原作　けいこ
脚色　結城三枝子

　昔、街には女装サロンというものがあって、手ぶらで出かけて、ドレスを借りて化粧をしてくれるところがあった。
それが今はいろいろなコスチュームを用意して、色々なストーリーに応じてプレイができ、オプションでアナルへの挿入にも応じてくれる。
　しかし、私の町にはそんなものはないので
夜な夜な女装をしてコンビニや公園に出かけるしかない。そんなところでは偶然の出会いもないので、ネットで呼びかけをした。そのことで私の悲劇というか、転落が始まった。
　コンビニに行く、そう決心してから準備に一週間かかった。いざ出かけるのに体毛を剃らなくちゃと思い、アナル周りまで丹念に剃ったけれど、もたもたするうちにまた生えてきた。
　偽物の誇張された臀部と乳房は多産と育児の印。美しく長い髪やアイラインに輪郭で私の眼はここと強調するのは、こんなにも私が寄生に強いことを主張する。ルージュレッドとブルーのシャドウは発情した証。
生殖にこんなに適していると見せかけて女装子は子供を産み育てない。この倒錯がより動物としての人間を際立たせる。
エロチシズムがセクシャルと同じであって違っている。エロは陶酔であってセクシーは興奮だ。
　シリコンの巨乳は重たくて、皮膚との間が汗ばむ。ヒップを大きく見せる詰め物は皮膚の感覚を奪ってしまった。ロングのウイッグはどうしてこんなに絡み合ってしまうのか。
カラーコンタクトは目がしょぼしょぼしてしまう。不平ばかりをいうのは照れ隠しかもしれない。