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果葬(かそう)
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:果葬(かそう)
投稿者: いちむらさそり




 あのとき、白雪姫が口にした真っ赤な毒林檎は、彼女の味覚にどのような疑念を抱かせたのだろうか。
 ただ甘いだけの口あたりではなかったはずだ。
 小気味良い歯触りの果肉に仕組まれた、おそろしく陰湿な気配を感じながらも、咀嚼(そしゃく)を止めることができなかったのかもしれない。
 果たして彼女は自ら毒を摂取し、しんと降り積もる雪のような深い眠りに落ちたあと、思わぬ接吻で目覚めることになるのだ。
 けれども私にはわかる。彼女は最初から彼の唇を、心を奪うつもりで、魔女の呪(まじな)いを利用したにすぎないのだと。
 色恋に狂った女々しい体を慰めることができるのは、セックスシンボル以外には考えが及ばなかったのだろう。
 ほんとうは男女の性交こそが毒だということを疑いもしない、なんて可哀想な姫なのかしら──。

 そんなふうに取り留めのない妄想に耽ったまま、花井香純(はないかすみ)は冷蔵庫の扉を開け放ち、その火照った頬に冷気の流れを感じていた。
 もうさっきからずっとおなじ姿勢を崩すことなく、左手に乗せた林檎の様子を眺めては、ごくりと生唾を飲み込む仕草に終始しているのだ。
 真っ赤に熟した果実は手に余るほど重く、その内部に甘い蜜を分泌させているのが容易に想像できた。
 そしてまた喉が鳴る。
 二十八歳になったばかりの女は、後ろ髪の結った部分をふうわりと片手でなおし、一呼吸おいて、艶めかしく濡れる唇を林檎の表面に重ねた。
 あ、あん──と喘ぎたい気持ちがほんとうになると、息のかかるその接点からは、たちまち卑猥な吐息が漏れはじめる。
 そしてただ一口、さくりと歯を立て、あとはもう勢いにまかせて下顎をしゃくった。
 もうじき、官能が舌にひろがっていくだろう。
 うっとりと瞼を閉じ、二度、三度と噛みほぐしていくと、そこから溢れ出す果汁が口のはじから垂れ、やがて下唇から顎の輪郭をつたって滴り落ちた。
 香純は陶酔していた。体のあちこちが種火のようにくすぶり、あわよくば、いますぐにでも慰めに先走りたいと思っている。
 女がこれでは始末が悪い。
 けれどもどうにもできない恨めしさが、あと一寸のところで理性を働かせているのだ。
 毒でもいいから、とにかく楽になりたい、快楽が欲しい──そんな欲求に促され、二口目をかぶりつこうというとき、冷蔵庫の半ドアを知らせるアラームが鳴った。
 はっと我に返る香純。
 気づけば林檎の蜜が、首から胸元までをぬらぬらと汚していた。
 それが誰の仕業なのかがわかると、喪服のおはしょりを丁寧になおし、ハンカチで胸元を拭った。

いけない。買い忘れたものがあったんだ──。

 このところの眠れない夜のせいで痩せてしまった頬に、ふたたび体温が灯った。
 ひっそりと広い家の中は、女独りきりではなにかと心細く、懐かしい生活音さえ聞こえてこない。
 キッチンの隣は十畳ほどの和室になっており、いまは急ごしらえの仏間にさせているのだ。
 あちらとこちらを仕切る引き戸の隙間へ目をやれば、亡き人の遺影が無言のまま鎮座して見えていた。

「こんなことになってしまって、ごめんなさい。孝生(たかお)さん」

 ほとんど唇を動かさないで、香純は遺影に向かって独り言を呟いた。
 そうしてかるく身支度を済ませると、線香の残り香をたなびかせながら家を出た。


2013/04/16 22:22:43(rIDFYmeq)
12
投稿者: いちむらさそり
11



 大上次郎、藤川透、この二人が所持している警察手帳は偽造されたものであり、彼らもまた偽物の刑事だということは突き止められた。
 そしてそれらの肩書きを悪用し、青峰由香里レイプ事件に何らかのかたちで関わっていることもわかった。
 彼らが直接犯行に及んだのか、それともまだほかに仲間がいるのか、現時点では有効な手掛かりと言えるものが不足していた。
 そんなふうにこれまでに収集してきた情報を解析しながら、北条は缶コーヒーのプルタブを開け、口をつけた。
 気象庁からの発表によれば、今朝は二月上旬並みの冷え込みが予想されており、なおさら温かい飲み物の有り難みが体中に染み渡った。
 彼の脳裏には今、ある人物の顔が描かれていた。神楽町通り魔事件の被害者となった花井孝生の妻、香純だ。
 刑事を語る藤川透の素性を明らかにできたのも、彼女の協力によるものが少なからずあったのだ。
 ある犯罪組織が、あらゆる事件の水面下で暗躍しているという噂は、以前から警察の耳にも入っていた。
 そこで今回、大上次郎と藤川透という刑事を名乗る両者に着目し、さらに北条独自のルートにより、藤川透が花井香純に接触するであろう情報まで得た。
 北条はすでに、通り魔事件が起きたときに彼女との接見を果たしている。連絡先はその際に教えてあった。
 北条は香純にこう言った。

