動票をかき集めて、ダントツの1位
になってしまったのだ。
もちろん、立候補していないのだから、当選する権利などあるわけない。
ところが、「民意が反映されなくて、なんの民主主義か!」と、運営サイドが一方的に決
定を下してしまい、シノちゃんが、キャンパスクイーンに選ばれてしまったわけ。
どうやら、この企画を担当していた運営部長が、シノちゃんにホの字だったらしい。
当然、この決定に納得しない奴らはいるわけで、そいつらを黙らせるために、彼は、構内
で、いかにシノちゃんがキャンパスクイーンに相応しいか、アジテーションまでぶちかま
したというのだから、いかに彼女に惚れていたかが窺える。
もっとも、シノちゃんに浮いた話は聞いたことがないので、その後、うまくいったとも思
えんが・・・。
2年目は、頑なに拒む彼女を、なんとかキャンパスクイーンにするために、ルール変更ま
でが行われた。
それまで自薦のみだったのを、他薦もありに変えたのだ。
こうなれば、もはやシノちゃんにかなう女の子はいない。
自薦はゼロとなり、シノちゃんを推薦する団体は、剣道部のみならず、7つの部と13の
同好会が彼女を支持したというのだから、もはや勝負にもなりゃしなかった。
かくして、彼女は意図せぬところで、勝手に女王様に祭り上げられ、キャンパスクイーン
の称号を与えられたというわけ。
キャンパスクイーンに選ばれると、大学の顔になる。
この大学では、毎年、キャンパスクイーンになった女の子は、市長を表見訪問するのが慣
習になっていた。
望んでもいないのに、勝手に祭り上げられて、シノちゃんにしてみれは、甚だ迷惑な話
だ。
だが、学部長にまで頼まれたら、無下に断ることも出来なかったのだろう。
シゲさんも驚いたろうな。
自分の勤め先に、ましてや自分のボスに、娘が表敬訪問だもん。
法学部に籍を置く才媛であり、現役女子剣道のチャンピョン。加えて、絶世の美少女とき
たら、マスコミだって黙ってるわけがない。
市長への表敬訪問時には、テレビ局までがやって来て大騒ぎ。
それに対処していたシゲさんは、終始苦笑い。
でも、シノちゃんを見つめる眼差しには、誇らしさがにじみ出ていた。
自慢の娘だもんね。
そのシノちゃんが、目の前にいる。

「お久しぶりですね。」

彼女が軽く微笑を浮かべただけで、それまで無機質な空間でしかなかった病室が、急に華
やいだように明るくなる。

美人って、すげっ!

「こんちは♪」

ほんとに彼女に会うのは、久しぶりだ。

今年は、大社祭の奉納試合も観に行かなかったから、去年の試合以来の再会となる。

「お父さん。・・野呂先生の奥さんは、着替えを取り家に戻るそうです。送ってあげた方
がよろしいかしら?」

シノちゃんは、花瓶を枕元近くのキャビネットの上に飾りながら、シゲさんに訊ねた。

うーん、父親に敬語。

まさしく大和撫子の鏡だね。

・・・ん?

野呂先生?

先生?

「あれ?シノちゃん、野呂課長を知ってるの?」

てっきり、シゲさんの付き添いで来たものとばかり思っていた。

「あら?タカさん知らないんですか?私もお父さんも、野呂先生に剣道を教えて頂いたん
ですよ。」

「え?」

「野呂先生は、私とお父さん、ふたりのお師匠さんなんです。だから、倒れたと聞かされ
たときには、もう、心臓が止まるかと思うほど驚いちゃって。でも、それほど大事になら
なかったようなので、本当に良かったです。」

後半部分は、ほぼ耳を素通り。

え?師匠?

これが?

このヨーダが!!?

春雷重丸と現役女子剣道チャンピョンの師匠だって!!!?

「シノ、おしゃべりはそのくらいにして、早く奥さんを送って差し上げろ。」

シゲさんが、不機嫌そうな声を出した。

いかにもマズイといった渋面になっている。

なに?オレに聞かれちゃやばい話しなわけ?

