2月上旬のよく晴れた日の午後、約1カ月ぶりに銭湯に行きました。
多くの方が利用されるスーパー銭湯ではなく、昔ながらの公衆浴場です。
なぜ今どき公衆浴場かというと、スーパー銭湯だとお湯がぬるくて気持ちが悪いことに加え、騒々しさと駄々広さに少しも落ち着けないからです。
その点、公衆浴場はこじんまりとして静かな上に、熱めのお湯とレトロな雰囲気に身も心も癒されます。
私の住んでいる町には公衆浴場がありませんので、隣接する町にある3軒のお店を週に1～２回の頻度で、その時々の気分に合わせて使い分けています。

3軒のうち1軒は比較的大きなお店で、２種類の浴槽以外にも薬草湯、サウナ、水風呂が備わっています。
お店の入り口は男女共通のフロント形式で、サウナで汗を流したいときに出かけます。
残りの2軒は二種類の浴槽だけで、入り口で男女左右に分かれて建物に入る番台銭湯です。
私の利用する午後から夕方の時間帯は、2軒ともお爺さんが番台に座っています。
利用し初めた当初は裸を見られることが恥ずかしかった私も、今では特に抵抗はありません。
たまにジッと見られたりすると、恥ずかしくなりますが…

番台形式の１軒の方は、脱衣場も洗い場も掃除が行き届いて清潔なのですが、洗い場が広くて天井も高いため冬場はカランの前でカラダを擦っていると寒いのと、浴槽のお湯が熱すぎるのと、番台のお爺さんが時々私の方をジッと見るのが難点です。
もう１軒の方はあまりキレイではなく、洗い場は狭くて設備も古いのですが、浴槽のお湯の温度が私にぴったりなので、行きつけにしています。
ただ脱衣場も狭いため、番台のお爺さんの目の前で裸になったり、濡れたカラダをバスタオルで拭ったりするような感じになります。
ただ50歳の私でも利用客の中では一番若いくらいの年齢構成なので、どなたもそんなことは気になさらないんでしょうけれど（笑）。

昨日は、行きつけのお店を利用しました。
約1カ月ぶりの銭湯となったのは、先月半ばに体調を崩し、肺炎と診断されて２日間の入院点滴治療を受けた後は、仕事も休んで自宅で静養していたからです。
午前中、主治医の先生から完治のお墨付きを貰うと、午後はお買い物を兼ねて、久しぶりに銭湯に出かけました。
建物に入ったとき時計を見ると時刻は3時過ぎで、番台にはいつものお爺さん。
洗い場には先客が２人いましたが、脱衣場は私１人でした。

服を脱ぎ終わると昔式のアナログ体重計に、いつものように素っ裸で載りました。
ほんの僅かでも体重が増えるのは辛いので、擦りタオルで前を隠したりはしません。
静養中も食事はきちんと摂っていたのですが、発熱や激しい咳でカロリーを消費したせいか、何と2kg以上も体重が減って、体重計の針は50kgを割っているではありませんか！
久しぶりの銭湯で少しはしゃぎ気味だった私は、「うわー、体重が落ちてる！」と思わず声を上げてしまいました。
その声に呼応したのか、珍しくお爺さんの方から声をかけてきたのです。

「しばらく顔を見なかったけど、どこか行ってた？」
私は体重計から下りると、そのまま番台のすぐ前まで進みました。
「ううん、肺炎で寝込んでたの。40度の熱が出て大変だった！」
「えー、まだ若いのに肺炎って？俺も10年くらい前に肺炎で入院したけど、年寄りだけじゃねーんだな！」
お爺さんは、番台のまん前に文字どおり素っ裸で立っている私から目を離すことなく、喋り続けています。
お爺さんには乳首も乳房もヘアも丸見えなんでしょうが、イヤらしい視線は感じません。

全裸のまま番台のお爺さんと言葉を交わしているうちに、暖房の効いた狭い脱衣場とはいえ寒さを感じてきました。
「オジサンもまた肺炎にならないよう気を付けてね！」と言い残すと、お風呂道具の入った籠を手に私は洗い場に入って行きました。
カランの前に据えた低い緑色の腰掛に座って、黄色いプラスチック製の桶に汲んだお湯でカラダを洗い流していると、以前に年輩のお客さんと言葉を交わしていたお爺さんが、「俺は女の裸を見ても、もう何ともないんだよ！」と口にしたのを思い出しました。
すると、お爺さんのまん前に素っ裸で立っていた、さっきまでの光景を想像して、思わず吹き出しそうになりました。