ようこそゲストさん。
ナンネットIDにログインしていません。
ID: PASS:
IDを保存 
ナンネットIDは完全無料のサービスです。ナンネットIDを取得するとナンネットの様々なサービスをご利用いただけます。
新規登録はこちら
ID・パスワードの再発行はこちら
邪なる施術 3
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:人妻熟女 官能小説   
投稿の削除 パスワード:
1:邪なる施術 3
投稿者: 司馬 名和人
「それでは改めて奥方様に揉み療治を致したいと存じますので、誠に恐れ入りますが、奥方様にはまずは左の肩を上にして横になって下さいませ」

 その猪市の言葉にコックリと頷いた佐和は布団の上にうつ伏せになっていた身体を起こして、猪市に言われたように左側を上にした側位の状態で横たわると「これで宜しいのか、勾当殿」と言うのである。
 それに対して満足そうに頷いた猪市は「ええ、結構でございます」と言いながら、佐和に近づいてゆくのである。
  「それでは失礼致します」と猪市はそう言いながら新しい手拭を佐和の肩から腕にかけて置くと、やがてゆっくりと佐和の左肩から左腕にかけて揉み始めるのである。
 猪市はまずは佐和の左肩を揉んでみたあとで、ニヤリと微笑しながら「奥方様、どうやら、温灸のおかげで先ほどよりはだいぶ柔らかくなった様でございます」と呟くのであった。


 それから左腕にかけてじっくりと揉みはじめるのである。猪市の揉み具合は決して、強いものではなく優しくかつ丁寧な調子で揉んでいるので佐和も気持ちよく身体を猪市に預ける格好となったのである。

 猪市はやが手の指一本一本も丁寧に揉んで行き、それから更に肩の方に戻り、首筋に摩擦し始めたのである。そして彼の手は首筋から脇の微妙な箇所に導かれて、「少し、ご無礼致します」との声とともに猪市の指先が佐和の襦袢の襟元の左乳房の周辺を差し入れる形になった。
 その時に佐和は思わず、「あっと」と声を出しそうになったが猪市は何事も無かった様にさっと指先を引っ込めたのである。

 それから、猪市は肩から左腕にかけていた手拭を今度は左側面の腰部に置くと、左側面からゆっくりと腰部を揉み解し始めたのである。そして腰を揉み解しながら佐和に囁くように言ったのである。


  「どうでございますか。奥方様。腰の方も温灸のおかげでだいぶ軽くなった様に感じるのではありませんか?」
  「えええ、勾当殿の言われる様な感じが致します」
 やはり、決して強い調子では無いもの優しく、丁寧な猪市の揉み解し方に佐和もウットリとしたように言うのである。


 そのように猪市はじっくりと佐和の腰部を揉み解していたが、やがて猪市の手が佐和の腰部のこれまた微妙な箇所を巧みに刺激するのであった。そしてて、その刺激の為に佐和はまた思わず「あっと」と声を上げそうになったが、今度も猪市はさっと一瞬のうちに手を引っ込めたのである。

 それから、猪市の手は下半身の方に移り、左足を揉みはじめるのである。

 特に、太股と脹脛の部分をそれこそ懇切・丁寧に揉み解してゆき、そして今度もまた猪市の手は佐和の腰と太股の付け根の微妙な部分をこれまた巧みに摩擦していき、今度もまた佐和は声を出しそうになったが、今度も声を出す寸前に猪市はさっと手を引っ込めたのである。
 そして、手首の時と同様に猪市は足首も丁寧に揉み解していくのであった。

 
 手の指と同様に足の指もそれこそ、一本、一本と丁寧に揉み解してから、次に足の裏に今日で言えば指圧するように指を押し当てて言ったのである。そしてこれまた微妙なツボを刺激したのか、突然に佐和は電気を打たれた様な快感を感じたためについに思わず、「アアアア」と言う呟きを漏らしたのである。
 それを目ざとく聞きつけた猪市はニヤリと微笑を浮かべながら、佐和の足元から見上げる様な調子で「あれ、奥方様、意かが致しました。痛いのでございますか。もし、そうでしたら、申し訳ありません」と半ば惚けた様な感じで言ったので佐和は思わず顔を赤らめて小さい声で「いえ、何でもありません」と言うのであった。



