少年期の頃サッカーというスポーツをしていた、何となくだ
進学した高校も大学も何となく、今までやってきた事すべて何となくという事になってしまう。

大学のとき俺のあだ名はピーポくんだった、律儀、丁寧、過剰な正義感
一つあげるとこんな事があった、
学食で２～３人の級友と飯を食っていたときに、一人の友人が１００円貸してくれと言った、あも
言わさずおれは念書を用意していた、
今考えるとばかばかしいが間違った事をしたとは思わない、
その友人はブランカと呼ばれていた、ゲームでそのキャラを使うと負け知らずだった事から。

入道雲が北アルプスの山脈に見えた、午前１０時くらいだろうか卒業後同窓会で１回顔を合わせた
振りにブランカから電話が入った、
なぜか身構えてしまった、波動拳で牽制するかのように受話のボタンを押した。

６畳一間、畳臭い古いアパート、今時　土壁　の狭いお城だった、玄関は開いておりチャイムを押
す手間が省けた、
奴の本名　倉田　という文字がさらに懐かしさを臭わせた、中は殺伐としており家具に黄色の札が
貼られていた「差し押さえ」という文字が書いてあった、
倉田はそれらを指差し核兵器でも扱うかのように難顔を見せた。

髪は脂ぎって、頬はこけている、臭いそうな黄ばんだ親父シャツ、悪いがあの頃より不細工だっ
た。
結婚もしたそうだ、離婚もしたそうだが、相手は俺の元カノだそうだ。

俺を持て成す為のコーヒーを入れる為のやかんの音、
見てるだけで肉まんのようにボイルされるかのような入道雲、
そしてこの汚らしい狭い部屋に加齢臭漂うおっさんと二人、殺してしまいたかった、もちろんこれ
だけが理由じゃないが、

コーヒーが入り、何かと神妙な表情を見せた、今からアカデミー賞のレッドカーペットでも歩くの
か？とジョーダン混じりに聞いてみた、
彼はまるで飲み過ぎて嘔吐するかのように、怒が強く、だが、蚊の飛ぶような音量で話し始めた、
まるでお経だった。

俺の部屋に戻ったのは１８時を回っていた、
夕方のアニメを見逃したからか、奴の悲痛な祈願を受諾してしまったからか、
彼は結婚もしたが、子供もいるという事だった、だが彼女との子供じゃない、倉田の連れ子だそう
だ、しかし倉田の実の子じゃないという事だった、正直分けが分からなかった、
借金まみれで明日から漁船に乗るという、カニ漁だそうだ、カニ漁は漁業で一番死人が出るそうだ

缶ビール片手に、今日の事を思い出していた、いや忘れようとしていたのかもしれない
ふと携帯に目をやると、スモールランプが点滅していた、見慣れぬ着信履歴だった
酔っていたせいか、気がつくとリダイヤルしていた、なぜかタンポポの匂いがした気のせいだろう
が確かだった
声を聞いた瞬間分かった、倉田と結婚していた事や離婚した事とか、初デートでの俺の失敗談とか
話が盛り上がった、、、、ふとそこで疑問がわいたなぜ子供は彼女の所に行かないのか？
連れ子とはいえ、彼女はそんな非情な人では無いからだ、
何となく聞いてみた、倉田の子供を預かる予定なんだけど一緒にご飯とかちょくちょく行かないか
い？

不思議だった、倉田に子供はいなかった、
昨日は酔っていたのか？答えはノーだ、たかが缶ビール２杯でよう３０超えたおっさんがどこにい
る、居たとしてもそいつは妖怪だ、

昼過ぎにチャイムが鳴った、宅配便だそうだ、ずいぶん重くそしてでかかった、まるで成人男性が
すっぽり入る棺桶かのように