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1:女の匂い 第一話
投稿者:
あおい。
◆JA1lzmc7eg
恵子が最初にワインに興味を持ったのは、ただそれが金銭的余裕をイメージするからだった。
ワインが趣味です。 世間にそう言えれば、自分は生活に余裕があり豊かな人生を送っている女、そう思ってもらえると想像していた。 『横浜ワインサロン』 彼女がスマホで検索しみつけたワインの教室だった。 月に2度、横浜の繁華街にあるワイン専門のカフェバーを貸し切って開催される教室。ワインの産地、ブドウの品種など1からワインを学べると言う。 専業主婦である恵子は夫に願い、このワイン教室に通える事になった。 ワインへのイメージだけが彼女がワインスクールに憧れを抱かせたわけではないだろう。 40歳の専業主婦。 時間を持て余していた。 26歳の時に結婚、翌年産まれた娘は今年中学生になった。 「ママ、ワインスクールに通うのよ。」 そう言っても娘はスマホをいじり「へぇ」と言うだけで無関心。母への無関心さはある意味、物心がついたと言える。 主人といえば、 「いってらっしゃい。」 と言うだけで、娘と同じくスマホをいじっていた。 寂しさはない。 彼女も同じようにスマホをいじり、出会い系アプリを閲覧しているし、主人よりもテレビに映る若い俳優に目を向けていた。 出来ちゃった結婚。それでも不自由のない生活は手に入れ、結婚生活に満足はしていた。 ただ、歳を取るという事が、彼女の恐怖だった。 老いる前にもう1度恋がしたい。 その想い、欲求がワインスクールへの過度な期待になったのかも知れない。 『ワインを愛する素敵な仲間達と共に学びませんか?』 というワインスクールの広告に、彼女の想像は膨らむばかりだった。 きっとワインに興味を持つ、生活にも心にも余裕のある男性に出会える、私の生涯の趣味になる、恵子はそう思っていた。 「山下と言います、ホームページから応募して…」 小さな声で恵子は言った。 横浜駅からほど遠くない雑居ビル。その一階は小さなテラス席もあるカフェバーだった。 若者向けの内装にも見える。昼はカフェ、夜はバーとして運営され、スクール初日の今晩は、店先に置かれたボードに『本日ご予約様貸切り』とある。 店前、そのテラスの机の前に、10代にも見える若い女性が座っていた。白いシャツに黒いエプロンを身につけて、肌寒さから逃れるためロングのダウンコートを着ている。 「山下さま…山下さま…あ!はい、こんばんは。どうぞ。」 出席者名簿に目を通していたのかノートパソコンを覗き込んでいた彼女は、恵子を店内へと招き入れた。 店内はバーと言うよりもカフェのイメージが強い。 木製の丸机と椅子が何個か置かれ、店奥にはプロジェクターからの映像を写す白い垂れ幕が下がっていた。 すでに人がまばらに座っている。 「お好きな席へどうぞ。」 恵子を招き入れた若い女は立ち去り、恵子は周囲を不安気にうかがう。 20代後半に見えるカップルに、60代、年金受給者に見える男性、それに30代に見え仕事帰りに見える女性がいる。 「なんだか想像してたのとは…」 彼女は心で呟いた。 恵子がどこに座るか迷っていると、店奥のトイレと書かれたドアから、スーツを着た男性が現れた。中肉中背、メガネをかけている。彼は堂々と背筋を伸ばし恵子の前を歩くと、プロジェクターが写す白い垂れ幕にもっとも近い席に座った。 どうせ高い受講料なのだからと、良い席に座ろうと考えていた彼女は、意表を突かれてしまった。 男はといえば、クールに背筋を伸ばし席に着いたものの、恵子を目にして良い女だなと思い頭の中で笑顔になったに違いない。 恵子の首元までの髪は大人らしく、カラーも綺麗だし、何より背が高く痩せていた。店内で座る席を見つけられずに立ちすくむ姿、膝丈のベージュのコート、膝下からみえる脚に履いた黒いタイツも似合っていた。両手で握りしめた鞄は高そにみえる。主人の稼ぎが良いのだろう、通りすがりに香った香水がエロい。