 それから、猪市は佐和を今度は右側を上にして側位で寝かせると再び佐和の右半身を揉み解し始めるのであった。
 左半身の時と同様に猪市の佐和に対する揉み療治はやはり、決して力強いものではなかったものの、優しく、丁寧な感じであり、これまた、時折、佐和の身体の微妙な箇所に手や指が刺激したものの、左半身の時と同様に佐和が声を漏らしそうになる寸前にさっと手を引っ込めては、その後は何事も無かった様に療治を続けたのである。
 
  こうして約一刻もの間、猪市は佐和に対する揉み療治をして、最後に再び佐和に自分の方に背中を向けさせて正座させてから、再び佐和の両肩をじっくりと揉み解しながら佐和の耳元にことさら、口をくっ付ける様に近づけながら囁く様な調子で言うのであった。
  「どうでございます。奥方様、だいぶ肩の張りやこりも柔らかくなっておりますよ」
 猪市はそう言ったあとでふううと息を吹きかける様に息を吹きつけながら一転して改めた調子で「これで今日のわたくしの療治は終わりました。誠に有難う存じます」
 そう言ってから「それでは御女中を呼んでいただけますか。奥方様」
 その猪市の言葉にそれまでややぼうっとしていた佐和ははっと弾かれた様に気が着くとすぐに布団の枕元に置いてある鈴を鳴らすのであった。
 その鈴の音に気が着いた女中の一人が「奥方様。どうされました」との声とともに襖が開いて顔を覗かせるとまだぼうっとしていて顔を伏せている佐和に代わって微笑を満面に浮かべた猪市が口を開いた。
  「奥方様へのわたくしの療治が終わりましたので、恐れ入りますが、ここに待たせているわたくしの手代を呼んでいただけますか」
 その件の女中が勾当の傍らでやや顔を俯かせている佐和に伺う様な様子で見上げるとそれに気がついた佐和がやや慌てて「勾当殿の言われる通りにしなさい」と女中に命じるのであった。

 それから件の女中に呼ばれた手代の健吉に手伝わせて部屋の中に散らかした温灸の道具等を仕舞うと改めて猪市は手代の健吉とともに佐和の目の前に平伏すると挨拶するのであった。
  「本日は、奥方様にはわたくしの様な者を療治の為にお呼びいただき誠にありがとう存じます。今後も何かと奥方様にはお世話になると存じますので宜しく願います」

 そのような勾当主従に対して佐和もややぎこちない笑みを浮かべながら「わらわこそ、ご多忙な勾当殿にお越し願い誠に恐縮です。あなた様のご療治で何だか前よりも心地よい気持ちでございます」と返事をするのである。
 それに対して、武井猪市勾当はことさら満面の笑顔を浮かべながら「そのように言われることがわたくしに取って、望外の喜びでございます」と言いながら、傍らの手代ともども再び佐和に一例すると「それではわたくしどもはこれで失礼致します」と言って勾当主従はその部屋を出て行ったのである。その二人を佐和は依然としてややぼうっとした状態で見送るのであった。

 猪市らがその部屋を出て行った後も、しばらくは佐和はややぼんやりとした状態でその場にじっとして、先穂とまで受けていた猪市からの療治を思い返していたのである。

 
 猪市の施術・療治は何度も言う様に決して強いものでは無かったが、優しくかつ丁寧なものであり、また彼が佐和の肩や腰部に施した温灸と言うものもなかなか心地よいものであった。それゆえに佐和も猪市の施術に気持ちを楽にしながらその身体を預けるような気持ちになったのである。
 しかしながら、それだけではないものを佐和は感じていたのである。
 佐和は猪市におのれの体を揉み解されながら、何か不思議な感覚に襲われていた。
 
