『よしっ…頑張ろうっ』
とあるビルの前で自分に言い聞かせる、綺麗なロングの黒髪にまだあどけなさの残る童顔の女。

横一文字に揃った前髪が一層幼さを際立たせる。
その女…【立花 希美】は今、悦楽への入口の前に立っているのである。

ただ、今はその事を知る由もなく…………



きっかけは両親との死別だった。
小さい町工場を営む両親、親子三人ささやかなれど幸せな日々。

しかし事態は一変する。
両親が取引先に向かう途中での交通事故、ハンドル操作を誤り崖から転落したというものだった。
そして残された希美に突き付けられたのは両親が抱えていた多額の借金。


当時普通の大学生であった希美は、もはや風俗で働くしかないと思っていた希美に救いの手が差し伸べられる。
両親のビジネスパートナーでもあり叔父である【立花 隆三】

葬儀の席でただ俯く事しか出来なかった希美にこう切り出した。
『私の会社で借金を何とかしよう、その代わり我が社で働かないか？』と…

叔父の会社がどんな会社か知らないが、藁をも掴む思いで了承した。
『小さい頃から可愛がってくれた叔父さんの会社なんだから、きっとしっかりした会社なんだろうな』


そう思っていた希美の期待は見事裏切られる事になるのである。



『そろそろ行こう！』
ローヒールを鳴らし自動ドアに向かって歩き出す、これから逃れられない地獄への入口が静かに開いた。