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1:もう1人の僕
投稿者:
三崎優斗
僕の名前は三崎優斗、14歳。市内の中学に通っている2年生。部活はサッカー部。
小学生の時からやっている仲間にはまだ敵わないけど、3年生になる頃には…。 だって僕は、あのスーパーエースストライカーの翔太なのだから。 (翔太…。) 小学6年生の時に夢の中に出て来た、もう1人の僕。巧みなドリブルで何人もの相手を抜き去り、強烈なゴールを決める。 喜んで集まってくる仲間は、『翔太、スゲー!』『翔太、やっばりお前は~!!』と僕を翔太と呼んでいた。 (翔太って、誰…?僕は優斗なのに…。) それでも僕は天に拳を突き上げる。翔太でも何でもいいさ。スーパーゴールを決められたのだから。 『翔太!翔太!翔太!翔太!』、僕の名前を呼んでいるみんなの声援がとても気持ちがいい。ヒーローだ!絶対サッカーをやる男だ! で、夢は覚めたのだった…。 中学生になっても、その夢は続いていた。 翔太が現れるのは、なにもサッカーをやっている時だけじゃない。 スーパーストライカーと言っても、ちゃんとプライベートはある。 どこなのかも分からない田舎道を歩いて行くと、その先には誰もいない小さな公園が見えて来た。 ベンチに座る1人の女性。彼女は僕を見つけると、立ち上がり駆け寄って来る。 25歳くらいの可愛い年上の女性。彼女は『翔太!』と言って僕を抱き締め、キスをして来ます。 そのキスは激しく、何も出来ない僕はその女性に身を任せていた。 いつの間にか場所は変わると、そこには裸の彼女が居ました。 おっぱいが揺れ、僕のおちんちんを口に咥えている。 (わからない、わからない、ただ気持ちがいい…。) で、目が覚めた。情けない…。夢精でパンツを汚してしまいました。 その後も、何度もその女性は夢の中へと現れていた。彼女は、僕を『翔太』と呼び、いかがわしい世界へと連れていってくれる。 一度、彼女が制服姿で現れたことがあった。左胸には名札が付けられていた。 (名前はなに?なんという女性?) しかし、その名前はどうしても見ることが出来ず、僕はまたエロの世界へと連れて行かれるのでした。 (エロいお姉さん)、名前はこれでいいや! 中学2年生の6月。 父とこんな話をされた。『9月から、香川県に行くから。』、まさかの父親の転勤。もちろん、家族全員お引っ越し。 クラスメイト、そしてサッカー部の仲間に別れを告げたのは1学期の終業式の日だった。 中には泣いてくれている仲間も居て、『向こうの学校で、エースストライカーになってやるから!』と強がってやった。泣いたけど。 翌日にはもう香川県へと向かうことになり、数人だが見送りに来てくれた。 僕はそこでも、『エースストライカーになる!!』と力強く拳を上げていた。 走り去る車の窓から、仲間の姿が見えなくなるまで何度も拳を突き上げてました。 仲間が見えなくなり、座席に座った僕は右手で涙を拭いて何とか落ち着きます。 仲間と交わした約束、僕は絶対スゴいサッカー選手になってやる! そんな時、父親が冷静にこう言うのです。 『ああ、優斗~?あっちの学校、サッカー部、無いから…。』 香川県の新しい家。町中に住んでいた僕にとって、この町は田舎そのものだった。 『町ではなく、村。』、そんなところでした。 引っ越しの片付けも終わり、僕が家から出られたのは、2日目のことでした。 『何か買ってくる!』と言って自転車で飛び出した僕が目指したのは、ここに来る道中で見掛けていた有名な青い看板のコンビニ。 店内に入るととても涼しく、少年ジャンプの立ち読みをするけど、レジのおばさん店員の目が気になってやめました。 コーラを買い、アイスを買い、最後に父と母のために大きい袋に入ったお菓子をレジかごへと入れました。 『いらっしゃいませ!』、40歳くらいのおばさん店員の声が響きます。 『ピッ、ピッ、』とバーコードが読まれ、最後に『レジ袋、どうされますか?』と聞かれました。 その時、僕は固まっていました。 女性の名札を見たことだけは覚えています。『佐々野かすみ』と書いてありましたが、記憶はされませんでした。 僕が見ていたのは、そのおばさん店員さんの顔。40歳くらいの綺麗な人でした。 (エロいお姉さん…。) 夢の中に出て来ていたあのエロいお姉さん。少しおばさん化をしたけど、あの女性に間違いありません。 目の前にいるこの女性に、僕はあんなエロい事も、こんなエロいことも、何度もしてもらって来たのです。 『ありがとうございました。』、おばさん店員に言われながら、僕は店を出ました。 自転車にまたがり、帰ろうとすると、そこに見えたのはどこかで見たような田舎道。 景色を見渡せば目の前にそびえる山も、流れる小さな川も、そして吸い込む空気までもが、なぜか懐かしく感じるのです。 (知っている…。僕はここを知っている…。) 僕はペダルをこぎ始め、家とは反対の方へと走り始めていた。走れば走るほど、甦ってくる記憶。 『なんで知ってる?ここはどこ?あのおばさん店員さんは?そして、翔太って、誰?』、そう思いながら自転車は走ります。 あっ、アイス溶けちゃった…。
2024/09/11 15:39:39(vwNfoHrw)
投稿者:
三崎優斗
この家に来て4日目。
父はもう新しき職場へと出掛けて行った。母といても家は退屈で、暑い中を僕は自転車で出て行きます。 走り初めますが、もう近所の辺りは探検済みで、今日はもう少しだけ遠出をしてみます。 10分くらい走ったでしょうか。僕は何にもない、田舎道へと入って行きますが、そこで自転車を止めました。 整備のされてない遊歩道が見えたのです。自転車を降り、テクテクと歩き出すと、そこに見えたのは寂れた小さな公園。 少しだけ遊具がありますが、子供たちの遊ぶ姿はありません。 (つまんない、帰ろう。)、そう思った時、人影が動くのが見えました。 夏なので草木が生い茂り、誰も居ない薄暗い公園は恐さを感じます。 ベンチから立ち上がったのは、40代くらいの女性だった。気がつかなかったが、そこに居たらしい。 『ああ、こんにちわ~。』、彼女は僕を見掛けると優しく挨拶をしてきました。 『こんにちわ~。』と返すと、彼女は歩き始め、僕の横を通り過ぎて行きます。 (エロいお姉さん!!) 分からなかった。コンビニの制服じゃなかったから、私服だったから、分からなかった。 誰も居なくなり、帰ろうとすると、急に吹き始める突然の突風。 僕は身体を屈めながら、その風が通り過ぎるのを待ちます。 それは一瞬のことで、風がやんだ僕はまだ揺れている大きな木を見上げていました。 (な、なんだろう…。知ってる、この大きな木。この木だけじゃない、この公園も、今の強風も知っている…。なんで?) さ迷うように歩く僕は、いつの間にかおばさんの座っていたベンチまで来ていました。 それはとても古くて、いろんなところが割れ、ペンキなどほとんど残っていません。素地です。 子供の落書きも多くて、もう自由帳のようになっています。 そんなベンチに新しい、書いたばかりと思われる文字を見つけました。 『翔太、いつまでも待っています。』 普通の人なら、見過ごしてしまうでしょう。しかし、この僕にはそれは無理でした。 だって、僕は翔太だから…。 14年間も止まっていた時間が、いま動き始めていました。あの風は、それを告げていたのかも知れません。
24/09/11 16:20
(vwNfoHrw)
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