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1:痛っ・ちよこれゐと
投稿者:
浦島プウ
冬の日というものは、雪が降ったりすることがなければ、終日陽が当たり風もなく穏やかに過ごせるものだと、そう思っていた。二月にもなると、そろそろと日も伸びてきて、日曜の午後などは格好のお出かけ日和になるのだった。
子供のころは。 「満江ちゃん。戦隊ごっこして遊ぼうぜ」 美丘満江。 「うん。お兄ちゃんがやりたいなら、私何でもやっちゃうよ」 同い年の女の子は、地べたに倒れてみせるのだった。 それは、悪の組織に襲われ、気を失ったヒロインの真似だったのである。 お兄ちゃんというのは、いずれは変身して、あげくにはヒロインを助けに行くという。 そういう役回りだった。 少女の胸は扁平で、寸胴、脚は太く短かった。 厚着したキュロットから覗く黒タイツが一瞬はっとさせる。 連れ去られるヒロインの後ろ姿は、すでに脳裏から離れがたきものになっていた。 おおう 久しぶりに会った満江ちゃんは苗字が変わっていた。 豊間満江。 小さい子供もいた。 「お兄ちゃん」 少ししゃがれた声はそれでも、子供のころをほうふつとさせた。 「はい、チョコレート」 何かの身代わりを渡されたかのような、それは百貨店の包装紙にくるまれた小箱だった。 「お返しはお兄ちゃんの白い象さんでいいわ」 「え」 「やだ。お兄ちゃんったら。純情なんだからあ」 一次会を解散した後、同じホテルの一室で、同級会は二次会に突入していた。 へべれけに酔っていた。 「つかまえた」 トイレで用を足していると後ろからあそこをつかまれた。 「逃がさないよ」 白い象さんがその鼻をもち上げた。 「満江ちゃん。おれ、こういうの初めてなんだ」 満江ちゃんはしゃがみ込むとお構いなしに無礼講に及んだ。 「あ。満江ちゃん」 女のお口の中へと掃きだめを求めていたかのように何かがほとばしった。 痛くもあり甘くもあり生まれて初めての不思議な感覚だった。
2024/02/05 08:06:23(8E5ZevNy)
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