五年前――
あれは夏の終わり、ひぐらしがやけにうるさく鳴いていた頃だった。
私はお父さんに恋をしていた。loveの意味で好きだったし、愛していた。
お父さんは毎日私の夢に出てきて、前に盗み見てしまったお母さんとのセックスのような手付きや、普段の私には決して掛けないような愛の言葉を囁きながら私を抱く。
毎朝起きると愛液でパンツにはシミができていて、夢が覚めてしまったことに私は落胆する。
そんなある日、転機が訪れた。
共働きの両親は一緒に休みを取れることがあまりない。なので、旅行はいつも片方と行くことになる。
私はお父さんと箱根の温泉へ行くことになった。
お酒に弱い私は、酒蒸し料理を食べて少し酔っぱらってしまっていた。
そこへ、父が風呂へ入らないか、と誘ってきた。
だが、大浴場はあいにく改装中で、部屋の露天風呂を使うことになった。
その時の私はどうかしていたのだと思う。
「一緒に入ろうよ」
と言うくらいまでには。