地元の父親から兄貴が勾留中だと聞いた。
強姦の被疑事実で身柄拘束されているという。
いい加減で頭も微妙な兄貴ではあるが、暴力事件など起こしたこともなく真面目に建設会社に勤めていたはずだが…。
早速週末を利用して、東京から田舎に帰り兄の弁護士に会ってみた。
私選のベテラン弁護士はどうやら兄は車を貸しただけで犯行には加わっていないのだそうだ。
だが、かなり凶悪な強姦事件だから警察も可能ならば共同正犯で起訴したい構えなのだという。
「兄は車を貸した相手が強姦に使うとは考えてもいなかったんですよね？」
「無論お兄さんは何ら事件に付いて把握しているわけではないです。ただ被疑者はお兄さんを引っ張り込むように供述してまして…」
「……」
「それとお兄さんの供述も二転三転いい加減なのです…。まあ警察も無理に起訴したりはしませんので安心していただいて結構ですよ。」
「ところでどのような事件だったのですか？」
その内容は酷いものだった。
被害者は今の所3人。女子高生と1人は女子中学生だという。2人は入院中だという…。
田舎の夜道を1人自転車で帰る被害者にわざと車をぶつけて跳ね飛ばした後に、車に乗せて最寄りの場所まで移動して強姦するというものだったそうだ。
骨折して血を流してる被害者を殴ったり首を絞めたりしながら強姦するもので、相手が死ななかったのが不思議なくらいだという。
「そんなの1人で出来るもんですか？」
「1人だったんですよ。だから最初はお兄さんを共犯と疑ったようですよ。けど被疑者の体液しかでてませんので、実行行為に加っていないのはすぐわかったようです。」
幸い女子中学生は車に当たられた際も擦り傷程度ですんで、車内につれこまれそうになってる時に覆面パトカーに発見されたのだそうだ。
「ニュースにならなかったんですか？」
「なってますよ。ただローカルニュースに取り上げられただけで、詳細もあまり報道されてませんね。」
「…ちなみにその男はどんな奴だったんですか？」
「お兄さんの一つ下の同僚で勤務態度は真面目ながら、高校時代から性犯罪繰り返してますね。3年前に出所したばかりです。」
「なんで兄はそんなやつに車を…」
「うーん。お兄さんは相当人が良いご様子ですね…」
実に間抜けな兄である。
なんとか年末までに不起訴に成れば良いのだが…