「藤川透という男があなたに会いに来たら、彼が所持している警察手帳を見せてもらってください。そして僕がこれから言う箇所を、その目でよく観察してみてください。いいですね?」

 その後、警察手帳の真贋を見極める方法を、北条は香純に伝えたのだった。
 そうして後日、彼女から連絡があった。その内容は北条が思い描いていた通りの答えだった。

「それにしても、未だに信じられませんよ」

 運転席の五十嵐が、突然そんなことを口にした。

「なんだ、また幽霊の話か?」
と北条が茶化す。
 二人を乗せた車は、道幅の狭い県道を走っていた。

「違いますよ。あの花井香純が、まさか自分の夫に多額の保険をかけていたなんて、思ってもみませんでした」

「だからといって、彼女が犯人だと決まったわけじゃない」

「これからそれを確かめに行くわけですよね?」

「そういうことだ」

 フロントガラスを撫でていく木の葉の影が、二人の視界をかすめていく。
 そうして間もなく森林を抜け出し、少し拓けた場所に車を停めると、五十嵐、北条の順に車から降りた。
 すぐ目の前に白い建物が立ちはだかっている。『聖フローラル学園』という文字が、白壁の門のところに彫刻されていた。
 その児童養護施設を目の当たりにしてみても、恵まれた環境で育ってきた五十嵐にとっては、現実として酷く受け入れ難い光景でしかなかった。
 複雑な思いを抱いたまま、二人は建物の入り口へと足を運ぶ。そのドアが内側へ開き、女性職員が彼らを出迎えた。
 あらかじめ連絡してあった通り、面会室で話をすることになった。
 四十歳ぐらいの彼女の容姿は飾り気がなく、どこにでもいる主婦のように見える。
 子どもが二、三人いたとしてもおかしくないだろう、と五十嵐は余計な詮索をした。

「この写真の女性が、いまの香純さんです。現在、二十八歳になられてます」

 北条はそう言って、一枚の写真を彼女に見てもらった。
 女性職員は返答に困り果てた様子で、
「そうでしたか」
とだけ言った。
 それもそのはずだろうと、北条は写真と彼女の顔とを見比べた。彼女は花井香純とは面識がないのだ。

「まえの園長から聞いた話というのを、我々に教えていただけますか?」

 五十嵐の腰の低い口調に促され、婦人はしんみりと頷いた。

「園長は生前、ある女の子の話をよく私に聞かせてくれました。十一歳でこの施設に預けられたその子の両親というのが、母親はともかく、父親のほうがかなり問題のある性格だったそうです。自分はろくに働きもせず、それでいて母親が苦労して稼いできたお金を湯水のように遣い、よその女を平気で家に連れ込んだりもしていたらしいです。それから……」

 その先が続かず、彼女は膝の上で握り拳をつくった。そして絞り出すような声で、
「その子は実の父親に、……犯されたのです」
と感情的に語った。おなじ年頃の娘がいるのか、力の入り具合が尋常ではない。

「すみません。みっともないところを」
と詫びる彼女に、北条は無償の笑顔を向けた。

「構いませんよ。我々が勝手にこちらに押しかけたのが悪いんですから。あなたはただ、ありのままを話してくれるだけでいいのです。その内容しだいでは、間接的にではありますが、不幸な一人の女性を救うことができるかもしれない。今回のことであなたに危害が及ぶこともありませんので、どうかご安心ください」

 意外なほど紳士的な態度をとる刑事のおかげで、施設の女はようやく平常心を取り戻し、ぽつぽつと続きを話した。

「そんなふうに、あってはならないことが実際にあったわけなんですけど、結局その出来事が引き金となって、彼女の両親は離婚したのです。もちろん、彼女は母親に引き取られました。ですが、その後の母と子二人きりの不自由な生活で、母親の寿命はあっという間に削られていくことになるのです。とうとう自分一人では娘を養っていけないと思ったとき、母親は最愛の家族を手離す決心をして、この施設を訪れました。ほんとうに、どれだけ辛い決断だったことか、私には想像もつきません」

 この頃になると、彼女の姿勢もすっかり俯いてしまい、五十嵐は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。しかし、かけてやれるだけの言葉が何も出てこない。

