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サイレン
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:サイレン
鳴り止まないサイレンに怯え、ここ暫くまともに眠れやしない。
ここも、いつバレるか解らない。


俺は、柴田京介28歳
広告代理店に勤める普通のサラリーマンだ。
逃げられたが、女房も子供もいた。が、全てアノ事件が俺の人生を変えた。

-2ヶ月前-
会社の接待で定期的に広告の発注をかけてくれるとある企業の営業部長と談合の席を設けた。
これが全ての始まりだった。
ウチの社の部長や課長からも『よろしく頼んだぞ』そう言われ意気揚々と接待に挑む積もりだった。
当日、午後。
予約を入れておいた割烹に確認する。
『よし!!』
次に女の子のいる店も予約をとってあるので、これも電話で確認。
『よし!!』
最後に挨拶がてら、先方の会社へ。
接待する部長の様子も知りたかったので電話を入れた。
当人が直接、電話に出てくださって上機嫌の様子だ。
全て順調の筈だった。
夕方、いつもより1時間早い16時に会社を自社の課長に見送られ退社。
美味しいと評判の店で接待する部長さんへのお土産を買ったのが、16時半。
これはレシートと領収証が時間明記されてあった。
17時少し過ぎに接待の最初の店である割烹に着いた。
店のスタッフに案内され、部屋を見る。
問題はない。

やがてフロントから部屋に電話がはいり、『おまちの御客様、到着されたようです』さっそく出迎えに部屋を出た。
部長を伴い、部屋に戻ると早、準備されていた。
奥に部長を案内し、自分は入口側にすわり、一通り御礼言上を述べて、料理を始めてもらおうとフロントへ電話するも誰もでない。
仕方なく『すいません。直接、言いにいってまいります』
そういって席立った。
『今日は機嫌がいい。ゆっくりで構わないよ』と。座ったままの部長。
機嫌は損ねてはいないようだった。
直接フロントへいくとスタッフが『申し訳ございません』そう頭をさげた。
その場で直接瓶ビールと栓抜きを貰い急いで部屋に戻る。
部長へ『料理も間もなく出てきます。先ずは一魂、さっ』とビールを差し出す。
二人のグラスにビールが満たされ部長からだった。
『今日の席と両社の発展を!』
料理も運ばれ、丁度少し酔いが回りはじめた頃だった。
部長から『綺麗な娘に酌されたいな』
さっそくフロントへ走りコンパニオンの発注をだした。
『折角、会社の金で飲むんだ。君も女の子よびたまえ』そう言われていたので二人頼んだ。
予約を済ませ部屋に戻り

襖の前で『柴田です。戻りました。』
しかし、中からは声はない。
もう一度『部長?いらっしゃいますか?柴田です、戻りました』
やはり、声がない。
『入りますよ』
すると中でガシャン!!
何か倒れる音がして、急いで襖をあけると
今にも死にそうな顔で部長が座椅子にもたれかかっている。
みると部長の腹には包丁がささり、部長の白いワイシャツを鮮紅に染めていた。
部長は、蚊の鳴くような声で『たのむ…たすけて…たすけてくれ…たの…』
頭がパニックになり、つい刺さってる包丁の柄を握ってしまった。
丁度、そこへ新しい料理を持ったスタッフが来てしまった。
襖を開けたまま、部長に飛び付いてしまったので部屋の外から惨状が丸見えである。
『きゃーっ!!』という女性スタッフの声が甲高く響くと床に料理がガシャーンと落ちる。
次の瞬間、惨状を目の当たりにした女性スタッフが『ひとごろしーっ!!』を連呼し始める。
俺は、『ちがう!ちがうんだ!!きいてくれ!!』
そう叫び女性スタッフに歩み寄る。
女性スタッフは再び
『きゃーっ!!』
と飛び退き、這うように戻ってしまった。
各部屋から、客やスタッフが顔を出し、通路まで出てくる人も現れはじめた。
怖くなって俺は、とっさに店を出てしまった。
振り替えると店の中から男性スタッフが二人出てきた。

入口のフロントが見える。初老の男が電話をしている。
通報しているのだ。

益々状況は悪化する。
とりあえず俺は、場所を離れ、自社の部長へ電話をした。
『な、な、な、なんだとっ!!ころされただと!!』驚くばかりで話しが進まない。
警察へ電話しなきゃ!!
そう思い電話しはじめて指が、とまる。

心の中で『何故、俺は、あの場から逃げてしまったんだ…』呟いていた。

辺りは、すっかり暗く
他人がさも平和そうな顔して通り過ぎていった。

いったい誰が部長を殺した?

俺は、身を隠さざるを得ない状況を自分から作ってしまった訳だ。
しかし、俺は、無実だ。
あわてて自宅に戻り荷造りをはじめた。
バッグに着替えや諸々詰め込んで車のトランクに押し込んだ。
宛はない。
朝になるまでひたすら走った。

朝、山の中に車を停めて仮眠を取った。
2~3時間で起きて、車のラジオをつける。

『柴田京介28歳の行方を追っています。この青年の…』
聞きたくなくてラジオを消した。


(つづく)
2012/07/04 08:29:40(FyvrN2s3)
2
投稿者: さるのこしかけ。
体験記ではないのだけれども。
ちとした読み物に

どぞ。
12/07/04 08:31 (FyvrN2s3)
3
投稿者: さるのこしかけ。
気が気じゃなくて、おちおち休んでもいられなかった。

少しでも冷静になる必要がある。とは思うものの、今となっては冷静になる方法すら思い浮かばない。
山の中で時間を潰し、部長の死に様から、24時間たった。
度々つけるラジオからは、ドンドン状況が悪化している事がわかる。

しかし、まてよ?
ラジオでも『動機については、まだ、不明瞭な点が多く捜査にも難航する見込みも…』
そうだ!
俺には、動機がない!
部長を殺す理由が何一つないじゃないか!

