俺の合図とともに囲んでいた男たちが一斉に動き出した。

ある者は胸を触り、ある者はケツを触り、ある者は太ももを撫でまわす。

「ちょっとぉ！何すんのこの変態ども！！」

志穂の方は声を潰すのを忘れていた。ぎゃあぎゃあ騒ぐなよな馬鹿野郎。

「痴漢ってのはばれない様にやるから痴漢なんだよな愛ちゃん？」

俺の目の前で全身を撫で回されている愛の声は既に潰してある。ソレに
身動き出来ない様に固定されているこいつが今できる事って言ったら今
みたいに睨みつけるだけだ。

「しかし、うるさいな」

指を鳴らした瞬間、電車の中にあった騒音が止んだ。

目を見開いて此方を見つめる愛の表情は驚きで染まっていて、ひどい間
抜け面だった。思わず笑みが浮かぶほどに。腹立たしい事に元々の可愛
いのだコイツは。故にその表情は俺を実に高ぶらせる。

「なぁ、身体弄られて気持ちいいかいい？」

俺の言葉で我に返ったのか表情を硬くし此方を再び睨みつけてくる。

「痴漢って実在するんだぜ、お前が言ってたとーりにな」

俺の言葉を聞く事で怒りを充実させているのが分かる。なんて可愛い
抵抗だろうか。俺の怒りは言葉に出す事で少しずつ小さくなっていく
のが分かる。

俺の怒りが減れば減るほど、相手の怒りが増していき、俺の気持は高
ぶっていく。俺を軸に動く今この瞬間は、完全に俺が愛という女を圧
っしていた。

痴漢役の男たちは決して乱暴な触り方はしない。むしろ快感を与える
というより、くすぐったさの方が際立つくらいだろう。だが、愛達か
らしたらおっさん連中に擽られているなんて屈辱以外の何物でもない
だろう。

「気持ちいいかい？」

ソレを分かって俺はこの質問を再度行う。

愛が首を振るのを確認してから口元を三日月型に歪めて腕を伸ばす。

「そうか、満足いただけないか。だったら俺が直々に触ってやろう」

伸ばす腕は嫌味なほどにゆっくりと愛の乳房へと向かう。

全身を使って逃げようとするが、おっさんとはいえど男の力から逃げ
られる訳もなく俺の掌がしっかりと乳房をつかんだ。かなり大きいら
しく、服の上からでもその弾力は分かった。

「気持ち良いかい？」

握っただけで気持ち良くなる訳がない。だがしかし

「気持良いだろ」

愛は逃げようとしていた全身を強張らせる。まるで秘部をクリトリスを
直接触った時のような反応に俺は歪な笑みをより歪なモノへと変化させ
る。

感度の変更。それが今俺が指鳴らし無しでやった事。今までわざとらし
く指を慣らすのを見せつける事で、『何かある』と思わせたソレを何も
無しで行う。これだけ気分が高揚していなければ出来なかっただろう。

「気持良いだろう？気持良いよな、服の上からだけでこんなに反応する
なんて、実はお前痴漢を待ち望んでたんじゃないか？」

言葉も脳へと直接響かせ、心を感じさせる。

愛の声は出ないようにした。だが、それだけだ。

「息が荒くなってきてるぞ」

ハァハァ言い始めた愛の耳元で囁いてやる。

それはお前のせいだろ！とでも言いたげな視線で此方を睨みつけてくる
が、それは俺に次を要求してる様にしか思えない。

「お前ら、全身を弄り倒せ。俺が許可する………そうだな、服も上はい
らないからはぎ取ってしまえ」

俺の言葉にギョッとした表情を向けてくるが、その表情は長くは続かな
い。全身が性感帯になってる人間が全身を弄られる。

「あぁ………良い表情だぜ、愛ちゃん」

顔に出さない様に勤める事も出来ずに息を荒くし、全身をくねらせて男
達の手から逃げようとするその姿は自ら誘ってる様にしか見えない卑猥
さを孕んでいる。

俺はズボンの中で破裂しそうになってる物を自由にしたいのを堪え、次
の段階へと進んだ。

Tweet