「その時に引き取った女の子が香純さん、ということで間違いありませんか?」

 北条が問いかけると、
「まえの園長からは、そう伺っています」
と彼女は相槌を打った。

「それでは香純さんのご両親についてですが、いまはもう亡くなられているということで、こちらも間違いありませんね?」

この質問に限っては、
「誰がそんなことを?」
と女性は怪訝な表情をする。

「それは、香純さん本人の口から聞きました」

 五十嵐が告げた。

「まさか。だってその子の母親からは、こちらの施設宛てに寄付金が毎年のように届いているんですから。大した金額ではありませんけど、その子がここを巣立っていった翌年から、ずっとです」

 一体これはどういうことだと、五十嵐は北条と顔を見合わせた。先輩刑事の表情は、それほど意外そうな様子ではなかった。

「香純さんの母親から届いたというその封筒を、ぜひ拝見したいのですが」

 言いながら北条が手を差し出すと、すでに準備してあったのか、女性職員はバッグから茶封筒を取り出して彼に手渡した。
 確認してみると、裏面の住所のあとに『三枝伊智子』とある。花井香純の旧姓が三枝(さえぐさ)だということをそこで知った。

「父親のほうは?」
と五十嵐が尋ねると、彼女は首を横に振った。
 かと思うと、
「そういえば、一つ思い出したことがあります」
と大げさに目をぱちくりさせた。

「三枝香純さんは、白雪姫にとても強い興味を示していたそうです。と言っても、この施設で行われた演劇の白雪姫のことですけど」

「白雪姫?」

 北条は瞬時にアンテナを張った。

「ええ。普通ならもう、白雪姫なんかは卒業している年頃なんでしょうけど、彼女の中の白雪姫は、かけがえのない永遠の存在だったようです」

 そこまで聞き終えると、北条は顎をさすりながら考え事に耽った。頭にぴんとくる答えが浮かびそうで、その都度うんうん唸っている。
 そんなとき、彼の携帯電話に新しい知らせが入った。それは意外にも、藤川透が出頭したという内容のものだった。


13/04/23 16:01 (TSoQ8odh)
13
投稿者: いちむらさそり
12―1



 指紋やDNAを採取されたあと、藤川透は殺風景な部屋の中で取り調べを受けていた。ここ数日のあいだに、こうやって心を入れ替える気になれたのも、失いたくないものが出来たからだろうと考えた。
 自分はもうすぐ父親になるのだ。今日という日が更生への第一歩になるのなら、あるいは愛する者たちの平穏な暮らしが約束されるのなら、どんな罰でも受けようと覚悟した。
 誤算があったのだとしたら、それは、ある人物と出会ってしまったことに他ならないのだが──。

「大上次郎の携帯電話に匿名のタレコミがあり、刑事を装ってその雀荘に乗り込んでみたところ、そこに青峰由香里がいたと、つまりこういうことか?」
と五十嵐に睨みつけられたので、藤川はふてぶてしく頷いた。無造作に生やした顎髭が、せっかくの甘い人相を悪く見せている。

「電話の相手に心当たりはないのか?」

「ありません」

「その人物はどうやって大上次郎の番号を調べたんだ?」

「知りません」

「じゃあどうして彼女を狙ったんだ?」

「依頼されたんです」

「誰に?」

「そのときの電話の相手にです」

 五十嵐はここで小休止した。重要なポイントだと察知したからだ。

「組織の人間から指示されたわけじゃないんだな?」

「通常なら、上からの指示があって俺らは動くことになっている。だけどあのときは違った。それからこれは後で知った話なんだが、あの青峰由香里っていう女、ある男と深い繋がりがあったわけなんだよね」

 そうやって勿体ぶる藤川の思惑にはまらぬよう、五十嵐は相手の目を注意深く覗いた。

「じつは彼女、神楽町の通り魔事件で刺された花井孝生って男と、どうも不倫の仲にあったみたいなんだ」
と藤川は言った。
 もしそうだとすれば、花井氏の妻である香純が、夫と青峰由香里が密かに会っていることを知り、その不倫相手をレイプするよう大上次郎に依頼したということになり、筋も通る。先の保険金のことも考慮すれば、花井香純には夫殺しの動機が十分あるように思える。
 しかし、と五十嵐は思う。果たして彼女がそこまで思い詰めていたかどうかとなると、首を傾げなくてはならないのだ。

「青峰由香里を拉致したあと、彼女の身柄はどうなったんだ?」

 五十嵐は追求した。

「いくつかの風俗店が窓口になっていてね、さらった女の子はとりあえずそこに監禁しておくわけさ。そこに客が来て、気に入った女の子を金で買い、あとは好きなように楽しむ、そういうシステムになっているんだ。女なんて所詮、金の生(な)る木さ。いや、金の湧き出る泉か」