 まず、佐和が感じたことの第一は己の体が感じやすくなったことである。これまでの佐和はいかに夫・兵庫との寝床の中と言えども声をだすことは武家の女としてはしたないとしてずっと自生していたので、決して喘ぎ声などを漏らすことは無かったのであるが先ほど、猪市からの揉み療治を受けている間に何度も声を漏らしそうになったのである。 猪市は施術の間に佐和の身体のかなり微妙な箇所、部分に指等を近づけたものの、決して無礼な振る舞いをした訳ではない。しかし、佐和は猪市からの揉み療治を受けたいまとなって、以前よりおのれの体が刺激に敏感になっているのを自覚しない訳には行かなくなったのである。そして次に佐和が感じていることは猪市からの施術を受けてから、自分の体の奥底から何かしら熱くなるもの、いやもっとはっきりと言えば疼くものを感じるのである。そして佐和はそれらの事柄を自覚すると自然におのれの身体全体がほてってくるのを感じざるおえないのであった。



 そのような思いに捕らわれた佐和はしばらくはそのまま呆然とした状態となっていたが突然に呼びかけられてはっとしたように呼びかけられた声の方に顔を振り向けるのであった。
  「奥方様、どうされました」
 そこにはやや心配そうに佐和を見つめる女中頭のおとくの姿があったのである。

  「いや、何でもありません。それよりもそなたこそどうしました」
 佐和は己の心の中の気持ちを見透かされまいとしてそのように言うとおとくは表情を改めてから「はい、勾当様らは無事にお帰りになられました。奥方様にはくれぐれも宜しくとのことでございます」と言った。
  「そうですか、それはご苦労でした」
 そのように佐和は何食わぬ顔で返事をして、おとくをすぐにその場を去らせたのである。

  「その座頭殿のあんまの具合はどうだった。佐和よ」
 その日の夕暮れに城から屋敷に戻った夫の兵庫から、そう問われると佐和は出来るだけ、心の中の同様を覆い隠しながら次の様に言ったのである。

  「ええ、武井勾当殿の御療治は大変、お優しく、丁寧な感じのものでした。それでだいぶ、肩、腰も楽になった様な感じが致します」
  「ふむ、ふむ。それは良かった。それでその勾当殿はどのような御仁じゃ。鳥羽殿の言われる通り、普通の座頭とは違うのかな」
  「はい、海老蔵殿の言われる様に、さすがは元は武家のご出身らしく、気品があり、それなりの教養を持つお方の様でした」
  「ふむ、ふむ、あの花岡検校殿の弟子だけのことはあると言うことかな」
  「はい」
 その佐和の返事を聞いた兵庫は更に言った。
  「うむ、それでは当分、その勾当殿に来てもらおうかのお」
 佐和はただただ「はい」と言葉少なに答えるのであった。

 その日の夜になっても、佐和の身体の中の疼き、ほてりは治まることはなく、ついにその日も暮れてこれから寝ようとした時に、ついに佐和は我慢できずに自分の方から、夫の兵庫を閨に誘ったのであった。
 それは夫、兵庫との20年以上を経過する夫婦生活の間でも初めてのことであった。
  「佐和よ。フフフフフ今日のそなたはややおかしいぞ」
 兵庫はそのようなことを苦笑しながら呟きながら佐和を抱くのであった。佐和は夫の腕の中でそれこそ、これがああの慎ましやかな奥方様かと思うほど、乱れ狂うのであった。
 
 それで、ようやく佐和の体の疼き、ほてりはようやく治まったのである。
 そのようなことが起起こってから、七日後のある日の昼過ぎに再び佐和は屋敷に武井猪市勾当の訪問を受けたのである。

  



 先日と同じ様に手代の男とともに佐和の居間を訪れた猪市は再びその手代を下がらせると佐和の方に顔を振り向けて一例しながら挨拶するのである。
  「奥方様には再び、わたくしの様な者をお招きいただき、誠に恐縮しております。未だ、未熟者ではございますが、本日も先日と同様に精一杯努めさせていただきます」

  「いえいえ、わたくしの方こそ、何かとご多忙の勾当殿に再び療治に来ていただき有難う存じます」
 佐和はそう返事を帰しながら自分の身体が再び熱くなるのを感じていたのである。

 そのような佐和の心中を見透かす様な視線を投げかけながらも猪市は次の様なことを尋ねるのである。
  「そででどうでございましょう。その後の奥方様の具合の方は?」
  「はい勾当殿の療治を受けてから、だいぶ肩、腰の調子も良い様です。勿論、勾当殿が優しく、丁寧に揉み解していただいたせいですが、それに加えてあの温灸と申すのも良かった様です」

