高校は市内にある私立高校だった。
　県内でも有数の進学校で国立大学への合格率は県立高
校の大半を抜き上位ランクになっていた。
　だが明彦にはそういうことは関係はなかったが、亡父
の後の事業の全てを引き継いで統括している叔父の力で
苦もなく入学できた。
　ここでも学校の落ちこぼれ組の大半が明彦の周辺に近
づき屯してきた。
　明彦は腕力や暴力を使うことなく一年生の時から不良
生徒の頂点に祭り上げられていた。
　月の小遣いが育ての親の祖母から十万以上渡されてい
た。
　二年生の時、その学校にある女性教諭が赴任してきた。
　県外の有名私立高校から合格率向上を促進を図るため
に招かれた教諭で、現代国語の指導についてはかなりの
評価を受けている四十代の美麗の才女だった。
　赴任するなり女性教諭でありながら生活指導部長にな
り、剣道部の顧問も引き受けていた。
　竹原美由紀という独身の四十二歳だった。
　明彦にはどうということはなかったが不良の長に祭り
上げられていることもあって、必然的に生活指導部長の
目に彼はすぐに止まった。
　ある女子生徒の父兄から婦人異性交遊の件で江藤明彦
がそれを主導していると抗議の申し入れがあった。
　その女子生徒の友人を明彦が深夜のスナックに誘い飲
酒させ、その後淫らな行為に及んだということだった。
　生活指導室で明彦は竹原教諭と対峙した。
　長い髪を後ろに束ね化粧気のない顔でも、目は奥深い
ところで正義感に漲っているように輝いていた。
　つんと高く伸びた鼻筋と尖った顎に意思の強さのよう
なものが見えた。
　「あなたが江藤君？…それでこの抗議について全面的
に認めるの？」
　「スナックにいたのは事実ですけど中学時代の仲間と
コーヒー飲んでただけで、その彼女がいたのは知りませ
ん。淫らな行為って何ですか？」
　「あなたがこの街の有力者の血族だとは聞いているわ。
でも事の善悪に有力者の権力も何もないわよ。私は許さ
ないわよ」
　そういうやりとりがあった数日後のことである。
　竹原美由紀は夜の八時過ぎに駅前のビジネスホテルの
ロビーに、ある父兄の一人に呼び出された。
　過日のスナックでの江藤明彦と女子生徒との飲酒の現
場を撮った写真があるので渡したいという申し出だった。
　早く着いた美由紀はロビーのソファに座っていた。
　突然背後から人の手が美由紀の顔を塞ぐように伸びて
きた。
　人の手のハンカチが美由紀の口と鼻を塞いだかと思う
と、何か薬品めいたの匂いを嗅いだ瞬間に意識を遠のか
せた。
　そして美由紀が気づいたのはどこかの室の中だった。
　ベッドの上で美由紀はあろうことかブラジャーとショ
ーツだけの裸身に剥かれていて、両手両足を紐のような
ものでベッドの四方に括りつけられていて身動きできな
くなっていたのだ。
　ぼんやりとしていた視線がはっきりしてきて美由紀は
思わず喉を引き攣らせたような声を出して、驚愕の表情
を露わにした。
　見知らぬ男が二人ベッドのそばに立っていた。
　首を少し振り男の後ろを見ると、江藤明彦がソファに
座り込んでこちらを凝視しているのが見えた。
　「え、江藤君っ！ど、どういうことなの？…こ、この
人たちは誰っ？」
　「先生、俺をなめたらこうなるってことさ。時間はも
う止まらない。この人たちに女の悦びをたっぷり仕込ん
でもらうといい。そういうのが専門の人たちだよ。…お
願いします」
　男たち二人はトランクス一枚の裸だった。
　三十代前後の男たちだった。
　「竹原先生、ゆっくり楽しみましょうや。四十二歳に
しては見事な身体つきだ。剣道やってるんだってね」
　美由紀の顔の近くに立っていた背の高い男がそういっ
てベッドの上に片足を上げてきていた。
　同時に美由紀の足のほうにいた少し小太りで坊主頭の
男もベッドに這い上がってきた。
　明彦の眼前で女性の身体の悦ばせ方に手馴れた男二人
の手管で、正義感と毅然さがよく似合っていた女性教諭
の竹原美由紀が瞬く間に、女としての身体の悦びの奥深
い渦の中に吸い込まれ、時折手を伸ばして這い上がろう
ともがいたのも空しく、再び赤い渦の中に飲み込まれて
いく様が生々しい音と声とともに、明彦の片手にあるビ
デオのレンズの中に刻々と刻み込まれていった。
　美由紀の身体から束縛は解かれていた。
　ベッドに正座する美由紀の前に全裸の男二人が仁王立
ちすると、美由紀は自らの意思で二つの猛々しい肉棒に
手をやり、その内の一つに唇を近づけていった。
　美由紀の口の中に男の大きな屹立が半分近く埋まって
は引き出され、引き出されては埋まる行為が男二人のも
ので交互に長く繰り返された。
　美由紀の顔から聖職のプライドが霧消していた。
　愛欲に溺れる牝犬の顔に確実に変化して、明彦の撮る
ビデオに記録された。


　　　　　　　つづく


　

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