ようやく、この考えにたどり着くまで、かなり時間が経過してしまった。
人間、焦っていたり、パニックを起こしている時などは、普段考えつきそうな事も思い付き難くなるものなのだ。

そう思ったら滅入っていた気が少しづつ晴れていく。

思い直して出頭しようと思い、山を降りて近くの交番に出頭した。

『君だね…?良く出てきてくれたね。県警や本調に報告する前に話しを聞こう。私はね。イヤね君は犯人じゃないと踏んでるんだよ。先ずもって動機が見当たらない』こう、せっしてくれたのは上原巡査。

ひなびた交番の取調室で暖かいお茶をいただき
上原巡査の好意だった。
『腹は減ってないかい?』
そういって出前をとってくれた。

いろんな意味で自分的に落ち着きを取り戻し、今までの経緯を上原巡査に話した。
『なるほど。良くわかったよ。君は利用されているのかも知れないな。ちょっと待っていてくれるかい?』
そう言うともう1人の巡査に『たっつぁんに来て貰うように電話してくれないか?』
『了解しました!さっそく立川さんに来てもらいます!』そう承た巡査は年若で、まだ、20代前半だろう。まだ初々しさがあった。
制服も何処と無くピカピカだった。
上原巡査が『吸うかね?』そう言って差し出した煙草をもらい、火をつけて貰う。
上原巡査が自分の中のモヤを吐き出すように白い煙りを フゥーッと吐き出しながら
『煙草なんてね、百害あって一利なしって言うがね。こう言う時はいいもんだよ。落ち着けるだろう?』
この上原さんなら、信用できそうだ。
そう直感した。
やがて、立川と言う刑事が現れた。
別室で上原さんと話しをしているようだ。
暫くして上原さんは立川刑事を伴って取調室に現れた。
『立川だ。話しは聞いたよ。災難だったな。君の疑いは直ぐに晴れるだろう。その為にも署に来てもらいたい。そこで、ちゃんとした調書をとる。いいね?』
すると横から上原巡査が『立川さんに任せておけば大丈夫だから』その言葉が、とても勇気付けられた。

年の頃は40半ばか?
色黒で四角い顔で笑いシワがあった。
少し右足が悪そうだった。
世の中には、この上原巡査みたいな警察官もいる。
また『困ったらいつでも力になるからね』そう言ってくれた上原巡査の言葉が背中にあって心強かった。
署へ移動の車の中、立川刑事が口を開く
『上原さん…いい人だったろ?』
俺も屈託なく
『はい』と答える。

車を運転しながら立川刑事が続ける。
『上原さん。足が少し悪いんだ。
昔な、上原さんデカだったんだ。』

上原巡査は、10年ほど前に奥さんと娘さんを亡くしていた。事故だったと立川刑事が話してくれた。
しかし上原さんは当時、ある窃盗事件で少年を二人追っていた。
そして二人の居所がわかり、向かう途中で奥さんと娘さんが事故に遭遇した事を聞かされた。
あと少しで逮捕できる状況だ。
上手くいけば応援が到着すれば交代できる。
それまでは…そう思ったらしい。
応援が遅れていて、隠れ家から、二人は出そうだった。
張り込んでいた上原さんは、居てもたってもいられずに踏み込んだ。

家族の危機が、ベテラン刑事の冷静さを奪った瞬間だった。
二人の少年達は改造エアガンを所持、上原さんは足を射たれた。

結局、少年二人を逃し、家族とも最後の時すら逸してしまった。

以後、上原さんは自分を責めた。
やがて仕事も休みがちになり、酒に溺れた。
奥さんがいた時は煙草は止めていたらしい。

上原さんが戻ったのは、無くなった娘さんと同い年の娘が誘拐された事件だった。
立川刑事は『恐らく、亡くなった娘さんと被害者の娘さんとが、重なったんだろう。上原さんは担当を願い出たんだ。で、無事、事件を解決するとみずから、交番勤務を願い出た。自分で街や人の目や口になるんだっていってね』

車が止まり署についた。
立川刑事は言った
『いいかい。これは任意だ。だから手錠もしない。堂々としてればいい。誰かに何かいわれても気にするな。いいね?いくよ』

署に入るなり『おいっ!!そいつ!!』
『立川!!手錠はどうしたっ!!』
怒号が飛び交う
立川刑事は、そっと『大丈夫だ、気にしないで歩け』
そう言うと取調室まで一気に進んで俺を中にいれると怒号の中へ再び戻っていき『いいか!任意だ。取調はこれからなんだぞ!!それにまだ、星と決まった訳じゃないだろ!!』
そんな声が聴こえてきた。
すると『なんだ?また上原の真似事か?仲良しごっこか?あはははっ』

なんだか、俺まで悔しく握り拳を固くしながら立川刑事の戻りをまった。

やがて調書をもって立川刑事が戻った。
おかしな話しだが、今は立川刑事や上原巡査がいてくれると落ち着くのだ。
それだけ
真相を探ろうと必死なのが伝わる。

取調室で立川刑事と向かいあう。
立川刑事は『さぁ、はじめよう。気を楽にね…』

(つづく)
12/07/05 09:45 (lVgJL3kY)
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