 造作もなく藤川が言うもんだから、五十嵐はつい冷静さを欠き、憤慨を露わにしようと出た。

「藤川。貴様、自分が何をしたのかわかって──」

 そのとき、ずどん、という物音とともに、目の前のデスクに何者かの握り拳が打ちつけられているのが見え、その衝撃でデスクの一部が沈んでいた。
 驚いた藤川は思わず上体を仰け反らせ、握り拳の持ち主のほうへ目をやった。そこには北条がいた。動物的な鋭い眼光を放つ、相手の心を読み取らんとするその眼差しに射抜かれ、藤川は口のはじを引きつらせた。

「君は、そんなことを言うために自ら出頭してきたのか?そうじゃないだろう。ある人物と出会ったことで、君の中の何かが狂いだした。そして相手の本質を知れば知るほど、その人物にのめり込んでいく自分を感じた。品定めをし、クライアントに引き渡さなくてはいけない『商品』だとわかっていながら、君自身が生んだ独占欲はもはや手に負えないほど大きく膨らんでいた。しかし君は知ることになる、彼女がある事件の容疑者にされようとしていることを。そこで君は悩み考えた。自分の知り得た情報を警察に提供することで、捜査の針路を彼女以外に向けることはできないだろうか、とね。そうすることによって彼女に貸しをつくり、藤川透という男の印象をより強いものにしようとした。違うか?」

 できるだけ感情的にならぬよう、北条は語気を緩めて言った。
 藤川はすぐには反応できなかった。五十嵐とのやり取りのあいだは一言も口を挟もうとしなかった北条が、この場面ではじつに滑らかに、そして被疑者の内心を見透かしたような態度で責めてきたからだ。
 彼の言う通りだった。初めて花井香純という女性を目にしたときから、自分は彼女に惹かれていた。そしてあの喫茶店で彼女との再会を果たしたとき、もやもやしていた気持ちは確信に変わり、持て余した。

「俺、いつか香純さんから告白されたことがあるんです」

 諦めに似たものを口元に浮かべ、初恋を語るときの面持ちで藤川は喋りだした。


13/04/25 22:22 (x/ebXd2q)
14
投稿者: いちむらさそり
12―2



「上層部の人間からの指示で、花井香純という女性の査定を任された俺は、彼女と対面した途端に鉄の仮面を剥がされました。分かり易く言うと、自分を見失ってしまったんです。柄にもなく相手の女性を意識し、緊張して、あっという間に彼女の中に取り込まれた。主導権を奪い合うような駆け引きをする気にもならなかった。人間としての魅力に欠ける自分と、先天的に魔性の部分を持って生まれた彼女とでは、そういう対象にすらならないと思い知ったんです。そうしてその日の別れ際に、俺は彼女の口からとても残酷な事実を聞かされました。それは彼女がまだ小学生だった頃に、実の父親から性的暴行をくり返し受けていたというものでした。俺、もう、どうしたらいいのか、わかんなくて、だから」

 藤川は言葉を詰まらせた。そして体力を消耗したときのように肩を落とし、うなだれたかと思えば、また勝手に話しだす。

「気がついたら俺は香純さんの家にいた。雨に濡れた上着をハンガーにかけると、自然とそういう雰囲気になって、俺は彼女の唇を奪いにいった。その華奢(きゃしゃ)な肩を抱き寄せて、濡れた前髪を指で払った。彼女の瞳は潤んでいた。キスをする前にシャワーが浴びたいと、香純さんは恥じらいながら言った。彼女が済んだら、入れ替わりで俺もシャワーを浴びた。そうして彼女が待つ部屋に足音を忍ばせて行くと、俺の上着を探る香純さんが目に入った。何故だか彼女、俺の警察手帳をまじまじと眺めていたんです」

 そこで藤川は視線を北条に向け、しかとを決める刑事に回答を求めた。
 もちろん反応はない。
 今更そんなことはどうでもいいか、と藤川はふたたび回想に入った。

「ついに彼女と交わるときが来て、俺が先に裸になり、それから彼女が脱いだ。そこで俺は見ました。彼女の腹部に赤く残る、痛々しい痣を。父親にレイプされたときについたものだと、香純さんは恨めしそうに言いました。この人を汚しちゃいけない、そう思い直した俺は、そこから先を辞退したんです」

「ほんとうに、何もなかったと言うんだな?」

 そう尋ねる五十嵐に対し、藤川の首が縦に動いた。そして、
「そんな彼女が、自分の旦那を殺めるなんて真似が出来るわけがない。俺はそう信じたいんです」
と眉間を寄せた。

「花井香純について、ほかに何か気づいたことがあったら喋っておくといい。君が彼女を思う気持ちに嘘がなければね」

 北条が温厚な調子で促してくるので、藤川は負け惜しみっぽく微笑んでみせた。

「これは真面目な話ですけど、香純さん、アダルトグッズをたくさん持っているんだって、それを俺に見せてきたんです。寂しくなるといつも、そういう物に頼ってしまうそうです。父親に犯された経験のある彼女に限ってまさかとは思ったけど、旦那が亡くなる以前からたまに通販サイトを利用して、密かに買っていたらしいです」