 その佐和の言葉に猪市は満面の笑みを浮かべながら「それはそれはようございます。そのように言っていただければわたくしにとってこの上もないお言葉でございます」と一例しながら言ったあとで顔をあげてから更に言った。
  「それでは早速、本日の施術に移りたいと存じます。それでは恐縮ではございますが、先日と同じように、布団の上にまずはわたくしの方に背中を見せながらお座り願いますか」
  「はい」と返事を返しながら猪市に言われた様な姿勢で布団の上に正座すると「勾当殿、どうぞ」と声をかけるのである。

  「それでは失礼致します」と言いながら、猪市は佐和の背中ににじり寄り、手に下手拭を佐和の背中の両肩にそれをかけると「それでは失礼おば」と言いながら佐和の両肩を揉み解し始めるのである。佐和は先日と同様に優しく丁寧な猪市の手つきに気を楽にしそうになったが、揉み始めてまもなく猪市は「ウーム」とうなり声をあげながら手を止めてしまったのである。そして、何事かを考え込んだのである。
  「勾当殿、意かがしました?」

 佐和にそう問われた猪市ははっとした様な表情になり、一段と下がってから俄かに平伏すると「お奥方様、誠に申し訳ありません」と言うのであった。

  「こ勾当殿、い一体、どうしたと言われるのです」
 猪市の思いもかけぬ行動に驚きと不安を抱きながらそのように問いかけるしかないのである。

 その佐和の問いかけにしばらく猪市は黙って平伏したままであったが、やがて頭を上げてから次の様なことを言ったのである。

  「それがですね。わたくしの奥方様の現在のお体の状態の見通しがやや甘かったことに気づかされたことでございます」
 猪市はそのようなことをやや震える声音で言うのでさすがに佐和は驚いた。

  「勾当殿、それはどう言うことですか?」
  「はああ、それがですね。わたくしは奥方様の肩や腰のこりや痛みは奥方様のお体の気血の流れがとどこっている為に起こっているととの証を立てました。それゆえに、わたくしはまずは温灸によって奥方様のお体を暖めてから念入りに揉み療治を施すことにより、奥方様のお体の気血の流れを滑らかにすることにより治す心積もりでありました」

  「その様な勾当殿の施術を受けてから、わらわも何だか以前よりは肩や腰もだいぶ楽になったと思っておりましたよ」
 佐和はそのように答えながら怪訝な表情をした。

  「奥方様にそのように言われますとわたくし、誠に恐縮の至りでございますが、先ほど、少し、奥方様の肩をお揉み致しましたところ、それがそのおお」
 猪市はやや言いにくそうであったが更に言葉を続けた。
  「わたくしが予想したよりもどうやら奥方様の肩のこりと言いますかはりは重いものの様でして、余りわたくしが考えているよりもこりやはりが取れてはおりません。誠に申し訳ありません」
 猪市はそのように言いながら再び平伏するのである。

 その猪市の様子に佐和は困惑しながらも次のように言うのである。
  「勾当殿、そのように貴方様に頭を下げられても、しかし、先ほども申し上げた様にわらわにはだいぶ良くなったと思っておりましたが」

  「その様に言われまして、汗顔の至りです。しかし、わたくしはあんま・鍼灸を生業として、これでも多少は漢方医術を学んだ者でございます。そのようなわたくしのから考えた場合に、よくよく考えてわたくしの奥方様のお体の症状の見立てが甘かったと申し上げているのでございます」

