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ひとしずくの排卵
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:ひとしずくの排卵
投稿者: いちむら沙織
_設定は、妄想の中の昭和です。

_前回の同性愛ものはあまり需要がなかったようなのですが、やっぱり書くのが好きなのでまた書いてしまいました。
 
2011/08/18 13:16:48(p36zYMIP)
2
投稿者: いちむら沙織
一話



_終業のチャイムが空に鳴りひびくと、学校裏の森がざわざわと波立って、そこから小鳥たちがいっせいに飛びたちました。
_セーラー服姿の女学生らがにぎやかに校舎から出てくる。

「先生さようなら」
「はいさようなら、寄り道しないで帰るのですよ」
「わかってます」

_校門で生徒らを見送るのは、立派なくち髭に太い眉毛をたくわえた校長先生。
_雨の日も晴れの日も一日も休むことなくそこに立ち、学びの庭をまもり、将来ある学徒らをまもり続けてきた。
_そこから見える野山の新緑もいよいよ鮮やかに萌えているのでした。

_下校時刻を過ぎても教室に残って勉学に励む者もいれば、校庭で運動部活動をする者もいる。
_図書室に向かう渡り廊下に春子の姿があった。

「春子、このあいだ借りた本、もう読んでしまったの?」
「うん、少し難しかったけどね。どんな内容か教えてあげようか?」
「あん、だめだめ、私も借りるんだから言うのはずるいよ」
「えーとね──」

_いたずらに笑いながら友達の表情を面白そうにうかがう春子。
_あわてて春子の口を手で隠して「こら、だめ」と、じゃれつくのは、級友の美智代だ。
_校則で髪の長さを決められているおかげで、春子も美智代も肩より長い髪をうしろで結んでいて、遠目からだと双子にも見えるだろう。
_春子たちだけじゃなく、ここの生徒は髪の長さもスカートの長さもみな同じでした。
_春子と美智代は、丈の長い黒色のスカートをひらつかせながら廊下をかけて行きました。

「廊下は走らないように」
「すいません、急いでいたので」

_向こうから歩いてくる先生に注意されたものの、すれ違いざまに軽く頭を下げるだけにして、再びかけていく二人。

「困った子たちだわ、まったく」

_振り返り遠ざかる春子たちの背中に呆れ顔でため息をつく若い女の先生は、英語を教える森南(もりな)つぐみだ。

「私も森南先生みたいに素敵な大人になりたいの」
「私はだめだけど、春子ならなれるよ。だって、ほかの学校の男子から告白されたんでしょう?」
「やめてよもう、校長先生に知れたら退学になってしまう。そうしたらお父さんが悲しむもの」
「春子は春子のままでいいの。背伸びして大人になろうなんて思わなくても、いつかみんな大人になるんだから」
「そういう美智代はどうなの?好きな人できた?」
「高校生だもの、好きな人ぐらいいるよ、片思いだけどね」

_そうなんだ、という具合に黙ってうなづく春子でしたが、自分にもずっと前から思いを寄せている人がいるということを、美智代にもなかなか打ち明けられずにいたのでした。
_なぜなら、春子が好きになってしまったのは、好きになってはいけない人なのだから。

_図書室の書棚のあちらこちらに目をやって、恋愛小説や詩集などを好んで借りては、そこに自分の思いを重ねているのでした。

_春子たちが下校する頃には校門に校長先生の姿はなく、銀杏の木がそこに細長い影をおとしていました。

「ねえ春子、これから手芸屋さんに付き合ってくれない?見たいものがあるんだけれど」
「美智代ごめん、今日ははやく帰って夕飯の支度をしないといけないの。明日でもよければ付き合うわよ」
「うん、わかった、それじゃあまた明日ね」

_並んで自転車を押しながら歩き話をしていた二人は、小さく手を振りながらそこで別れました。

_陽が沈むにはまだ早い時刻だ。
_春子はしきりにスカートの裾の捲れを気にしながら自転車を降りると、深海(ふかみ)と書かれた表札の掛かった家の中へと入って行きました。

