主人の実家に行き、話し合い決めたことは体外受精になりました。
義父さんは義父さんで色々調べたらしく少し知恵がついてました。
香奈さん、色々と申し訳ない。息子がこんなのも私達の責任でもある。辛い体験をするかと思うが…と頭を下げてきました。
63歳でいて大男なんです。主人が身長が大きいのも義父譲りだと思いますが、この年齢の方で身長が170後半で体重が90㎏。頭はお坊さんの様に青い坊主頭。こんな迫力ある義父さんが頭を下げてきたことに私は戸惑いました。私より義父さんの方が真剣に物事を考えてることをここで知らされた感じで事の重大さを感じはじめました。
それから１週間しないうちに義父さんが私達の住まいに現れました。主人は仕事でした。義父さんはこれを足しにしてくれ！と見たことのない厚さの茶封筒を出されました。
私はもしかして、お金？と嫌な予感がしましたが、見ると帯が付いた諭吉さんの1束でした。
義父さん、こんなの頂けません。
なんでだ、迷惑をかけてるのはこっちの責任なんだぞ！香奈さんに非はない。協力するのは当然だ。
あいつの給料で貯えはどの位ある？
それは…後々、厳しくなってきたらご相談させて頂きます。
いつ、お返し出来るかわからないのを、主人に許可無く受け取れません。
返す？返す必要などない。儂らは後、生きて20年だろう。
貯えもそれなりあるし、年金も。それに地代も入ってくる。
だから心配はせんで、受け取ってくれ！
義父さんは私の手を握り少し目を潤ませて話されてきました。
儂はどうしてもこの土地を他人には守らせられない。
儂がわがまま言って香奈さんに迷惑をかけてるんだ。
この通りだ、受け取ってくれ…
私の手を握ったまま、また頭を下げてきた大男の義父さんがなんだか少し小さく見えたのと可哀想に思えて、なんだか私の母性本能が揺らめきました。
主人が帰宅し、全ての経緯を話ました。
有り難くこのお金を資金に役立て、体外受精をしました。
1回、2回…
駄目でした。主人は更なるショックを隠しきれません。
このままでは、主人が意気消沈しそうな感じです。
残すはあと1回。それが駄目なら残すはもう一つの方法ですが、更なるリスクが高まります。
すると主人から、健康な香奈の体をこれ以上、痛められないよ。
後、1回あるじゃない。
俺、精神的に無理だ…このまま2人で暮らそう！
香奈に辛い思いは二度とさせないと誓うよ。
今度、実家に行って思いを伝えよう。
きっとわかってくれるさ！

いつもは年に2回しか行かない実家にこんなに頻繁に行くのと答えが見つけ出せないまま伺うのが気が重く溜息をだしなから門をくぐりました。
義父は結果はどうだ？と少し微笑みながら。
とても言い出せる雰囲気ではありませんが、主人が口を開きました。
これ以上健康な香奈の体を俺の責任で痛めつけられない。
俺は精神的にダメージが強い。子供がいなくたって幸せな家庭はおくれると思う。香奈もそこまで拘りもないし。
私、主人に初めて怒りを覚えました。
ねぇ、あなた、ちょっと待って！
私は頑張ってるのに、この弱気発言。父に甘えて許しを伺うまるで子猫。しかも私、あなたに子供欲しくないなんて一言も言ってません。そうでしょ！ 私もそんなに焦ってはいなかったけど原因がわかった今では別の話。だけどそこであなたに子供欲しいって迫れる？今であなたはこうよ！だから言わなかった訳で勝手に解釈して言わないで！

そうなのか？香奈…

香奈さん、本当にすまない、できの悪い息子で！
いえ、義父さん、頭を上げて下さい。
こちらこそ、失礼しました。ついエスカレートしてしまいました。

あなた、だから後、1回の望みにかけよう！
それで駄目なら残すステップへね！

香奈、この先に進むってことは、健康な香奈の体を痛めつけ、普通に妊娠できる体からどんどん遠ざかるんだよ…
もし次のステップに進んでも授からない人、いっぱいいるじゃない。体を痛めつけ、高額なお金が出て生き、確率が低いことにこんなに望みをかけれるの？
あなたの気持ちもわかるわ。でもね私はやって見なければわからない。あなたにその気持ちはわかる？
うん、わかるよ。
私はあなたは少し逃げてる様に見えるの。
結婚して3年目。俗に3年目が最初の危機なんて聞くけど、こんなに意見が対立するのは初めてね！だからと言って嫌いになった訳でもない。あなた子供産まれたら父親になるのよ！もっと強い意志を持ってくれないと少し不安よ…

暫く沈黙が続きました。答えが出せずに。
そこに私が想定外の提案をだしました。

義父さん真剣に話を聞いて下さい。
私は義父の顔を見ながらテーブルの対面から話ました。
義父さんの精子下さいますか？

主人が、香奈、何言ってるんだよ！
あなた、ごめんね、ちょっと話聞いて。

主人の考えは3回目を行なっても多分無理。その残り1回に主人より元気な精子の数があれば確率は高い。
義父さんには惨めな思いをして頂く事になりますが、精子の数を調べて頂き主人より望めるのならそうして頂ければと思います。
この1回で受精するかはわかりません。妊娠しても男の子かもわかりませんが、母にいずれなりたい私、義父さんの心情、主人の思いを組むとこうするしかないと思います。

私が話し終わると主人が顔を上げて私を見て、本気か？
なによ！冗談でこの話しする？ あなた言い方に問題あるわよ！
確かにあなたには辛い選択よ。でもね、私だけが子供を欲しがってるのではないの。私だけだったら離婚すればの話。
でしょ！ でも違うでしょ。わたしはあなたと離婚する気もなければ、あなたにとっては複雑な思いだと思うけど、あなたと同じ血を分けた子になるから私は愛情深く育てられるわ。

初めて香奈の思いをしったから、ゆっくり考えるよ。
あなた、そけなのよ。決断が出来ない！
決断が出来ないって、こんなこと直ぐ決断できるか？
じゃあ今まで、もう駄目、精神的に無理、香奈が傷つく、どれもこれも駄目じゃない。私のリスクを考えて1番可能性があるのは今時点ではこれがベストなの！

義父さん、申し訳ありませんが病院を紹介します。
お恥ずかしい思いをさせますが調べて頂けますか？
儂はなに、恥ずかしいことなんて…

お前がこう優柔不断なのも育て方だ！
婆さんがお前を甘やかしたからだな。
お前の知ってる通り儂の兄弟は長男が戦死、後は女が4人で1番下の儂。男がいなかった我が家で本家を継いだ儂の元にお前が元気に産まれてきて婆さんは四六時中、お前にべったりで、儂や母さんが、叱ってると子供のしたことに、そんなに怒らんでも、時期にわかるからと間に入りいつもお前の頭を撫でてたな。
お前を責める気は無い。悪いのはきちんと育てられなかった儂らだから！ 儂らが婆さんに頭が上がらんかったのが原因だからな。

お前は素敵な女性を見つけ嫁に貰えたもんだ！
そう思わんか？お前がやっていけるのも香奈さんあってじゃないのか？お前には勿体ないくらいだな。

主人は渋々頷きました。

では義父さん、後日連絡しますので宜しくお願い致します。

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