 佐和はそのような猪市の姿をやや呆然として見つめたのちに次のように尋ねた。
  「それでは勾当殿、結局どうだと言われるのです」

  「ですから、このままでは、先日も申し上げた様にこのままでは奥方様は四十路を越えた頃には肩が上がらない状態に陥ると存じます」

  「そんなああ」とさすがに佐和はやや言葉をう失った。
  「奥方様がなぜ、そのようになったのか、その原因ははっきりしておるのです。多分、永年の気苦労の積み重ねと思いますが」
  「気苦労の積み重ね?」
  「はい、直参旗本の奥方様として一家の束ねを永年しておられるうちに積み重なった諸々の気苦労のゆえと推察いいたします」
  「ですから、どうすれば宜しいと言うのですか」
 佐和はやや気色ばむ様な詰問口調となったが猪市は逆にややのんびりした口調で次のようなことを言うのである。
  「まあ、一番宜しいのは早い話、奥方様の気苦労の種が無くなるのが宜しいのですが」
  「そのような戯言を」
 佐和はやや呆れ顔で呟いた。
 そのようなことが出来る訳がない、ましてや嫡男の兵馬の嫁鳥等、これからも気苦労の種は尽きそうもないのである。
  「そうでございましょうね。そうするとまた新たに奥方様への療治のやり方をいま少し考える必要がございます。それで奥方様に改めてご相談いたしたいことがございます」
 
 そのように姿勢を改めて猪市は佐和に言った。
  「勾当殿、それは?」
 その佐和の言葉に猪市はその不自由な目で佐和の顔を見つめながら言った。
  「誠に恐縮でございますが、奥方様のお体に少しばかり、鍼を打たせていただきたいのでございます」

  「何でスト、勾当殿、そなた、このわらわに鍼を撃ちたいと?」
 そのように問いかける佐和の口ぶりは明らかに不機嫌な面持ちであったが、猪市はそれに気が着かない様な口ぶりで「はい、左様でございます」と済ましながら答えるのである。

 そのような猪市の態度に佐和はむっとしたような口調で言った。
  「勾当殿、そそなた。わらわにそなたの前で肌を晒せと申すのか」
 佐和はいかにもそのような事が出来るかと言うような表情を見せたが、同時におのれの肌に直接、鍼を撃たれることに何かしら恐ろしくも、おぞましくもあるのである。

  「奥方様の肌を晒す?、それはまあ確かに、しかし、肌を晒すとと申しても、奥方様の場合は肩先の部分を僅かに肌蹴ていただくだけですし、それに」
 猪市は更に身を竦めながら次の様に弁解するのである。
  「それにわたくしはご覧の用に座頭でございますので、仮に奥方様が全裸になりましても、そのお姿を見ることは適いませんが」
 猪市はそうは言ったが、その口口元には少しばかり、淫らな笑みが浮かんでいるのを佐和は見逃さなかった。そして、ますます佐和は嫌悪感を示して口を開いた。
  「そんな、仮に少しだけとは言え、わたくしは夫がある身です。他の男に肌を晒すなどとんでもないことです」

 
  「はあ、そうですか。しかし、奥方様。いかにお武家の御内儀様とは申せ、病を患った時には医者にかかるでしょう。その場合には当然のことに医者には肌を晒すでしょう」
  「それは確かに医者にかかった場合はそうでしょうが、しかし」
  「しかし、それがわたくしの様なあんま・座頭の類では出来ないのですか?」
  「それは、そのお」
  「確かに、わたくしは座頭であんまでございます。しかし、同時に杉山流鍼灸術並びにそれに伴う漢方医術をそれなりに学んでおります。杉山流鍼灸術の祖である杉山検校様が五代将軍・綱吉公のお抱えの鍼灸師として事実上、奥医師同様の格式で召抱えられたことはご存知でしょう」
  「それは」
  「それ以来、将軍家を始めとして、多くの杉山流の座頭らが奥医師格として多くの大名に仕えております。つまり、つまり、我ら、杉山流の鍼灸師どもは医師と同様のものと自負しております」
 猪市はそのように理詰めで佐和に言い、更に次のように言葉を加えた。
  「それでも奥方様が嫌だと言われるのはそれはこのわたくしのことをしがないあんま・座頭の類であると軽侮しておられるのですかな」
  そのようなことを猪市はそれこそ淡々と諭す様に言ったが、佐和が鍼を嫌がるのは理屈ではないのである。
  「わらわは別に勾当殿を侮るつもりは毛頭ない、しかし、嫌なものは嫌なのです。どうか、わらわの素肌に鍼を打つのだけは、いかにどのように言われてもごめん被ります」
 佐和は静かではあったがキッパリとした口調で言うのである。

