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『無題』二十二
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:『無題』二十二
投稿者: 菊乃 ◆NAWph9Zy3c


腕に抱いた身体は、確かに温かかった。



あたしの身体と、膨らんだ小さな光を、抱く身体は、確かに温かかった。


その身体には、ちゃんと中身が入っていた。



胸に耳を当てがうと、トクン トクン と生きている音がした。





ふと見ると、彼の後頭部には、小さな広場が出来ていた。



その光景は、木を伐採され、ところどころに穴が空いたようになっているアマゾンの熱帯雨林を思い起こさせた。上空からみた様子は、丁度こんな感じだった。


環境保護の必要性を訴えかけてくる、素晴らしいハゲかけの頭。


あの育毛トニックは効かないことが、今ここに証明された。





肉厚の大きくて優しくて温かい手が、あたしのもうパンパンに膨れ上がったお腹をさすった。






中で、命が くるり、とひとつ回った。


空には、美しい三日月が輝いていた。









…あぁ…あ…ん…いい…あぁぁ…きもちいよぉ…



巨大な歓楽街の端にある、ホテルの中。ベットの中。



大袈裟に声をあげれば、オトコ達が喜ぶことは、経験から学んだ。


オトコ達を喜ばせれば、それだけ見返りが大きいことも、知った。



それに…この時だけは、生きていることを感じられた。


生きていれば、いつか、また会える。


彼はそう言った。




嘘かも知れない。無理なことかも知れない。


だけれど、賭けてみる価値は、あると思った。




だって、絶望に溺れかけていたあの日、あたしは奇跡に触れた。


あの温かくて小さな手が、あたしを生かした。


本当に出会えた、と思った。





いろいろが終わって、パンツを穿いたあたしは、帰る支度を始めた。

こんなところで、こんなオッサンと夜を明かすつもりなどさらさら無かった。


たまに、朝まで居て欲しい、なんで言う奴もいるけれど、そんなのは、マジで超ありえねぇ 話。


あたしが売ってるのは、夢だ。若いオンナとやれるという夢。


夢は夜のうちに仕舞いがつくもの。そう相場が決まってる。

朝起きてからも夢が続いてる人間なんてのは、薬中に違いない。




ホテルを出て、コンビニでおにぎりを買った。


このあたりの店で、大した金額でもないのに万券で支払いをする女は、だいたいあまり人には言えないような事をしている。

あたしの前の女も、万券で支払っていた。


そしてもちろん、あたしも。




おにぎりを食べながら、歓楽街を歩いた。


こんな汚れた街の道端で食事をするのは、あたしとカラスくらいなものだろう。



たくさんの人々とすれ違った。


だけれど、その中には居なかった。


探してみたけど、居なかった。


こんなに人が溢れているのに、まだ、出会えない。



街には、人々の声、大音量の音楽、眩しいくらいのネオンの光が溢れている。


だけれど、此処は、とても寂しい所だ。



寂しい人間が、傷を抱えた人間が、その弱さを隠しながら、たくさん集まってくる、寂しい所だ。




そんな所から、おにぎりをかじりながら見上げた空には、星もなけりゃ、月もなかった。


そこにあるのは、闇だけだった。








小さなアパートの一室のベットの中。


あたしの身体は、彼の温かな腕の中にあった。



キスをした。



彼を、愛している。






健ちゃんとは、恋に落ちた。


どこまでも深い、はまったら抜け出せない底無しの沼のようなところに落とされた。

幼い二人は、汚れた沼の中で、もがき苦しんだ。



そして、彼は、溺れてしまった。



弱かったわけじゃ、ない。生き続けるには、過酷すぎた。




不幸だったわけじゃ、ない。彼と恋に落ちたことを、誇りに思う。


愛しい人に出会うのは、とても難しい。



「…ねぇ、夢ちゃん?今、何考えてたの?」


そう言ってジャイアンが顔を覗き込む。


あたしは黙って微笑んだ。




この人とは…あたしに光を与えてくれた、この人とは、落ちないで、どこまでも明るい方へ向かって、上っていきたい、と思う。




何だか少し、苦しくなってきた。


痛い。苦しい。




その瞬間に、ふと、頭に浮かんだのは、最期に笑った、健ちゃんの顔だった。






「荷物を軽くして、また始まるんだ。

あなたには、何度だって
出会うよ。必ず、見付けるよ。



姿を変えても、形を変えても、何度だってあなたのところに行くよ。」



あれは健ちゃんの口から出た言葉ではないのに、あたしの頭の中の、最期に笑った健ちゃんは、はっきりそう言った。




カーテンが揺れて、夜空が見えた。


月はもう、満ちていた。




2007/10/17 00:20:09(5q8Eb.dd)
2
投稿者: ゆう
生への慈しみ。

一貫した想いがこれほどの作品に仕立て上げたのでしょう。

生きる事の苦しさや大切さ、そして素晴らしさを知るためにも、たくさんの人に読んでもらいたいと思いました。
07/10/17 06:49 (Cxy7.JoK)
3
投稿者: あや
とって素敵お話で読みながら涙してました夢さんには幸せになって欲しいです。
07/10/19 10:03 (CJrxdlyN)
4
投稿者: 菊乃 ◆NAWph9Zy3c
ゆう さん、あや さん、書き込みありがとうございます。

最近、たくさん本を読んでいるのですが(秋ですし、ね。)、改めて自分の文章を読み返してみると、やっぱり表現力が足りないですね。。

分かりにくいところもあるかと思いますが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


ありがとうございました。
07/10/20 23:58 (2xCuZDwX)
5
投稿者: ゆう
表現力は、読み手を引きつける為には大事な要素だと思います。
ですがこの物語は、主人公と作者が同年代であるために、リアリティが増してると思います。
背伸びをせず、感じたままの気持ちをこれからも書き続けてください。
07/10/23 15:41 (k9Z4eZdj)
6
投稿者: (無名)
期待してたんだけど、もしかしてこれで終わりだったんでしょーか?
07/11/20 04:16 (O6kkvKsw)
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