沙織とは共通の友人を通じて紹介され、云わば見合い恋愛の様なかたちで知
り合い、結婚した。
彼女の両親は早くに亡くなり、母方の祖母に当たる人が彼女を引き取ったそ
うだ。
その祖母も３年前に帰らぬ人となった。
祖母思いで、何事にも控えめな今時珍しいタイプの女性だとは思ったが、
そんな妻に魅かれるのにはそれほどの時間は掛からなかった。
私が思っていた以上に家庭的な妻となってくれた。
病弱な美咲を産んだ事を私に泣きながら謝った彼女の姿を私は今でも忘れな
い。自分ひとりの責任の様に苦しむその姿が哀れだった。
そして・・沙織は子供を産む事を怖れるようになった。
それについて、私は何も言えなかった。ただ、彼女の心の傷が癒えるのを優
しく見つめ・・そして支えてやろう・・そう心に誓ったのですが・・。


次の休みの日、私は近くの電気量販店に出向き、パソコンコーナーを覗いて
みた。
最新の機種が所狭しと並んでいる。どれも結構いい値段だ。
今の我が家の家計を考えると、とても手の出る物ではなかった。
しかし、今のままでは仕事に身が入らない。
＜なんとかしなければ・・・。そうだ！　中古ならもう少し安く手に入るの
では・・。＞
私はその足で、パソコンの専門店を探し、訪ねて見る事にした。