「君はどうリアクションしたんだ?」

 北条も真面目に聞き返した。

「いいえ、とくに、なにも」

「なるほど」

「でも、何ていうか、いつも使っているにしてはどれも新品みたいに見えたし、独りで行為に耽っている香純さんの姿を想像しようとしても、彼女の清純な雰囲気が邪魔をして、どうしてもイメージが湧かなかった。おそらく彼女は嘘を言っている」

「君がそう言うのなら、多分そうなんだろう」

 北条は聞き出す姿勢を変えないでいる。

「あとそういえば、花粉症を患っているんだと言ってたことがあったな。毎年この時季になると、市販の鼻炎薬を服用しているようです」

「それも一応、頭に入れておこう」

「俺から言えることは、大体それぐらいです」

 言い終えたあとの藤川のため息は、部屋にいた皆の耳にまで届いた。失恋したときの感傷に浸る青年のように、いまの彼はとてつもなく弱々しく見えた。
 藤川透から聞き出したいくつかの事を北条は反芻してみた。花井香純が実父に貞操を汚されたことについては、児童養護施設の職員の口からすでに知らされている。
 注目すべき点は、花井香純の腹部に残るという赤い痣のことだ。ふしだらな父親から受けた淫行の跡が、皮膚の深くにまで入り込んでしまったのだろうか。そういう意味では身体的にも、精神的にも、彼女が抱えている傷は生涯消えることがないのだ。
 それから通信販売の話と、花粉アレルギーの部分も加味しなくてはならない。
 いまの段階では一つ一つのキーワードがばらばらのように思えるが、これらをひっくるめて束ねてしまうほどの真相が、必ずどこかに潜んでいるに違いない。
 北条は得体の知れない武者震いのようなものをおぼえた。

「北条さん」

 藤川透は刑事の名前を呼んだ。
 北条は片方の眉を上げ、聞き耳を立てた。

「ほら、神楽町の通り魔事件の現場付近で犯人らしき人物を目撃したって言う女性、一人だけいましたよね?」

「彼女がどうかしたのか?」

「名前は月島麗果、たしか銀行員でしたっけ」

 まさか、と北条の勘が働いた。

「君らの組織が関与しているのか?」

「青峰由香里のときと同様、匿名で密告がありました。言われた通りのバーに大上さんと二人で潜入してみたんですが、ほんの僅かな隙に彼女を取り逃がしてしまったというわけです。まあ、その後すぐに身柄を確保して、今頃はクライアントの手に渡っているはずですけどね」

 なるほどそういうことか──と北条は脳で納得した。花井孝生の殺害現場を見られたかも知れないと思い込んだ犯人が、月島麗果の口を封じるために監禁レイプを依頼したのだとしたら、彼女が見たと言う『黒い服に黒い傘』の人物こそが真犯人ということになる。
 まず、月島麗果を買った客の居所を突き止めねばならない──北条がそう腹を据えたときだった。

「俺を泳がせてみてください」
と藤川は言った。

「下っ端の俺には客の顔も名前も知らされてませんけど、それとなく大上さんから聞き出せるかも知れない」

 花井香純の役に立ちたいという思いが、藤川のその表情から汲み取れた。
 ここはひとつ、彼のコネクションを信用してみようということで、刑事らは合意の視線を交わした。

「最後に確認したいことがある」

 その台詞を言った北条の目は、藤川の眼球を捉えている。

「花井香純の両親の所在について、彼女自身からは何も聞かされていないのか?」

「聞きましたよ。父親と母親を早くに亡くしている上に旦那まで失ってしまって、今はどこにも頼るところがないと、確かそう漏らしていましたね」

「やはりそうか。わかった。君がいま言ったことが、今後の捜査の展開を大きく左右するかも知れない」

 北条は発言の後に、デスクの凹んだ部分を、こつこつと人差し指で小突いた。


13/04/25 22:33 (x/ebXd2q)
15
投稿者: いちむらさそり
13―1



 数日後、月島麗果の行方を探っていたはずの藤川透が、港近くの倉庫の中から変わり果てた姿で発見された。彼の居場所を知らせるGPS信号がそこで途絶えたので、不審に思った警察官らが駆けつけたのだ。
 死因は毒物によるものと断定されたが、直前の彼の行動から推測すると、自ら命を絶った可能性は低いのではないかと警察は判断した。
 組織の内部情報を他言した藤川透のことを、その異変に気づいた何者かが毒殺した。そう考えるのが自然だと誰もが口を揃えたが、他殺を仄めかす痕跡を見つけることは出来なかった。

