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『無題』六
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:『無題』六
投稿者: 菊乃 ◆NAWph9Zy3c

…時給三千円。


しかも、座りながら、ダラダラと喋っていればいいのだ。
加えて、ジュース類は飲み放題。喉も、財布も、潤うってもんだ。



「会員様」と呼ばれる、おっさん達と、マンツーマン形式で「軽いお喋り」をするだけで、時給三千円。


…この商売は、一体何なのか。と問えば、


会員制の「お喋り喫茶店」というものだ、と答える。


…如何わしい匂いが、プンプンする。



その如何わしい店にて、コツコツと働き、着実に稼ぐ、あたし。十九歳。

お触り等は一切無く、アルコールの用意も無かった。

本当に、雑談するだけだ。
たまに、エロ話ばかりしたがるハレンチ野郎もいるが、大方の「会員様」は、上司や、出来の悪い部下、ウルサイ奥さんなどに対しての不満を愚痴ったり、仕事や趣味の自慢話をしたりするだけ。

…何が楽しいのだろう。いくら、若い娘さんと話したい、誰かに話を聞いてほしい、という願望があるにせよ、高額な会員費用を払ってまで…。
それ程の価値があろうか。

まぁ、そのお陰で、あたしは食べていける。…いや、彼らに食わしてもらっている、ようなもんだ。有り難いことだ。



「トークレディー」と呼ばれる、あたしみたいなバイトのスタッフは、出勤するとまず、化粧を直す。

それから、各々の個室に入って、「会員様」を待つ。

あらかじめ、これから相手をする「会員様」の「情報」が渡される。


「情報」とは、会員登録の際に行った、本人記入のアンケートの内容、…例えば、出身地や、家族構成、仕事の内容、趣味、好きな音楽などのことで、話のネタや切口に使われる。


常連の「会員様」になると、それらの「情報」に加えて、過去の「トークレディー」達が実際に話をしてみて、食い付きがよかった話題、
逆に、あまり関心がなさそうだった・不快感を示した話題などを、細かく「情報」に付け足していく為に、彼等の「情報」の量は、ハンパでは、ない。


