性差遺伝子***16***
何週間後にケータイに知らない番号で電話がかかってきた。
いやな予感がしたが杞憂だった。
「ラグビーの林です。突然の電話すみません。あのとき番号聞いたらよかったの
に、俺なれてないから、ドジで。この番号山下のやつから聞きました。あいつのこ
とは全然心配いらないから。あいつは俺を恐れてい・・、そんなことより」
「あっ、林さん、こんにちは」
「よかったら明日の土曜日会ってくれませんか？」
「はいっ、いいですよ」
林とＪＲ駅の改札で待ち合わせることにした。

朝からうきうきして服を決めたりナチュラルメイクを何度もやり直したり、すぐ時
間が迫ってきた。
服装はフェミニン、と言うより乙女チックな春らしいフレアスカートにベストとし
た。

駅ではすでに林が周りをキョロキョロしながら立っていた。
背後からそっと近づいて左腕にいきなり「ワッ」と抱きついた。
周囲の見知らぬ人はチラッとこちらを見たがすぐ戻った。
このシーンは俺が学生時代に夢見ていたものだった。
そして今実現した。

？しかし現実には俺が女。
ラグビーなら、ディフェンスとオフェンスの違いだけ？

「待ったー？」
「おい、かっこわるいから腕離せよー」
「ねエー、待ったー？」抱きついてまま左右に振った。
「いいや今来たとこ」
「よかった」腕を放した。
「うん、よかった」
「ねえ、今日はどこに連れて行ってくれるの？」
「よかったら僕のうちに。いや、初対面でそれはないよな」
「うふふ、初対面じゃないわよ」
「いや、弘子とは初対面だ」
うれしかった。
「あなたのおうちに行きたーい」

林の部屋で学生時代の話を聞いていたがラグビー中心なので俺はうっかり聞いてい
ないことを言わないように気をつけて相づちを打っていた。
「君は学生時代のスポーツは？」
反射的に「ラグビー」と答えてしまった。
うかつだった「弘子は・・」と聞かれたら自覚したのに、話に退屈していたことも
あって何も考えずに言ってしまった」
「　　やっぱりねー、訳ないだろっ」意外にも林がおどけた。
「あはっ」
「ラグビー好きなんだね」

そのときチャイムが鳴った。「宅急便でーす」
林は荷物を受け取ると急に焦ってすぐに押入に隠そうとした。
「何？ねえー見せてー」無理矢理手にして包装を開けようとしたら
「頼むから、頼むから」
「分かった！、エッチ系？」
「そんなんじゃない、ない」
箱には俺たちラグビー部のあこがれだった沿線女子校の制服があった。
「あっ、これってマリア女子校の制服でしょ、あなた女装趣味？」ふざけてみた。
林は固まったまま動かない。
「ねえ、着ていい？」
「君にあげようと思って」いまさら変な答えを言った。

俺は寝室らしい部屋の中に入りブレザー制服に着替えていた。
グレート紺をベースにしたチェックの膝丈スカート
真っ白なブラウス
シルククリーム色に紺の縁が入ったニットのベスト

着替えて姿見に映してみてポーズを取ってみた。

(けっこうかわいいじゃん)
胸を突き出してみるとバストのふくらみが形よく、男の俺なら無意識につかんでし
まいそうだ。

「ジャジャーン」寝室と居間の間のふすまを開けてくるりと体を回した。チェック
のスカートはふわりと広がりショーツが見てしまった。