「あ・・すみません。それじゃ、私はこれで・・・。」

シノちゃんは、なんで怒られたのかわからない様子。

そばに置いてあったイスの上から、バッグを手にすると、すぐに彼女は部屋を出て行こう
とした。

だが、何かを思い出したように、部屋の隅に置いてあった紙袋から、小さな箱を取り出す
と、それをオレに向かって差し出した。

「あの・・これ、よろしかったら・・・。
 父の以前の赴任先の方から送っていただいた物なんですけど、お嫌いでなかったた
ら、お召し上がりになりませんか?
 野呂先生が、お好きなお菓子なので持ってきたんですけど、三つもあるので、おひとつ
タカさんに差し上げます。」

そう言いながら、彼女が手渡してくれた箱の包み紙を何気に見て驚いた。

カラー印刷された、いかにも郷土名物的な土産物の包み紙には、オレがシホの部屋で見
た、写真の門が誇らしげに写っている。

あの門だ・・・。

コトリを胸に抱いていた男の背後に構えていた門。

間違いない。確かにあの門だ。

だが、なんだ?

妙な違和感がある。

形は、あの門に間違いない。

しかし、なんだこの違和感は?

その門の写真の上には『青森銘菓 朱院門まんじゅう』と書いてあった。

青森銘菓!?

青森・・?

シゲさんの前の赴任先?


・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・。


そうだ!!思い出した!!!!



『シゲさん、ここに来る前って、どこにいたの?』

シゲさんと知り合ったばかりの頃、飲み屋で交わした会話だ。

『スゲえ、雪のあるところだ。』

シゲさんも、相当飲んでて、かなりデキていた。

『北海道?』

『いーや、途中下車だな。』

『じゃあ、青森だ。』

『はは、そんなところだ。』

『のわりには、方言でないね。』

『んだべ。』

『なにそれ?』

『津軽弁で、そうだろう、って言ったのさ。オレは元々、向こうの生まれじゃないから
な。』

『じゃあ、どこの人なの?』

『九州さ。熊本の生まれだ。』

『へぇ、九州から青森なんて、また遠くへ行ったね。』

『人間なんて長くやってるとな、色々あるもんさ・・・。』



4年前の会話だ。

オレも酔っぱらっていたから、すっかり記憶の底から抜けていた。

そうだ、思い出した。

シゲさんは、4年前に青森からオレたちの街にやってきたんだ。

だから、コトリの「雪のあるところ」という言葉に、妙な引っかかりを覚えたんだ。

そして4年前という符号。

待てよ・・それに確かシゲさんは、熊本の生まれって言ってたよな。

熊本・・・。

(熊本よ。ここに来る前は、熊本に住んでいたわ・・。)

そうだ・・・シホだ。

シホも、熊本という地名を口にした。

まったく先の見えない糸だった。

だが、その糸は、全てがシゲさんへと繋がっている。

オレは、シノちゃんのくれた箱を手にしながら、思いのほか鋭い目でシゲさんを睨んでい
たのかもしれない。

「じゃあ、お先に失礼しますね。」

何も知らないシノちゃんは、明るく手を振りながら、病室を出て行った。

彼女が、居なくなると、驚くほどの静寂さが訪れた。

さあ、シゲさん、洗いざらい話してもらうよ。

もう煙に巻くのは、なしだぜ・・・。

シゲさんは、オレの視線に気づくと、小さなため息を吐き、そして、諦めたように、静か
にまぶたを閉じていった・・・。





赤いテールランプが、暗闇の中をゆっくりと流れていく。
暗闇に慣れきった瞳は、気付かぬうちに視界を狭め、まぶたが徐々に重くなっていくのを
感じていた。
道の端に緑の看板が見え、それを通り過ぎた辺りで、ようやく前方の車両がオレンジ色の
ランプを明滅させる。
やっと、2回目の休憩をするつもりになったらしい。
青森を出てから既に4時間と少し。
目的地までは、もう、それほどの距離はないが、このまま走り続けたところで、窮屈な座
席に固定されていた身体が、まともに動いてくれるとは思えない。
ここらで身体をほぐしておかないと、どうにも機敏になど動けそうになく、箕田は、なか
ば安堵しながら、自分もウインカーを出すと、車体を左側のランプへと滑り込ませていっ
た。
前方のベンツをぴたりと追うように、PAの駐車場に車体を乗り入れていく。
ベンツは、巧みに監視カメラの目から外れながら、車体を端へ端へと寄せていった。
駐車場の灯りがほとんど届かない暗がりまでやってきて、ようやくベンツが停まる。
それに倣って、ハマーをベンツの後ろに付けると、箕田は後部座席のふたりに振り返っ
た。