 死の間際、彼は無念でならなかっただろう。花井香純という女性に溺れたが故に招いた悲劇だとしても、真犯人が誰であるかを見届けたかったに違いないのだ。

 警察署に郵便物が届いたのは、それから間もない二日後のことだった。差出人は『藤川透』である。
 中身を確認したところ、怪しげなDVDが一枚入っていただけで、手紙が添えられているようなこともなかった。
 デッキにDVDを挿入し、関係者らによる確認作業が開始された。再生画面に映し出されたのは、タイトルのないアダルトソフトの映像のようだった。全裸姿の若い男女による激しい営みが、無修正のままこちらの目に飛び込んできた。

どうやらただの男優と女優のようだ──。

音声にわざとらしさが窺える──。

 そんなふうに皆それぞれの感想を抱いたまま、男が女に挿入する映像だけが延々とつづく。女は何度もオーガズムを訴えるが、なかなか絶頂する気配が訪れないでいる。
 対する男はただ力任せに腰を振るだけで、相手を満足させようという気配りも感じられない。

 藤川透が自らの命と引き換えに寄越した物、果たしてこの映像にそれだけの値打ちがあるのだろうか。そんな白けた空気が漂い始めたときだった。
 突然、映像が乱れ、音声がぷつぷつと途切れると、さっきまでとはまったく別の映像と入れ替わってしまった。
 生活感のないワンルームの中央に、髪の長い女性が独りきり、しきりに辺りを警戒しながら座っている。
 残念ながら音声はないものの、鮮明な画質のおかげで彼女の身元はすぐに明らかになった。先日、早乙女町の公園で全裸のままで発見された、専業主婦の青峰由香里に間違いなかった。
 大上次郎と藤川透の手によって雀荘から拉致されたあと、彼女を金で買った客がここに監禁し、何らかの理由で監視カメラに映像を収めた──誰もがそう思った。

 画面の奥にドアが見える。そこが開いて、一人の男が入ってきた。目だし帽を被っているせいで人相がわからない。
 男に気づいた青峰由香里は座ったままで後退りし、二人の距離が縮まると、男が彼女に薬瓶ほどの小さな容器を手渡した。
 会話によって取引がされているようで、彼女は怖々と首を横に振る。
 そんな態度が気に入らない男は、体を揺らして苛々しだし、出し渋るようにスタンガンを手にした。本気で使うつもりはないようだが、彼女の表情には恐怖が浮かんでいて、今にも泣き出しそうに見える。
 スタンガンをちらつかせる男を前に、彼女はとうとう自らのスカートの中に手を入れ、白いショーツを脱ぎ取った。そして小瓶から透明な液体を指ですくい、陰部に塗布していく。
 男はスカートを乱暴に持ち上げ、彼女の様子を凝視しながら何事かを言っている。

 ひとしきり人妻の淫らな様を観察すると、男は満足げな足取りでドアから出て行った。
 ふたたび独りになった青峰由香里は、恐怖と羞恥に堪えながら大人しく座っている。そんな彼女に異変が起きるまで、五分とかからなかっただろう。
 固唾を飲んで映像を見守る一同の目にも、その変化は明らかだった。

 彼女はまず自分の額に手をあて、それから気怠そうに肩を上下に揺らし、太ももを摺り合わせる仕草をした。
 体に熱を感じるのか、シャツの胸元を摘まんで扇ぐと、今度は靴下を脱ぎ捨てる。 頬が紅潮しているのは化粧のせいではなさそうだ。
 今はとにかく肌を露出させたい気分なのだろう。シャツのボタンを外したあと、その美しすぎる被写体は、ブラジャーにスカートという何とも破廉恥な姿に変貌したのだ。
 カップから零れるほど肥大した乳房や、女らしい体のラインを保った所々は、およそ産後の母体とは誰も想像がつかない。

 肩を抱いたり、太もものあいだにスカートを挟んだりと、その場しのぎの行動がつづく。
 見えないものに翻弄されながら、次に彼女は四つん這いの姿勢をとった。
 催眠状態にあるような朦朧とした表情。その唇が何かを囁いた時、魔が差したように彼女の右手が自身の局部へと伸びた。
 カメラは青峰由香里の顔を捉えている。口元がゆるむたびに、下唇を噛んで自慰行為に耽る。右手はおなじ動きをくり返し、支える左手は床に爪を立てる。
 それでも物足りないのか、右手を股間にあてたまま体を返し、彼女はこちらに向かって脚を開いた。

 それはもう刑事の職務を忘れてしまうほど生々しい光景だった。日常の中にあって、しかし誰の目にも触れることのない秘め事が、こうやって隠す術もなく繰り広げられているのだ。もはや性の対象として見ずにはいられない。

