あたしは、自分の手をじっと見ている。


ヒヤリと冷たい手錠をかけられた、二本の腕は、どちらもあたしのものだ。



実感が無い。ただじっと見ている。


他にすることがない。


暇すぎて、眠くなってくる。



今は裁判中。あたしの裁判。つけはじめのクーラーみたいな、カビや埃のじめじめした匂いがする。

あたしの裁判。なのにあたし以外の人間がゴタゴタ難しい言葉をふんだんに使って言い争っている。


それを｢ふつうの人｣の中から選ばれたという、真面目そうな、プロっぽいおじさんやおばさん…そう、裁判員たちが、うんうん　といかにも納得したような顔をして聞いている。


本当にわかっているのだろうか。



うんうん　といかにも納得したような顔をして聞いている。



嘘だ、嘘だ。わかるはずない。

被告人は十分に反省し、悔いている、被害者並びに遺族に対して謝罪の気持ちもあり、情状酌量の余地が…云々…？


被告人…あぁ、あたしのことか。


バカくさい。後悔なんかしていない。




捕まることも、承知の上だった。あたしみたいのが逃げ切れるようでは、日本の警察もカスだ。


それでも、どうしてもやらなきゃならなかった。




あたし自身の為に。そう、自由のために。