「休憩でっせ・・・。」

声を掛けたところで、タンとハツのふたりは、箕田に見向きもしない。
既にタンは、上半身まで裸になっていて、およそ全裸に近い姿で、手のひらに握った小さ
な尻を一心不乱に舐めている。
ハツは、上着こそ羽織っているものの、ズボンの前はだらしなく開かれ、その巨体を傲然
と背もたれに寄り掛からせながら、気持ちよさげに顔を上向かせていた。
ハツの開いた股の間に顔を埋めていた、小さな女の子。
なかなか可愛らしい顔をしていたが、今は見るも無惨に、涙と鼻水でグシャグシャにな
り、その小さな口には、裂けそうになるほどの巨大な肉塊が押し込まれている。
身に付けていたのは、赤いスカートと白いソックスだけで、そのスカートも尻が丸見えに
なるほどめくられ、ほとんど役目を果たしてない。
おそらく家族との行楽帰りだったのだろう。
1回目の休憩でPAに立ち寄ったとき、いきなりタンが拐かしてきた。

「どうせ長旅になるんだ。暇つぶしは必要だろ?」

まったく罪の意識など感じていないこの男は、下卑た笑みまで浮かべて、少女をハマーの
中に放り込んだ。
当て身でも食らったのか、少女の意識はなく、ハマーがPAを出るまでは、その身柄も安
泰だった。
くれぐれも揉め事を起こすな、とトリヤマからしつこいほどに言い含められていただけ
に、タンもハツも高速に乗り出すまでは大人しくもしていたが、いったんハマーが走り出
してしまえば、もう、ふたりを掣肘する者は誰もいない。
ハマーの速度が、順調に高速域に達したところで、すぐさまふたりは、意識のない少女に
襲いかかった。
眠ってたんじゃつまらねえ、とばかりに、タンは、少女のパンツを下ろして、丸い小さな
尻をあらわにすると、節くれだったごつい指を、まだ小さなアナルに無造作に突き入れ
た。
悶絶しながら目覚めた少女は、わけもわからぬままに、瞬く間に着ていた服を剥かれ
て、たちどころに身体中に舌を這わされた。
泣き叫びながら、抵抗したところで、屈強な男ふたりに脇を挟まれて、襲いかかられたの
では、敵うはずもない。
ハツは、あらがう少女の細い首を、でかい手のひらに握って「騒ぐと殺す
ぞ・・・。」と、大の大人でさえ震えあがるほどの凄味で脅かした。
悲鳴を必死に堪えて、無惨に唇を震わせることしかできなくなった少女は、かれこれ2時
間近くも、ふたりのオモチャにされて弄ばれている。
もはや、意識は虚ろで、目はぼんやりと開いているだけだった。
言われるままに、代わる代わるふたりのモノをその小さな口に含んでいき、アナルは、指
が2本も入るほどに拡げられている。

「降りねえんですかい?・・・。」

あまりの悪どさに、ため息しか出てこない。
訊ねてみたところで、ふたりは、少女に夢中で箕田の声すらも耳に届いてないようだっ
た。
箕田は、あきれたようにもう一度溜め息をつき、ハマーを降りた。

「タンとハツは、どうした?」

先にベンツから降りていたトリヤマが、すぐに声を掛けてくる。

「ぐっすり、寝てますわ・・・。」

そうとしか答えようがなかった。

「けっ!バカ共が・・・しっかり働かねえとヤキ入れるからな。あいつ等にそう伝えてお
け・・・。」

忌々しげに毒づくと、トリヤマは、先にサービスエリアに足を向けていた和磨の後を追い
かけていった。
ハマーの中に顔を突っ込まれずに助かった。
真っ黒なスモークが張られたウインドウは、外から見ただけでは、中の様子はわからない
ここで、いざこざでも起こされたのでは、計画が狂いかねない。

しばらくは、大人しくしててくれよ・・・。

あの少女には憐れみを覚えるものの、大事の前の小事には、目をつむることもやむを得な
かった。
箕田には、これからやらなくてはならないことがある。
ズボンのポケットに手を突っ込むと、箕田は、手のひらに小銭を確かめた。
PAには、緊急用に公衆電話が置いてある。
ケータイは使えない。
履歴からバレる危険があるからだ。
電話番号は頭に叩き込んであった。
相手の名前も知っている。
箕田はトイレに向かう振りをしながら、公衆電話を見つけると、その前に佇んだ。
周りを見渡して、和磨とトリヤマの姿がないのを確認してから、受話器を把って小銭を入
れた。
覚えていた番号を脳裏に浮かべ、その番号を押していく。
短い呼び出し音の後、すぐに女の声が返ってきた。