「ただいま」

_春子の大きな声に返事をする者はなく、近所の犬の吠える声が聞こえるだけでした。
_家に入るなり仏壇の前に正座して「お母さん、ただいま」と、静かに目を閉じて手を合わせた。
_今朝、焚いた線香の匂いがまだ残っている。
_数年前に母親が他界して、今は父親と二人で暮らしている春子は十六歳。
_高等学校に通いながらもしっかりと家の事もこなせるのは母親譲りなのか、多感な時期を男手で育ててきたとは思えないほど賢く、美しい娘に成長した。
_だんだんと生前の母の顔に似てきているのだと、最近になって思うようになってきた。
_そんな自分を育ててくれた父のことをとても尊敬していた。
_春子はセーラー服を脱いで、髪に結んだゴムをほどくと、西日の射す縁側から庭に降りた。

_お父さんが帰って来る前にやっておかなければ。

_そう思って洗濯用のたらいに水をはって、チャプチャプと何かを洗いだした。
_それは、月経で汚れた布ナプキンでした。
_何度か水を入れ換えながら丁寧に石鹸を泡立てる姿、それを生け垣の向こうから覗き見る男の影があることに春子は気づかない。

_春ちゃんもえらくべっぴんになったもんだ。
_いつの間にあんな物、着けるようになったんだか、もう子供だって産める体になったってことだな。

_その男は、自分といくつも歳が離れた少女をじめじめした視線で舐めまわし、口の中に唾をためていた。
11/08/18 13:42 (p36zYMIP)
3
投稿者: いちむら沙織
二話



_しゃがんだまま自分の汚れ物を洗う春子のことが、まるでおしっこをしている姿に男の目には映っていた。
_にやりと口元をゆるめた男のあごによだれが垂れる。

_ほんとにいい女だ。
_おじさんだって春ちゃんのおしめを替えたこともあるんだ。
_それが今ではどうだ。
_色気づいた太ももが白桃のように見えるじゃないか。

_スカートの下半分を捲り上げているせいで、春子の下着が見えそうになっている。
_男の盛り上がった眼球が春子の股の間をとらえようとするが、あと少しのところが見えそうで見えない。
_それがかえって男の妄想を膨らませることとなるのだ。

_なかなか良い眺めだ。
熟れる前の青い果実も、いじくれば甘みを出すだろう。

_生け垣の向こう側で男は腰を曲げて下半身を露出し、血色のわるい亀頭を撫でていた。
_ヤニ臭い息を吐いては自らを起たせて欲をしごき出す。
_そうして、まだ誰の色にも染まっていない少女から目をそらすことなく、苔(こけ)のむした道端に向かって射精した。
_切れのわるい精液がビタビタと何度も地面を打つ。

_春子は、すすぎ終わった布ナプキンに鼻を近づけて匂いを嗅いだ。
_血生臭さは消えて、代わりに石鹸の良い香りが鼻を通っていった。

_その一部始終に恥じらいがあり、春子の自慰行為を妄想させた。

_たらいの水に西日が映りこんでいる。
_夕方のサイレンが鳴ると、あちらこちらから犬の遠吠えが聞こえてきた。

_そろそろお父さんが帰るわ。

_春子が家の中に入ると、軒下に干された春子の私物をまじまじと眺めて男はその場を去った。

_午後六時にもなれば夕闇が訪れる。

「ただいま」

_春子の父、紳一が帰った。

「おかえりなさい、晩ご飯できてるから」
「ああ、先に風呂に入るから沸かしてくれ」

_くたびれた作業着のまま畳の上に寝転がって、紳一は唸るようなため息をついた。

「だめだよお父さん、作業着はきちんと脱いでね」
「ああ、ごめんごめん。春子もお母さんの口に似てきたな」

_春子は口もとにえくぼを作って微笑んだ。
_紳一は思った。
_春子が母親に似てきたのは口だけではない。
_声や表情もそうだが、体つきに丸みがでる年頃にもなれば、娘ながら「女」を感じることもあるのだと自分でも戸惑う時がある。

_しかしそれは自然な感情であった。
_なぜなら、紳一と春子は血のつながらない親子なのだから。

_春子の母はいちど離婚しており、その後、ひとり娘の春子を連れて紳一と再婚。
_その数年後には病により他界したが、残された紳一と春子は互いを支えとして暮らすうちに、血縁以上の絆で結ばれていることに気づくのであった。