  「フウウウウウ、それは困りましたな」
 猪市はややため息をつきながらそのようにぼやいた。そして再び佐和の顔を覗き込むように言った。
  「どうしても、駄目ですか?」
  「はい、勾当殿がどのように言われましょうとも、わらわの素肌に鍼を打つのだけは勘弁してもらいます」
 そのように佐和がにべもなく言うと猪市は「そうですか、どうしても駄目ですか」と明らかにガッカリしたように呟いたが、やがて「フフフフフフフフフフフフフフフフ」と不気味な微笑をその口元に浮かべた。佐和はその猪市の微笑に何か不遜なものを感じて思わず口を開いた。
  「これ、これ勾当殿、何がおかしいのです?」
 その佐和の口調はいかにも不快下であることが判るのであるが、猪市はそれにも構わず薄笑いを浮かべながら言った。
  「いえですね。幾ら、武士の妻だといっても奥方様は所詮女だと思いましてね」
 その猪市の口ぶりには明らかに佐和を軽侮する感があるのを佐和は見逃さなかった。
  「勾当殿、その言い草は無礼でしょう」
 佐和はいかにも眉ねを寄せて怒りも露にしていたが、猪市は依然として薄笑いを浮かべながらも次のようなことを言うのである。
  「これは、これはご無礼を、しかし、奥方様。どうしても鍼を打たれるのが嫌ならば、本音を言ったらどうですかね」
  「それはどう言う意味です」
  「フフフフフ、奥方様は先ほどからいかにもと言う理由でわたくしに鍼を打たれるのを嫌がっていますがね。とどのつまりは、本音を言言えば素肌に鍼を直接打たれうのが怖いのでしょう」
  「何、わらわが怖いから鍼を拒否すると、そんんな。わらわは武家の女ぞ。ううう鍼など怖がるものか」
  「フフフフフフフ、お隠しあるな。大棚の御内儀などの中にもやはり、鍼を打たれるのが怖いと幾らわたくしが薦めても鍼をうつのを拒否されるご婦人がいますが、まさかお武家のそれもご大身のお旗本の奥方様が怖がられるとは思いませんでした」

  「無礼な、このわらわお商人の女房などと同じに見るのか」
 佐和はそれこそ柳眉を逆立てて怒りも露にしたが猪市はすましていた。

 佐和は高家とは言え、武家の名門の娘として生まれた。そして旗本の妻となった女である。それだけに武家の女としての誇りも人一倍であった。それだけにいかに豪商とはいえ、商人風情の女房と比べられるのは我慢ならないことであった。
 そのように怒りのために興奮している佐和を涼しい表情で眺めていた猪市はやがて佐和の怒りがやや静まったところを見計らって諭す様に言った。
  「良いですか、奥方様。先ほども言いました様に、肌に鍼を打つと申しましても肩先を少し肌蹴てもらうだけですし、それに鍼を打つと申しましてもご婦人方が想像されるような太いものではなく。そそれこそ、痛みと言いましても蚊に刺された程度の痛みもありません。それに深く刺す訳ではなく、ほんのちょっと刺すだけでございます」
 その猪市の話を佐和はやや考え込みながら黙って聞いていた。
  「それでもどうしても嫌だともうされるのであればわたくしも諦めますが、ほんの少しわたくしに奥方様に鍼を打たせて貰えれば、それこそ、療治の効果抜群なのでございますが」
 佐和はしばらく考え込んでいたがやがて口を開いた。
  勾当殿、本当にほんの少し鍼を打つだけですね」

  「はい、ほんの一、二本程奥方様の肩先に刺すだけでございます」
  「判りました。それではお願いいたします」
 ようやく、佐和もおのれの素肌に鍼を刺すことを渋々であるが承諾したのであった。

 その佐和の言葉に猪市は喜色満面の表情となり、「有難う存じます」と言って一例すると早速にも鍼を打つ準備を始めるのである。

  「それでは失礼申し上げます」
 鍼を打つ準備を終えた猪市はその様に断りを入れてから、背後から佐和の長襦袢の襟元をほんの少しだけ肌蹴させて肩先の一部を露にした。そしておもむろに佐和の首筋近くのある箇所を丹念に指で探るのである。