「はい。青森県警青森署、生活安全課です。・・・」






「シゲさん、青森にいたんだね。」

広い背中が目の前にある。

狭い病室の中は、水を打ったような静けさに満ちていた。

「ああ・・・。」

シゲさんは、ズボンのポケットに手を入れながら、野呂課長の横に佇んで、ずっと寝顔を
見おろしているままだ。

「シホは、昔、熊本に住んでたって、言ってたよ。」

しかし、視線は課長に向けられているが、意識は違うところにある。

おそらく、そうだ・・・。

「そうか・・・。俺の生まれ故郷だな・・・。」

珍しく、その表情に精彩はなかった。

顔を俯かせる姿は、なぜか叱られた子供のようだった。

「4年前までね。」

「・・・・・・・。」

「4年前。シゲさんがこの街にやってきた年と同じだね。これは、何か偶然なわけ?」

「ふっ・・偶然だろう。そんな奴らはごまんといるよ。」

まだシゲさんの視線は、野呂課長に向けられたままだ。

「偶然じゃないよね。」

はっきりと断言した。

「なぜ、そう思う?」

「シゲさん、この門、知ってる?」

オレは、シノちゃんからもらった箱を片手に掲げた。

「門?」

ようやくシゲさんの顔が振り返る。

肩越しに銀縁メガネの奥から、光る目がオレを見据えた。

「朱院門のことか?ああ、観光地で有名だったからな。よく知ってるよ。それが、どうか
したのか?」

「この門の前でコトリを写した写真が、シホの部屋にあった。」

すなわち、それはシホたちが青森にいたって証拠だ。

「コトリちゃんの写真が?・・・シホの部屋に!?」

急にシゲさんの顔色が変わった。

「それは、本当にコトリちゃんだったのか!?」

いきなりシゲさんが、オレを睨みながら近づいてきた。

おわっ!ちょっとタンマっ!

「それは、本当にコトリちゃんだったのか!?」

両腕を掴まれて揺さぶられた。

ちょ、ちょっと待って!訊いてんのはオレなんだけど?

「あ、ああ・・確かにコトリだったよ・・。でも、ちょっと門の印象が違う気がするけ
ど・・。」

「印象が違う?違うって、どういうことだ!!?」

すごい気迫だ。

まるでオレを敵のように睨みつけている。

シ、シゲさん、ここ病室・・。

「そ、その・・なんか、色が違うような・・・。」

「色?、色って、門の色か?」

「う、うん・・写真のは、こんなに真っ赤じゃなくて、もっと黒っぽかったよう
な・・・。」

シゲさんが思案顔になった。

「そうか・・・。」

急にオレの腕を掴んでいた手のひらから、力が抜けていく。

「それは、コトリちゃんが、幾つぐらいの時の写真だ?」

「た、たぶん・・4,5歳くらいかな・・。」

オレの答えを聞いて、安堵したように緊張していた表情を崩していくのが、はっきりとわ
かった。

あんなに血相を変えたほどだ。よほど大きな不安が胸をよぎったんだろう。

そして、緊張が解けた途端に、シゲさんは、らしからぬミスを犯してくれた。

「そうか・・。それはコトリじゃない。それはシ・・・!!」

そこまで言ったところで、慌てて口を閉ざした。

再び、鋭い目がオレに向けられる。

そんな目で睨んでも、もう駄目だよ。

今、シホって言おうとしたよね。

あれはコトリじゃなくて、シホなんだね。

しかし、どこまで顔が似てやがるんだ、あの母子は!?

