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1:変身ラブストーカー
投稿者:
浦島プウ
子供のころでも物心がついて十年もたつと頭の中では遠い昔に植えられた球根が芽吹くように、突如として、あの妄想が夜な夜な眠りにつくのを妨害してくるのだった。
保育園で最初に覚える四文字語。たった四文字のそれがいまでは頭の中を埋め尽くしているのだった。 横島愛菜先生は、教育実習で保健を担当されていた。しかしそんなことより、思春期を迎えたばかりの僕は、いつも劣等感にさいなまれていた。 試験用紙の裏に質問を書いた。 『自慰ってなんですか。どうすればいいのか教えてください』 返ってきた答案用紙には質問に赤ペンでチェックが入っていた。 先生はジトっとした重苦しい雰囲気で、僕を見た。 しかし、その後は何事もなく過ぎていった。 ただし、僕の枕元にはいつも先生によく似た女優さんの写真集があったのである。 目頭がくっきりとしていて、目の白い部分が、きれいだった。 年の差のないいわゆる女の子とは違った成熟した体は、酌めども尽きぬ魅力にあふれていたのである。 月日は流れて、僕はただのサラリーマンになっていた。 そして、職場には愛菜さんがいた。 どうやら先生にはなれなかったようで、どことなく顔色も暗かった。 社屋の外で、男性社員と一緒に煙草に火をつけるのを見たとき、愛菜さん似のアイドルタレントで実用を済ませてきた僕のお粗末な青春は終わったのである。 「おい、お前も一服つけて行けよ」 ゴミ置き場にごみを運んだあとのことだった。 「いじめはよせよ」 愛菜さんが止めに入ってくれた。 「なーにがいじめだよ。この公衆便女がよ」 愛菜さんのけりが男のすねに当たった。 「いてて。そこの僕も、一発やりたそうな顔してるじゃないか」 「肉便器が欲しいんだろ?」 耳を疑うような言葉がピンポンのラリーのように頭の中を飛び交った。 「いじめはよせよ、ってかやめろ」 唖然とする僕をなだめるように愛菜さんは険しい顔を解いた。 「いやなところを見せちゃったわね」 「今でもぼくちゃんは、センズリこいてるの?」 遠い昔僕は愛菜先生の住むアパートを覗きに行った。 アパートの後ろに回ると、窓が開いていた。 ちょうど足をエム字に開き、股間をしきりに右手でさすっているところだった。 そんなことが、なぜかこんな時に思い出された。 「おれ、愛菜さんのストーカーになります」 それはそれで迷惑行為だろ、ってか犯罪だ。 僕は訳が分からなくなった。 「変身ラブストーカーというのはどうでしょうか?」 その日の晩僕は無事童貞を卒業した。
2023/10/29 06:18:40(CwMpnKpw)
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