  「フムフム、まあこの辺で良かろう」
 その様に呟くと一端、佐和の体から離れると一枚の白いさらしを取り出すとこれもやはり準備していた小瓶に入れている焼酎で濡らしたのである。それから佐和に近づいたのである。
 そしてその焼酎を浸したさらしで佐和の肩先を拭いたのである。それにはさすがに佐和は驚いて「勾当殿、何をする」と問うと猪市は澄ましながら「これは念の為の毒消しのたでございます」と答えるのである。つまり、消毒のためだと言うのである。

 それから猪市は別の布を焼酎で濡らして、それで自分の両手を洗って消毒するとやがて右手で鍼を掴むとそれにある金型の管に入れてのを片手で掴むと佐和に近づくのである。そして左手で先ほど、指で探った肩先の箇所をまた探るのである。
 江戸時代も後期となるこの頃の鍼術は既に今日の様ないわゆる管鍼法である。これは小さく、細い鍼をこれまた細く、小さな管を通すことにより刺すわが国独自の療法であった。
 もともと、中国大陸から吾が国に他の医術とともに伝わった鍼術はもともと、ある程度大きな鍼を直接患者の患部に刺すやり方であり、今日の中国の鍼治療もそうである。
 わが国でも江戸時代初期まではその療法であったが元禄の頃に五代将軍の奥医師格として召抱えられた杉山和市検校が小さく、細い鍼を管を使って刺すいわゆる管鍼方を考え出してからはわが国の鍼術はその杉山検校の起こした杉山流鍼術がことに座頭らを中心に主流となったのである。若い頃にその杉山流鍼術稽古所で学んだ猪市も当然のことに管鍼方を使っていた。

 そのような訳で猪市は鍼を掴んでいない左手で佐和の肩のある箇所を指で確かめると右手に掴んだ鍼を入れてある管をそっと置いたのである。そしてそ管の上に突き出していた鍼の頭をトントンと叩くことにより鍼を刺したのである。それから素早く管を抜き去ると鍼をちょっとだけ捻ったあとですぐに鍼を取り去ったのである。
 佐和は鍼が肌に刺されたことは判ったがなるほど、猪市が言う通りに痛みなど無く、まさに蚊に刺された様な感覚であった。
 そして猪市は再び、鍼に刺された箇所を焼酎で濡らしたさらしで消毒するとその部分を丁寧に揉むながら佐和の身身元で囁くのである。

  「どうでございましょう。奥方様、ちっとも痛いことは無いでしょう」
 佐和は頷きながらもやや怪訝そうに「それは匂当殿の言われる通りですが、しかし、このようなものが本当に効果があるのですかあ?」と尋ねると猪市は「まあご覧下さい」と微笑しながら言うのであった。そして反対側の肩先にも同様に鍼を刺したのである。

 それから猪市は佐和をうつ伏せに布団の上に寝かせると先日のように佐和の肩と腰部に温灸を施した。その四半時[30分]程度の温灸を佐和はそれこそ先日と同じように気持ちよく受けたのである。
 それが終わると猪市は佐和をこれまた先日と同様に佐和を左肩を上の形に寝かせると「それでは奥方様、揉み療治を致します」と言いながら、肩をやおら揉み解し始めるのである。

 この日の猪市の佐和の体に対する揉み療治はこれまた先日と同様に優しくかつ丁寧なものであり、佐和も心地よく、おのれの身体を猪市に預ける格好となっていたが、しばらく猪市に揉み解されているうちに佐和は己の体がいつになく熱くなっていることを感じ始めるのである。
特にこれまた猪市の手指が佐和の体の微妙な箇所近くをなぞるたびに大きな声を漏らしそうになったのであるが、それこそ佐和は必死でそれを抑えるのであった。

 特にこの日の猪市の揉み解し具合は先日以上に優しく、丁寧なものであり、それこそ痒いところまでてが届く様な有様であった。そして佐和は己の体が先日以上に敏感となり、更に体の奥深くまで疼いているのを自覚せざる終えなかったのである。
 それでも佐和は武家の女としての襟持からそれこそ、必死に喘ぎ声が漏れそうになるのを押さえていたのであるが、やがて猪市の手指は佐和の股間の微妙な箇所近くをこれまた念入りになぞり始めるのである。

