ヒールがアスファルトを打つたび由佳の心は重くなった。まるで飼い馴らされた鳥が突然外に放り出されたみたいな、そんな心許なさ……。はじめは勢い良く飛び出せても、必ず失速する。
こんな自由は、要らなかった。由佳は外に出る自由より鏡を見なくても良い拘束を選びたかった。
携帯を通した由佳は、いつだって痩せて可愛らしい女の子だった、清純だけれど乳首に触れるだけで声が洩れるはしたない女の子。
自分の作り上げたイメージは、いつしか本来の自分にすり替えられ、由佳は錯覚の中に住むことができた。自らを守る鳥かごの中に。
けれど残りカスみたいな日差しが照らすのは、真実の姿。
由佳はコンビニのガラスに写る自分の姿から目を背けた。
そしてその横のビルに吸い込まれていった。