_春子は紳一に惚れていた。
_父と娘ではなく、男と女のあいだに生まれる感情だった。
_紳一のことを思うと、春子のくちの中は甘酸っぱくなった。
_父も私とおなじ気持ちでいてくれているだろうか、と顔を合わせるたびに思う。
11/08/19 14:54 (M8EfHmDq)
4
投稿者: (無名)
続き気になります
11/08/20 15:47 (acfCBK0Y)
5
投稿者: いちむら沙織
三話



_その日の食卓には筑前煮がならんだ。

「うん、母さんの味だな」

_紳一が頬をふくらませてそう言うと、春子の表情が明るくなった。
_母の背中で童謡を聴きながら、母が作る筑前煮が鍋の中でコトコト煮立っていくのを面白そうに見ていた記憶がある。

「これならどこに嫁に出しても恥ずかしくないな」
「私はまだお嫁に行く気なんてないよ、お父さんが再婚するまではね」
「僕はもう結婚はよしておくよ、もう四十二だしな」
「まだ四十二だよ。そんなこと言って私がお嫁に行きそびれたら、お父さんがもらってよね?」

_春子は本音に冗談をかぶせて言ってはみたものの、内心ドキドキしながら紳一の言葉を待った。

「いいよ、その時は僕が春子をもらってあげるよ」

_春子は動揺した。
_嬉しさで胸が詰まりそうにもなった。
_そんなことを聞いた自分もわるいが、父のくちから出た言葉が本心ではなくても、体の奥からこみ上げてくるものを抑えきれずに涙ぐんでしまった。

「どうした?」
「うん、なんでもない。お母さんのことを思い出したから──」

_春子は笑顔をつくってごまかした。


_その夜はなかなか寝つけず、何度も寝返りを打ちながら紳一の言葉を思い起こしていた。

「僕が春子をもらってあげるよ」

_紳一にとっては何気なく言ったつもりの一言が、春子の鳩尾(みぞおち)のあたりを熱くさせていた。

_でも──、と春子はいつもとは違う体の変化に気づく。
_下腹部の内側からジワジワと染み出してくるような残尿感に似たものを感じたのだ。
_あきらかに月経の気持ち悪さとは違う。

_気持ちいいの?と十六歳の自分に問いかけた。
_窓の外の月はあんなにくっきりと浮かんでいるのに、そんなことを考えていると、ますます目が冴えてきて眠れない。

_不潔。

_父親に対して好意を抱くなんて、私は不潔な娘だ。
_たまたま好きになった人が父親だったのか、それとも父親だから好きになったのか、どちらにしても私は父に恋している。
_母とおなじ人を好きになっている。
_こんなに苦しい思いをするのなら、好きにならなければ良かった。
_そうやってまた枕を濡らしているうちに、春子はいつの間にか眠ってしまっていた。


_翌朝、春子が起きてくる頃には、家に紳一の姿はなかった。
_柱の日めくりカレンダーの赤い日付を見て、祝日だということを春子はようやく思い出した。

_いけない、美智代と約束していたんだ。

_あわただしく支度を済ませて庭先に出ると、そこに停めてある自転車のスタンドを軽く蹴ってまたがろうとした。
_その時、春子の目が何かにとまった。

_なんだろう、これ?

_よく見ると、自転車のサドルが白く汚れている。
_かたつむりの這った跡が乾いて白い粉を吹いているようにも見える。
_梅雨入りが近づけば、そろそろかたつむりも活発に活動をはじめる時期だ、と春子は思った。

_タオルの端を軽く水で濡らしてサドル拭いてみると、微かなぬめりを指先に残しながら汚れは消えていった。

_しかし、その様子をうかがう汚らわしい視線が自分を舐めていることに春子は気づいていない。
_夕べの男だ。
_生い茂る葉っぱの隙間から春子をじっと見つめて、ゴクリと生唾を飲みこむ。