何より、一目みた彼女の顔立ちは、目は小さめだが綺麗で、鼻が高かった。鼻が大きく高い女はエロい、店内先頭の席に座った男はスマホをいじりながらも、このスクールを受講して良かったと思っていた。 恵子はと言えば中肉中背のサラリーマンには興味なく、彼から席が離れた店内1番奥の席に座った。 鞄から取り出したノートとボールペンを丸テーブルの上に置き、鞄をもう一つの席に置くとベージュのコートを脱いだ。 腕を晒したグレーのワンピース。厚めの生地とはいえ、肌寒いこの季節にわざと肌を見せるために選んで着てきたが、どうやらハズレだったみたいだと彼女は思っている。 木製の椅子に座り、黒いタイツを履いた脚を組むと彼女はスマホをいじり始めた。 「えー、皆さま、おまたせしました。」 袖を捲った白いシャツに、黒い腰までのエプロンを身につけた男が低い壇上に上がり、マイクを握り締め喋りはじめている。 こちらも小太りだが背は高い、髪を丸坊主近くまで刈り上げ、後頭部の髪の毛をワックスか何かで立ち上げていた。 「ワイン好きの皆さまとお会いでき…」 と彼が話しはじめた瞬間、店入口から20代に見える女二人が駆け込んできた。 「あー、どうぞどうぞ、空いている席へ」 司会者かつ講師であろう白いシャツの男がフォローするように言った。 女二人は息を荒らし、笑いながら空いている席に座った。コートを脱ぎながら、いまだ喋り続ける二人を見て、恵子は不快に思い口がへの字に曲がる。 咄嗟に恵子は気がついた。 ダメ、ダメ。 最近はすぐに不快な気分になって口がへの字に曲がり、年老いた顔になってしまう、と。40歳、目元にシワはできてきたし、口角が下がり怒った顔に思われる事もある。鏡の前で毎晩笑顔の練習をしてきた。鏡の前だけじゃなく人前でも笑顔でいなきゃいけない。シワ防止だけじゃなく良い縁が回ってこないわ、そう気づき顔に意識をまわして、彼女は笑顔を作った。 「えー続けます、ワインに興味を持つ皆様と…」 と司会の白いシャツの男が喋りはじめた瞬間、また入口のドアが開く。 「すみません、遅刻しちゃって」 大きな声でそう言い、軽く周りに頭を下げた若い男。 紺色の細身のスーツを着て、質の良さそうなネクタイをし、ビジネストートバッグとコートを抱えていた。 「あ、あーお好きな席にどうぞ…」 恥をかかされたかのように、小言で白いシャツの男が言った。 若い男は恵子のテーブルに空き席を見つけると躊躇せずにそこに座った。 「失礼します。」 と彼が言う。 恵子は若い男に見惚れていた。 背は180はあったかも知れない。細身のスーツが似合っているし、ネクタイとシャツの合わせ方もお洒落だった。 「いえ、どうぞ。」 高い声を出した恵子。彼の整った顔立ち、マッシュにカットされた髪に見惚れていた。 と、彼女が気づく。 「鞄…どうぞ」 床にトートバッグとコートを置いた彼をみて咄嗟に言った。両手を彼に伸ばす恵子。鞄とコートを受け取る為だが、彼自体を抱きしめたい気持ちだった。 「あ、ありがとうございます。」 若い男の笑顔が可愛い。先ほどまで必死に作り笑顔をしていた彼女に、縁が回って来たのかも知れない。恵子は彼の笑顔をみてそう思い、自然と彼女も笑顔になっていた。 恵子は彼の鞄とコートを受け取り自身の鞄とコートを置いた席に重ねた。 「えー、ではまずはご用意致しますウェルカムワインで乾杯しましょう。」 低い壇上に立つ白いシャツの男が言うと、同じ服装をした店員たちがグラスとワインボトルを持ち、各テーブルをまわった。 「えー、皆さまグラスはお手持ちでしょうか?えー、では素敵な出会いに、乾杯。」 白いシャツの男がそう言うと、同じテーブルを使う者同士でグラスをぶつけ合い、軽く会釈した。一人席に座る者は皆すぐにワインを飲んでいた。 「乾杯。宜しくお願いします。」 口を尖らせて恵子は若い彼のグラスに自身のグラスを向ける。 「宜しくお願いします。」 彼も挨拶した。 「ワイン、お好きなんですか?」 赤ワインを一口飲んで恵子が聞いた。 