ようやく気候もよくなり長袖では少し汗ばむ陽気になってきた。
私が勤めるショップは、関西にある大手企業が経営している全国にいくつかあるアウトレットモールの男性向け衣料販売店である。
男性向けと言ってもメインがmen'sものでレディースものの衣料もたくさん取り揃えている。
ここのアウトレットモールは周りが自然に囲まれており空気も非常に澄んでいて、私を開放的な気分にさせてくれる。
アウトレットモールの横に隣接する大手スーパーのお陰で、週末になると大勢の買い物客たちが押し寄せてくる。
「美穂、こっち回って」
「あっ、はいっ、」
私、武田美穂は高校卒業後すぐにこのショップでアルバイトとして働きたい始めた。
時給はそれほど良くはないけれど、好きな洋服に囲まれて仕事するのは本当に楽しかった。
ここで勤めてからもう2年が経過した。
店長からは「そろそろ正社員として働かないか?」と嬉しい声もかけて下さるようになり、私の人生の歯車がうまく噛み合っていくように感じていた。
ただ、あの日あんなことがなければ、、、。
私はあの日以来今まで知らなかった世界に足を踏み入れてしまった。いや、意図的に踏み入れさせられた。