 清い指が、清い膣をこねくり回し、清い愛液を吹き出させている。
 彼女はそこを覗き込み、汚らしいものを見る目で嫌悪感を露わにした。
 手首に筋を浮き上がらせ、リミッターを振り切るように自らを追い込んでいく。
 ばしゃばしゃと潮が飛び散った。
 一気に上りつめて、溌剌(はつらつ)とした肢体に痙攣が襲いかかる。
 悔しそうな表情を見せているのは、絶頂したときの彼女の特徴なのだろう。けれども燃え尽きたわけではなかった。
 膣から引き抜いた指に絡まる被膜を舐め取ると、部屋中を物色し、リビングボードの適当な引き出しを開けてみる。
 中身をひっくり返し、床に散らかった数ある物の中から、彼女はピンクローターを手にした。コードをたぐって本体を拾い、すぐさまスイッチを入れる。
 指先で振動を確かめると、ブラジャーのカップの中にそれを差し入れた。効果は絶大のようだ。
 それを無理に我慢しようとするから、鎖骨のアーチが綺麗に浮き出るのだ。
 玩具に取り囲まれた彼女は、貪欲な手つきでバイブレーターを握った。その太い胴体を愛おしく眺めたあと、目を閉じて一度は投げ捨てるが、また拾っては視線を注ぐ。

いじらしくて仕方がない──誰かがそう思ったからか、その気持ちを裏切るように、若妻のヴァギナは男性型の玩具を頭から丸呑みした。
 ひいひいと快感に歪む目元、口元。ぐちゃぐちゃに形が崩れた陰唇。ふっと表情が和らいだあとに起こる全身の痙攣。
 そうやってオーガズムに魅入られた青峰由香里の姿を、一言も発さずに見届けるしかない警察関係者たち。この映像の中にこそ、これまでの一連の事件の謎を解く鍵が潜んでいるのなら、それも仕方のないことかも知れない。
 すると再生画面の中の彼女が突然、ドアのほうを振り返る。直後にドアが開き、先ほどの目だし帽の男が入ってくると、青峰由香里に首輪とリードを施した。

 待つこと数秒──。

 六人の男らが部屋に入ってきた。彼らは、目だし帽の男が連れているペットに興味を示し、服を脱ぎ捨て、目的を果たす行動に出た。
 ほんの数時間前まで普通に暮らしていたはずの主婦が、今こうして複数の男らによって犯されているのだ。
 わずか一グラム程度の媚薬のせいで、人格までもが操作され、女性の誰もが男に狂ってしまうのだろうか。疑問は残るが、映像の中の彼女からは、輪姦を助長させる艶めかしい雰囲気が漂っていた。

 青峰由香里が何度目かの挿入を受け入れたとき、ふたたび映像が不自然に切り替わった。


13/04/28 00:20 (ac2TTpfr)
16
投稿者: いちむらさそり
13―2



 清楚な制服に身を包んだ女子高校生が、不安な面持ちで立ち尽くしている。
 青峰由香里が監禁されていた部屋とおなじ造りの空間で、その少女はじっとドアの方角を見つめている。おそらく音声は意図的に消されているのだろう。
 するとドアが開き、黒色の大型犬を連れた目だし帽の男があらわれた。
 またあいつだ、と一同が感づいた。表情が読み取れない分、男の挙動に不気味さを感じる。
 犬は最初から興奮気味に尻尾を振っていて、女子高校生に近寄ると、いきなりプリーツスカートの中に頭を突っ込んだ。
 少女はそのまま壁際まで追いやられ、悲痛な表情で座り込んでしまう。
 犬がその股間を激しく舐めている。
 男が彼女に指示を出す。
 彼女は怯えながら四つん這いになり、そこに犬が重なった。人と動物による交配が成された瞬間だった。

 あまりに酷すぎる、と目を背ける者もいた。しかし映像は流れつづけている。
 まだ未成年であるにも関わらず、見ず知らずの男の欲求を満たすためだけに、一人の女子高校生が犠牲になっているのだ。
 その生々しい光景にうんざりしていた時、またもや別の映像が割り込み、そこにもやはり女性が映っていた。
 透過素材で出来た大きなバスタブの中に、全裸の若者が体を浸しているシーンだった。白い肉体が水面を揺らし、水滴がきらきらと光っている。
 その水中を泳ぐ細長い影は、彼女の手足の隙間を縫いながらぐにゃぐにゃと回遊していた。
 その動きに合わせて悶絶する女性が手にした物は、長さ十センチほどのビニールチューブだ。放心寸前のおぼつかない手つきで、彼女はそれを自身の体内に挿入した。
 膣がだらしなく大口を開けている様子がいやらしい。そして人体の構造が露わになっている現実を思う。