「そこにこびり付いていたものが何なのか、後でおじさんが教えてやろう。大人の女に目覚めるための儀式だ。おじさんに見初められるとは、春ちゃんは運がいい」

_そんな歪んだ思いを腹にため込んで、念仏を唱えるようにつぶやいた。

_春子はサドルの上を手で払って、スカート越しに自分の全体重をそこにあずけた。
_それを見届けた男が、歯並びのわるい前歯をむき出してニヤリと笑う。

「それでいい。俺の精子を好きなだけ股で食えばいいんだ」

_こぎ出した春子の姿が見えなくなるまで、男は瞬きをしようとはしなかった。

_春子が去ったあと、抜け落ちた鳥の羽根が風に舞っていたのだった。


_田植えがはじまったばかりの田園の中を、春子の自転車が抜けていく。


_時を同じくして、くたびれた看板をぶら下げた古本屋に紳一の姿があった。
_しきりにあごを撫でながら本を読みふけっている。

「あ、深海春子さんの──」と紳一に声をかけてきたのは、春子の通う高校の森南つぐみだった。

「ああ、先生どうも、おはようございます」と紳一が会釈すると、つぐみもしとやかな笑顔で返した。

_声をかけたのはいいが、何を話したら良いのかわからなくて困っている様子のつぐみの心情を察して、「先生も本、お好きですか?」と紳一が気さくに話しかけた。

「はい、短編小説なんかを良く」
「そうでしたか。僕も小説が好きで、よくここで立ち読みしているんです」
「じゃあ、お父さんは──」
「お父さんは、よしてください。名前でいいです」
「あの……私……深海さんの名前、知らないんですけれど」

_おもしろいことを言う人だ、と紳一は思った。

「いえいえ、下の名前ではなくてですね──」
「あ、そう、そうですよね、なんだか私、すいません」

_つぐみは恥ずかしくなって、顔も耳たぶも真っ赤になった。

「先生は可愛らしい人だ」
「え?──」

_紳一のそのひと言が、つぐみの心を引き寄せてしまった。

_二十六歳になって、年上の男性から「可愛らしい」と言われるなんて、どういうつもりでそんなことを言ったんだろう、と紳一の顔を見上げた。
_彼の眼差しがあたたかい。

_しだいに会話がはずんでいくうちに、二人の距離が縮まった気がして、つぐみは舞い上がっていた。
11/08/23 00:07 (cFAfUxV4)
6
投稿者: いちむら沙織
四話



_そんな親しげな二人の様子を、たまたま通りかかった春子は見てしまった。

_お父さんと森南先生って、そういう──。

_これが「嫉妬」というものなんだと春子は思った。
_紳一が遠くへ行ってしまいそうな気がして、喪失感が春子の心に穴をあけた。

_先生は容姿も綺麗なのだから、きっと心も私なんかよりずっと綺麗なんだわ。
_私なんかより──ずっと──。

_そんなことを思いながら春子は自分の胸のふくらみに手をあてて、もっと大人になりたい、と下唇を噛むのでした。

「美智代ったら、どうしたのかしら」

_春子が空を見上げると、太陽はいちばん高くまで昇りきって、まんまるい日輪をつくっていた。
_約束の時刻はとっくに過ぎている。
_待ち合わせの場所に美智代がなかなかあらわれないのだ。
_夕べの約束を美智代が忘れるはずがない。
_なにか都合をわるくしたのか、ここで待っていてもしょうがない、と春子は美智代の家に自転車を走らせた。


_桜園(おうえん)家の屋根の鬼瓦はいつ見ても恐ろしい形相でこちらを睨んでいる、と春子は苦笑いしながら桜園美智代の家をたずねた。

「深海くん、いらっしゃい」

_春子が呼び鈴を鳴らそうとしたところに、庭木の世話をしていた美智代の父、善次(ぜんじ)の低い声が飛んできた。

「あ、校長先生こんにちは。あの、今日、美智代と会う約束していたんですけれど──」
「娘なら朝早くに出かけたはずだが、どうかしたのかね?」
「それが、待ち合わせの場所になかなか来ないので、まだ家にいるのかと思って来てみたんですけど──」
「家を出たきりまだ帰っとらんよ」
「そうですか」と視線を横に流して、美智代の行きそうな場所を頭の中にめぐらせる春子。