だが、あれがシホだとすれば・・・。

「シホは、子供の頃、青森に住んでいたんだね?」

今も、キョウコが狂っているかもしれない地。

コトリは、東北で撮られたビデオの女の子を知っていると言った。

カマを掛けてみた。

シゲさんは、答えない。

「シゲさんは、青森からシホと一緒に、この街にやってきた。そうでしょ?」

やはり、オレの問いに、シゲさんは答えてくれなかった。

「シホには、何か秘密がある。それをシゲさんは知っている。」

シゲさんは、黙ってオレを見つめたままだ。

「その秘密って、阿宗会が絡んでるんじゃない?」

それは口から出任せだった。

確証があったわけじゃない。

だが、コトリ・・いや、シホか。シホを門の前で抱いていたあの男たちは、どう見たって
まとも堅気の奴らじゃない。

あれが阿宗会の連中だとすれば、パズルのピースが埋まる。

それは、オレが想像する最悪の形でだが・・・。

「お前、どうして阿宗会まで知っている?」

想像でしかなかったオレの疑念を、シゲさんが払拭してくれる形になった。

「やっぱり、阿宗会が絡んでるんだね。」

観念したのか、シゲさんが、短いため息を吐きながら、表情を和らげていく。

「ふっ、すまんなタカ。お前のことをちょっと見くびりすぎていた。この短期間に、よく
そこまで掴んだもんだ。」

「シホたちが拉致される危険性って・・・阿宗会なの?」

シゲさんとは反対に、緊張していくのが自分でもわかった。

相手がヤクザなら、気を引き締めておかないと、取り返しのつかないことになる。

「ああ、そうだ。」

「なぜ、シホたちは阿宗会に追われているの?」

自然と口をついて出た。

状況を考えれば、シホたちは阿宗会から逃げていて、そして奴らは追っている。

それが正しい状況判断だ。

シゲさんは、シホたちが追われているの知っていた。

だからオレに監視を頼んだ。

いや、ボディガード代わりにしたんだ。

敵が凶悪で、かつ、戦闘力があるから、それに対抗するための処置をした。

そう考えれば、すべての辻褄が合う。

シホたちが逃げている理由は、おそらく・・・。

シゲさんが大きく天井を仰ぎ見た。

大きなため息を吐いて、ゆっくりとオレに顔を向ける。

不思議なほどに穏やかな表情だった。

優しげな眼差しが、オレを見つめていた。

それは、覚悟を決めたと言うよりも、オレを信じていると言いたげだった。

「タカ、すべてを話してやろう。だがな、お前はきっと悩むことになる。そして、大きな
選択を迫られる・・・。それでも、いいか?」

オレは大きく頷いた。

選択問題は昔から得意さ。

だって、鉛筆転がすだけだもん。

「シゲさん。シホのこと。コトリのこと。すべてを話して・・・。」

どんな答えが出ようとも、オレがあいつ等に向ける想いは変わらない。

必ず守ると誓った。

だから、早く話して!

「わかった。お前に俺たちの秘密を、すべて話してやろう。」

そう言って、シゲさんが真摯な眼差しで、オレを見据えたときだった。

いきなり病室の扉が開く音。

初老の看護師が、ずけずけと入ってきた。

「すいませーん。もう消灯時間なんでー、ご家族以外の方は、お引き取りくださーい。」

それだけ言ったら出て行った。

か、風か?

シゲさんが笑う。

「場所を変えるか・・。」

シゲさんも苦笑いを浮かべながら、課長に一礼すると、病室を出て行った。

緊張感出しまくりで、妙な炎まで燃やしていたオレ。

いきなり水をかけられて、急にしぼんだ。




バ、ババァ・・・。

 
2010/11/15 23:32:47(n793lqUZ)
2
投稿者: タカ ◆mqLBnu30U
ずいぶんと間が開いてしまいましたが、
完成させると約束したのでうpしておきます。

10/11/15 23:34 (n793lqUZ)
3
投稿者: 有里
タカさんおかえりなさいませです♪ (*^^*)


ご多忙だとお察しします お体には気をつけれれて頑張ってくださいね(b^-゜)
10/11/16 09:07 (rDWjhBQ4)
4
投稿者: タカ ◆mqLBnu30U
有里さ~んo(^-^)o
ありがとう…(泣)

とにかく完結までガンバル。

みんなも帰ってきてくれるかなぁ…
言えた義理じゃないけど…
10/11/16 12:53 (vLJ31QE7)
5
投稿者: (無名)
タカさん、待ちかねたぜ!!
おかえり!!
10/11/16 13:57 (V7IkF1TR)
6
投稿者: (無名)
お帰りなさい(^-^)首をながくして待ってましたょ。
10/11/17 00:49 (nh5jqfrh)
コメントを投稿
投稿前に利用規定をお読みください。
名前
メール
本文
スレッドを上げない
画像認証

上に表示されている文字を半角英数字で入力してください。
 
官能小説 掲示板
官能小説 月間人気
官能小説 最近の人気
作品検索
動画掲示板
画像で見せたい女
その他の新着投稿
人気の話題・ネタ
ナンネット人気カテゴリ
information

ご支援ありがとうございます。ナンネットはプレミアム会員様のご支援に支えられております。

Copyright © ナンネット All Rights Reserved.