「あー、いえ、興味なかったんだですが、仕事、営業なのでお客様と飲む機会が…」 ここまでのことが、恵子がはっきりと覚えている記憶だった。 この後からの記憶がはっきりとしない。 乾杯後、もう何杯か、産地別のワインがふるまわれたと思う。 隣の若い男性が、笑顔で彼女に話しかけていた。確か26歳で保険の営業…いや高級な車の営業職、いやIT会社に勤めていたはず…わからない、彼女は思い出せなかった。 初回レッスン、2時間のスクール。19時から開催されたから、店を出たのは21時であるはず。 泥酔した恵子はまともに立っていられなかった。 参加者の皆が酔っていたが、立っていられないほどだったのは恵子だけだった。心配して声をかける者もいたが、初めて会った身、親身になれるほどではなかったし、何より恵子と同席していた誠実そうな若い男が肩を貸している。 店を出てから、スクール参加者達は皆、散っていった。 恵子の記憶はこの解散の挨拶後から全くない。 いや、彼にタクシーに乗せてもらうはずだったがそれを断ったのは彼女自身だったと記憶している。 彼の自宅へ向かうかも、そう予感して自衛心からタクシーを断ったはずだが、まともに歩けもしない身体で身なりも良く綺麗だと思われる40歳の女が、一人駅を目指したのは結果的には無防備だった。 彼女が目を開けると、白いコンクリートが目に写った。 安い蛍光灯も目に入る。 重い身体が彼女に覆いかぶさっていた。 男が恵子の身体に覆いかぶさり、彼女の乳首を舐めていた。舐めるというよりも吸い付き貪り舐めている。 「イヤ…」 彼女は小さな声で呟いたが、男にさえ聞こえないほど小さな声だった。 首をひねり周囲を見渡せば、便器が見えた。 手すりも見える。個室トイレ、そうはわかったが、身動きもとれず、男の姿もよくわからない。ワインが身体中を駆け巡り、彼女を熱くさせ、視界を阻ませている。 「イヤ…」 というが、どうにもできない。背中が少し痛かった。 スカートを捲し上げられて濃い黒のタイツが脱がされていく。 男は彼女の陰部に顔を近づけて、それを貪るように舐めはじめた。 「アァ…ダメ…」 恵子の声が男に届いたらしい。 男は声を出した、低くも高くも聞こえる声で、 「濡れてるじゃねーか」 と言った。 指を恵子の陰部に入れていじり、指についた液体を舐めている。 男の姿が分からない。 恵子の意識が遠くが、彼女身体と心は反応していた。 怖い、怖いが感じてしまっている自分がいる。 男の性欲の処理に使われている自分。その自分は男以上に感じているかもしれない。 立ち上がらされた恵子。意識が朦朧とする中、便器に隣設した手すり手をつかされお尻を突き出された。 男は彼女の身体を後ろから抱えながら、うまく勃起した自分のソレを彼女の陰部に入れようとする。が、うまく入れられない。 「おい、腰落とせ」 と言った男。 意識が朦朧とする中、恵子は誰にも聞こえない小さな声で、ハイと言った。 立っていられないくらい泥酔した彼女はすこしガニ股でかがみ、お尻に突き出す。 男は穴を見つけ、それに勃起したソレを入れた。 パンパンパン、と個室トイレ内に音が鳴る。 「ァア…」小さな声で喘ぐ恵子。頭を落とし、目には目の前の便器が写る。 パンパン、と男の身体と恵子の身体がぶつかる音が鳴る。 バンバン、と音が変わると、恵子は 「アァァ」 と喘ぎ声を出した。 すると彼女の口に男の指が入れられる。黙れの意味か舐めろの意味かわからない。 彼女はそれを必死に咥えた。 男は勢いよく彼女を突いていたが、咄嗟に彼女の陰部からソレを取り出し、彼女を振り向かせて強引にしゃがませると、彼女の口にソレを向けて強引に口の中に押し込んだ。 恵子の口の中にドクドクと液体が溢れだす。 ソレを咥えながら男に目を向けたが、蛍光灯の明かりと男が持つカメラのライトが眩しくて、男が誰かわからなかった。 液体が溢れだし、それを咳き込みながら飲み込み、吐き出す彼女。 男はカメラを回し続けていた。 「舐めろ。綺麗にしろ。」 