「心当たりはあるので、そこに行ってみます。どうもおじゃましました」

_そう言ってこちらに深々と頭を下げる春子を、まだ若いのになかなか、はっきりとしゃべる子だ、と感心の眼差しで善次は見送った。


_町に一軒しかない手芸店にはいつも学校帰りの女子生徒たちが入り浸って、気の合う友達とおしゃべりをする「憩いの場」となっている。
_休日ともなれば高校生だけではなく、中学生や、小学校の高学年生までもが店に溜まりにやって来る。
_店主のおばさんとは女子生徒のみんなが顔馴染みの仲だ。

_春子の予想どおり、今日も数人の女の子たちが店のあちらこちらで輪をつくって談笑していた。

「そうね、美智代ちゃん、今日は見てないね」

_いつでも趣味のついでに仕事をしているといった感じの店のおばさんが、お茶をすすりながら言った。

_ここに来ていないとしたら、美智代はいったいどこに出かけて行ったんだろう。
_もしかしたら美智代のほうも私を捜しているかも知れない、きっとどこかで擦れ違っていたんだ、と春子はとりあえず家に帰ることにした。


_都会から離れた田舎の小さな町には、犯罪という犯罪はほとんどなかった。
_地元の消防団や自治会の青年部などが、時々、町内を巡回しながら防犯に努めてはいるものの、事件や事故などがあるわけでもなく、町内清掃が主な活動となっていた。

_皆とっくに平和ぼけしていたそんな時、めったに鳴らない交番の電話が急に鳴ったもんだから、駐在員は肝を冷やすほど驚いた。
_間違い電話ならいい迷惑だ、といった身のこなしで電話をとると、電話の向こうの消防団員を名乗る男の話を聞いてさらに驚いた。

_とある墓地のいちばん奥まったところで高校生くらいの少女を保護したというのだが、発見時のその異様すぎる状況を聞いて、駐在員は顔を青ざめさせたのだった。

_その少女は墓石の前に座り込んで故人と対面しているのだと、そこに居た誰もがそう思ったらしい。
_しかし何かがおかしい、と消防団員のひとりが少女のほうへ近づいていった。

_残りの者は遠目にその様子をうかがっていたが、彼は少女を見るなりこちらに向かって何かを叫び、自分が着ている上着を脱いで彼女を覆い隠すようにかけた。
_そして婦人部のにんげんを誰かよこせと声をつり上げた。

「それで、その子はどういった具合だったのかね?」

_そう言いながら駐在員は受話器を肩で挟んで、大学ノートに鉛筆をはしらせた。

_じつはその少女、シャツもスカートもはだけさせて、そこで声もなく泣いていたそうだ。
_下着はつけておらず、濁りのない白い肌がまばゆいほどに露出していたが、ところどころに擦り傷をつくっていた。
_口はガムテープで塞がれ、右手は右足と、左手は左足とそれぞれ手拭いで縛られていて体の自由はない。
_すぐそばの草花などは散り散りになって、はげしく争った様子がうかがえる。
_長いまつ毛が涙で束になって上下のまぶたに張り付いてはいたが、とても美しい顔立ちの少女だ。
_しかし、かわいそうなことに、執拗に吸われたであろう乳首、局部は紅く腫れ上がって、一方的な性への執着を物語っていた。

_それだけではない。
_もっとも異様だったのは、彼女の傍らに置かれたバケツだ。
_墓地の水道場から持ち出されたと思われるブリキのバケツの中にあったもの、それは……大量の蛙の卵だった。
_今の時季なら田んぼに行けばどこでも見ることができるし、米粒ほどの小さなオタマジャクシが卵から孵化する様子も見られるだろう。
_しかし彼は見てしまった。
_バケツの中身と同じものが、少女の膣から垂れ流されているのを。
_まるで少女の胎内からオタマジャクシが生まれているように見えたそうだ。

_そのことを聞いた瞬間、駐在員は大学ノートの上で鉛筆の芯を折ってしまった。

_この町で犯罪が起きた。
_しかも性犯罪だ。
_性犯罪の多くは被害者が泣き寝入りしてしまうために、一見、平和そうに見える町でも誰の目にも触れられずに婦女が犯されていることもあるのだった。
_そうやって加害者たちは社会的な制裁から逃れ、何食わぬ顔で日常に溶け込んでいるのだ。

「手足に擦り傷があったんで、婦人部の者を付き添わせて病院に行ってもらってる」

_そこまで言って電話が切れた。
11/08/25 21:53 (cocSBPw6)
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