 そしてどう言う訳か、それまで巧みに避けていた佐和の股間の微妙な部分についつい猪市の手指が弄る形になったのである。
  「あああああ、そこはああああ駄目エエエエエえええ」
 佐和は思わず、そのような声を上げたが猪市はすぐに佐和の耳元に「これは失礼しました。しかし、余り大きな声を出されぬ方が宜しいと存じますが」と言ったので佐和はすぐにはっとしたように口を噤むのである。

それからこれまた先日同様に猪市は佐和の体の右半身を揉み解していったのであるが、これまた丁寧と言うよりかもはや執拗とも言える程の揉み具合であり、佐和の体はますます熱く、ほてり、疼いてゆくのを自覚せざる終えなかった。それでも佐和は必死に理性で喘ぎ声が漏れるのを防いでいたのである。

 そして最後に猪市はまた佐和を自分に背を向けて正座させてから改めてゆっくりと佐和の両肩を揉み解しながらその耳元で囁くのである。

  「フフフフフフフフフ、奥方様。今日はだいぶ声を出さない様に我慢しておられましたね」
 その囁きに佐和は驚いて思わず、猪市の方に顔を振り報いたその瞬間であった。猪市はそれを待っていたかの様に、佐和の体を抱きすくめたのである。
   「あああ勾当殿、なにを」
 佐和は思わず叫びそうになったが猪市はすぐに佐和の唇とおのれの唇とを合わせたのである。
  「ムグウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」

 さすがに佐和は抗ったが猪市は改めて佐和の体を抱きなおすと更に佐和の片手を取って自分の股間に導いた。そして衣服の上からであるがおのれの男根を握らせるのである。そうすると佐和は自然に抗うのを止めたのである。
 そして猪市はそのまま佐和と唇を合わせた格好となり、更に己の舌を佐和の口腔内に侵入させてついに佐和の口の中の舌と絡ませる形になったのである。

 こうして、それからかなり長い間、猪市と佐和の口吸い・口吻は続いていたがやがて猪市はゆっくりと唇を離すと佐和の頬と自分の頬とをピッタリと近づけながら囁いた。
  「どうです、奥方様、お体のほてり、疼きは少しは治まったでしょう」
 その猪市の言葉に佐和はかすかに頷くのである。それからさっと佐和の体から離れた猪市は何事も無かったかの様に平伏しながら言った。
  「奥方様、これで本日の施術・療治は終わりました。それではまた手代の者を呼んでいただきましょう」
 佐和は黙って頷くと礼の鈴を鳴らして女中を呼んだのである。
 それから程なく、武井猪市勾当は何事も無かったように別れの挨拶を手代の男と供にすますと返っていった。それを佐和も何も言わずに見送ったのは言うまでもないのである。

 そして猪市が部屋から出てゆくと佐和は緊張の糸が切れたように思わずその場につっぷしたのである。

 佐和はしばらく、そのままの状態でいたがやがてゆっくりと顔を上げたのである。そしてその部屋の片隅に置いてあった鏡台の方に近づいていくのである。
 やがて、その鏡台の前に正座した佐和はその鏡の中の自分の姿をじっと眺めていた。それからおもむろに己の唇をそっと指でなぞるのである。
  「この唇と舌を夫以外の男と唇を合わせて、その舌と舌を絡ませて貪りあったのだ」
 佐和はその鏡の中に写る自分の顔を見ながらそう思った。そして更に衣服の上からとは言え、猪市の股間の一物を弄った己の片手をじっと見つめるのである。


2017/08/15 14:32:12(bhLhghc7)
この投稿にコメントはできません。
 
官能小説 掲示板
官能小説 月間人気
官能小説 最近の人気
作品検索
動画掲示板
画像で見せたい女
その他の新着投稿
人気の話題・ネタ
ナンネット人気カテゴリ
information

ご支援ありがとうございます。ナンネットはプレミアム会員様のご支援に支えられております。

Copyright © ナンネット All Rights Reserved.