 彼女のそこが巣穴に見えたのか、蠢く影のうちの一匹が、胴体を波打たせながらビニールチューブをくぐった。尾ひれがぴちぴちともがき暴れている。
 彼女の視線はどこに落ち着くわけでもなく、溶かされていく意識にまかせて、うっとりと水中を漂っているようだった。もうどうなったって構わないと諦めている女の顔だ。
 その黒い生物の習性に逆らうこともできずに、膣を開放しつづける淫乱な女体。彼女もまた、これまでに経験したことのない危ない絶頂へと連れて行かれるのだろう。

 女性器に群がっているものの正体が鰻だとわかったところで、刑事の一人が吐き気を催し、退室するハプニングがあった。
 そうは言ってもこれも仕事のうちだと、残りの者で映像の結末を見届けなければならない。胃液が込み上げてくるのをなんとか抑えながら、映像が切り替わるのを待った。
 その瞬間はすぐに来た。そうして画面に収まった人物の顔を見るなり、今まで無関心を装っていた北条の眉間に、深い皺が刻まれた。神楽町通り魔事件の重要参考人、月島麗果に間違いなかったからだ。

しっかり見ていろ──わかってます──という会話が、北条と五十嵐の視線だけで交わされた。
 藤川透がほんとうに見せたかったものが、まさにここから始まるのだと、彼女が放つダークな雰囲気から予期できた。
 そして何より、今までの映像と異なったところがある。さっきまでの分が監視カメラの記録だとすれば、月島麗果の場合は、盗撮カメラで狙ったような意図が感じられる。
 どこかの病院の診察室に彼女はいるようだ。スチール製の机やキャビネットに並ぶファイル類、業務用のパソコン、ベッドや椅子なども一通り揃っている。
 仄白い照明でぼかした部屋。月島麗果はそわそわしながらそこで誰かを待っている。

 そうして一分と経たないうちに白衣の男がやって来て、すれ違いざまに彼女の肩をぽんと叩き、空いた椅子に座った。神経質な生き物だという印象だ。
 医師と患者の微妙な距離感というより、男のほうはいちいち彼女の顔を覗き込んでは、馴れ馴れしく体を触っている。

 北条は、この男はいったい誰なのだろうかと、これまでに度々登場していた目だし帽の人物と重ね合わせてみた。はっきりしたことは言えないが、両者には似ている部分があるように思えた。

 誰かが息を呑む音が聞こえた。カメラの向こうの月島麗果が内診台に乗ったからだ。自ら脚を開き、腹部を上下させて息をしている。期待、不安、その両方が入り混じった表情を浮かべ、一線を越える瞬間を待ち焦がれているようだ。
 男は鋏(はさみ)を手に構え、じりじりと彼女の下着に沿わせていく。虫も殺さないような顔の医師は、その刃先でショーツを挟み、サディスティックに切れ目を入れた。
 あられもなく下着がはらりと剥がれ落ちる。晒された女性器は美しく貝割れしており、女らしい色素を分泌させて潤って見えた。
 黒ずんだ一枚目の皮膚をめくり、充血した二枚目の皮膚を分けると、男はそこに顔を埋め、ぺろりと舐め上げた。
 彼の舌を生身に受け、月島麗果の腰が素直な反応を見せた。
 夫婦や恋人同士がする無難なプレイではなく、そこに変態要素が加わることで生まれた未体験の官能に、体中を熱くさせているのかも知れない。
 彼女の上半身は未だに清楚なままでいる。しかし下半身は別人だった。
 二人のあいだにはずっと前から信頼関係があったみたいに、彼女は医師にすべてを委ね、舌と、指と、男根とを、自身の蜜壺に導いた。
 よがり狂う若い娘と、冷徹な眼差しで淫らな行為をくり返す男。
 一刻のうちに月島麗果の容態は変化し、弓形(ゆみなり)に仰け反らせた背筋を右に左によじって、救いを求めるように何度も手指を結んで開いた。
 それを知って、白衣の男も畳みかける。繋がったまま内診台を揺する二人。

 院内セックスという有り得ないシチュエーションも手伝ってか、互いの肉体を融合させようと更に密着し、快感の上限に向かって上りつめていった。
 月島麗果の動きが止まった。
 男は腰の振り幅を加減しながら、ゆったりと射精を楽しみ、そして支配者の表情で性器を抜いた。卵子が受精してしまう可能性をも恐れない、まったく最低な光景だった。

 こんな人間を医師として認め、何ら疑うことなく世に送り出してしまった国の甘さに、刑事らも尻の穴が引き締まる思いがした。
 藤川透は、この男が花井孝生を刺したとでも言いたかったのだろうか──。

 ようやく事件の根源が見通せそうになったとき、そこで映像は終わった。後味の悪さだけが残る、なんとも骨の折れる作業だった。

「いちばん最後に映っていた白衣の男。彼に前科がないか、俺がデータベースで調べておきます」

 五十嵐が険しい顔で言った。

「そうしてくれ」

 それだけ言って、北条は部屋を出た。


13/04/28 00:33 (ac2TTpfr)
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