男に言われ、意識が遠のく彼女は必死にソレを舐めた。 熱いソレ、まだ立ち上がっていた。 ベージュのコートを着たままだった。ワンピースはもともと襟元が広く深いデザインだったが、強引に広げられ小さな乳がさらけ出し、中途半端に脱がされた黒いタイツと黒い下着。ヒールでバランスを失い、泥酔してしゃがんでいても動く身体。 淫らな姿の彼女は、男のソレを吸い込んでいた。 ここから、また彼女の記憶はない。 寒さで目が覚めれば、彼女は汚い個室トイレの便器に座り込み、手すりに顔と身体を預けていた。 頭が痛い。 酔いは幾分かはマシになっていた。 個室トイレ内に自分だけがおり、ドアは少しだけ空いていた。 便器近くの壁から垂れ下がる赤ちゃんのオムツを変える台。そこに自分の鞄がみえた。 あそこに寝かされ男に愛撫されていた。 が、男の姿、容姿、ましてや顔が浮かばない。 ワインスクールの若い男?いや思い出せなかった。 「う…」 と彼女は呟いた。口の中が乾いていたが、ネバネバしたものが歯や舌に絡みついている。 彼女は手すりに頼って立ち上がると、洗面台までよろめきながら歩き、蛇口から水を出し口をゆすいだ。 吐き出すように水で口をゆすいだ彼女は鏡に写る自分の姿を目に入れる。髪が乱れてメイクが落ちた顔。 彼女は髪をかきあげると、また歩き、鞄を開ける。 財布もスマホもあった。 良かったと思いながら、また歩き便器に座る。 スマホを開けばカメラが起動していた。気になりカメラロールを開けば、そこには彼女の淫らな姿が写真と動画で何枚も映っていた。 個室トイレの便器に頭を下げて座り込む姿、男の指を咥える姿、便器に座ったまま陰部をいじられている動画。彼女は声をあげて喘いでいた。 覚えていない。 必死に男のソレを咥え、フェラをしている動画。カメラに目を向けている自分が映っている。 記憶がない。 彼女は男の勃起したソレを丁寧に、それに自分の欲望を満たすかのように舐めていた。 記憶にも薄っすらと残るベビーベッドでの愛撫、それにバックから入れられ、下品な姿勢で喘ぐ姿。 と、彼女は舌を出し興奮していた。自身が犯される動画を見ながら、寒く汚い個室トイレ内で便器に座り、熱くなる身体。 彼女はスマホで動画を見ながら、ヒールの音を鳴らし股を広げていく。 自然に指で陰部を触っていた。 40歳。ここまで激しく自分で自分の陰部をいじるのは初めてだった。 見知らぬ男に犯されおもちゃにされ喘ぐ自分。 いまも身体が熱く、興奮が止まらない。 彼女は冬の寒い個室トイレの中で一人熱らせた身体を満たすために陰部をいじり続けた。 タクシーの中で彼女は冷静になっていた。 財布の中は触れていない。身分証明書もあるし、アクセサリーもあった。 主人には助けを求める言葉よりも、夜中に帰宅する言い訳の言葉を考えていた。 と同時に頭に浮かぶ事、 私を犯した男、それが誰なのか? 彼女はワインスクールの店に入った時間からを必死に思いだそうとするが、相手、相手と公園の個室トイレに入る経緯は、頭に浮かばなかった。 ワインスクールの誰か?それとも街中で出会った誰か? 次のワインスクール…彼女はスケジュールを思い出す為に、鞄からスケジュール帳を取り出そうとタクシーの後部座席で身体をねじらせたときに、黒いタイツと黒い下着を履いていない事に気がついた。 汚い個室トイレに捨てたタイツと下着。 彼女が不意にタクシーの運転手に目を向けると、運転しながらミラー越しに彼女に目をちらつかせる初老の運転手が目に入った。 彼女は鞄の中を探すふりをしながら、そっと下品に、そして淫らに足元をわざと広げた。 ワンピースの開かれた襟元から見える下着をつけていない乳房と乳首、生脚が淫らに下品に開かれてみえそうになる陰部。スケジュール帳をみつけた恵子はまた運転手に目を向けた。 運転手は目をそらして、顔を赤くさせた。 続く
2018/12/21 22:40:01(wSKpFgxr)
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