今日の「会員様」は、一体どんな野郎だろう。



「情報」量があまり多くないところからすると、入会して、まだ間もないのでは、ないだろうか。


「情報」にある氏名を一目見て、あたしは、驚いて目を見開いた。




…剛田…武…





…ゴウダ…タケシ…







   …ぷぷっ…笑


あの、有名な少年(ガキ大将日本代表)と、同姓同名だ。漢字までおなじかどうかは、知らないけれども。


 若干、楽しみだ。




暫くして、「会員様」…いや、剛田武 その人が、部屋に入って来た。



彼を見て、あたしは、思わず、


   あ…


 と、声を漏らしてしまった。


別に、彼の顔に、性的興奮を覚えたからでは、ない。

その姿を見た瞬間に、わたしの頭の中には、消ゴムではなく、

禿げかけの頭に、ややメタボなボディ…電車で見掛けた、

 あの、オヤジ=剛田武

という、図式が浮かんだ。




剛田武との「お喋り」は、他愛もない、というか、内容もない、くだらない話をして終わった。


…どんな会話をしたのか、全く思い出せない。くだらなかったことだけ、覚えている。



でも、やっぱり、運命的…というのは、言い過ぎだけれど、これも何かの縁だと思った。


それに、金に困っていたところだ。丁度いい。



「お喋り」が終了した後、あたしは、彼に、携帯のサブアドを書いた紙を渡した。

そして、意味ありげに、にやり、と笑ってみせた。…釣れた、と思った。


こうなれば、話は、早かった。




翌日の夜には、ベットの上にいた。お金が欲しかったから。



あたしは、こんなことしても、罪悪感を覚えたことは、一度だって無かった。



農家は、自分が育てた作物を売って、金にする。

漁師は、自分が捕った魚介を売って、金にする。

絵描きは、自分が描いた絵を売って、金にする。


私には、何もない。人様から、金をとれるような物は、何もない。

産まれた時から、この体ひとつしか、ない。


たったひとつの持ち物を売って、金にする。それの、何が悪い。何処が、恥ずかしい。

これは、あたしの母親の言葉。

…とんでもねぇ、屁理屈だ。

あたしは、そんな母親を、母親としては、最悪、一人の女としては、かっこいい、と思っている。



…コト は済んだ。


彼は、精魂尽き果てたのか、グッスリ眠っている。…無理して、三度もするからだ。


金は最初に貰った。

女を買ったのは、初めてなのだろう。
ふっかけて、六万、と言ったら、本当に六万くれた。…これには、正直、驚いた。


彼が、眠っていることを確認し、あたしは、帰る支度をする。もう、用事は済んだから。


…パンツ、どこだよ。。



あたしは、夜を、明かさない。

これは、夢だから。

だから、夜のうちに、仕舞をつける。夢はそういうもんだ。




支度を済ませ、再度、彼が眠っていることを確かめる。指差し確認。熟睡よ~し。
見たつもり 仕事の雑さが 命取り。確認作業はしっかりと。



あたしは、彼の鞄から、財布を引っ張り出して、札を抜く。三万九千円。



もう、これで、用は、無い。さようなら、ジャイアン。お元気で。



ズラがろうとした、その時、




…二千円くらいは、残しといてね。俺、帰れなくなっちゃうからさ。



と、眠っていたはずの、ジャイアンが、言う。



あたしの心臓は、死に損なったウナギみてぇに、バタバタと暴れだす。



深呼吸ひとつして、問う、



…怒らないの? と。





少し黙ってから、彼は、



今日は、として楽しかったよ。すごく、いい思いをしたなぁ。…ありがとう。



と、言った。





ありがとう 、と、言った。



そうして、また、眠りについた。







あたしは、一目散に、逃げた。頭の中が、グチャグチャになってた。涙が止まらなかった。




罪悪感を感じたことなど、一度だって無かった。…はずだった。



だけれど、涙は止まらなかった。


何か、が崩れてく、そう感じた。


床の上には、随分使い込んだ感じのする、薄汚い財布が、落ちていた。


中には、カード類と、現金三万九千円と、幾らかの、小銭。



あと、小さく折り畳まれた、NEWDAYSのレシートが入っている。…裏には、あたしの本名と、携帯の番号、本アドレスが、書いてあった。




あたしが、跡を残して帰るのは、初めて、だった。



2007/04/09 22:30:18(q1xLVnhT)
2
投稿者: 菊乃 ◆NAWph9Zy3c
まずは、('A`) さん、わざわざのご報告、ありがとうございました。お陰で、こうして、話を載せることができました。

この話が出来上がったのは、一昨日の深夜だったのですが…何故だか、書き込み出来ず。。他の、小説サイトを探そうかとも思ったのですが、エロサイトにこだわりたくて…(笑)

恐らく、内容に問題があった為と、思われます。


最後になりましたが、こんなにも早く、かつ、親切な対応をして下さった、管理人さん、本当にありがとうございました。


07/04/09 22:43 (q1xLVnhT)
3
投稿者: りく ◆csun.FooJs
もう立ち上がれない程に折れた心。全てに幕を降ろそうと考えていた時に この作品に触れたよ。弱い人間だから 理由なんて 何でもいい。すがっていられれば… どんな親でも 子供に名前はつける。この作品にも題名をつけてあげて下さい
07/04/10 09:19 (ekTojeit)
4
投稿者: 'A`)
ヾ(´ー`)イイッテコトヨ…
これは、いいな泣いた
おかえり
07/04/10 13:18 (aUITpxVW)
5
投稿者: ケイ
何かあったんですか?よく分かりませんが…大丈夫?
やっぱり毎回面白い投稿です、「夜は明かさない」って名言ですね。
カッコイイです!
時系列の使い方がタランティーノ映画みたいで、
1話完結として読んでも楽しめる話になってるんじゃないか…と。
うーん、菊乃さんスゲーです!
07/04/10 18:18 (aUITpxVW)
6
投稿者: JPS
面白かった。私も続き楽しみにしてます。
ボキャブラリーが少なくてろくな感想になってなくてすいません。
とにかくスゴイ面白いです!がんばって下さい。
07/04/11 23:37 (2sErGUWh)
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